「小売業・サービス業で女性が働きやすい会社」ランキングTOP10

写真拡大 (全4枚)


小売業やサービス業でも女性社員の待遇改善は進んでいる(写真:kikuo / PIXTA)

今回は、先月発表した「女性が働きやすい会社ランキング」の中から、小売業とサービス業の2業種を対象にしたランキングを取り上げる。

評価したのは、「女性の活躍」「育児・介護」「働きやすさ」の3分野、合計37項目(100点満点)である。『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2017年版に掲載した、1408社の人材活用データを基に、小売業とサービス企業の上位50社を作成した。

1位三越伊勢丹は育休3年、女性管理職は5人に1人


1位は全体ランキングでも2位の三越伊勢丹ホールディングス(89.4点。データは三越伊勢丹)だ。各分野は女性の活躍33.4点、育児・介護23.3点、働きやすさ32.7点という内訳である。

百貨店である同社は、2015年度で男性2601人に対して、女性2678人と半数が女性という職場。従業員だけでなく、女性管理職比率も21.5%と、『CSR企業白書』掲載の業種別平均値である、小売業の11.7%を大きく上回る。さらに「2020年までに30%」と、より上のレベルを目指している。

育児休業は最長3年であり、介護休業は1年間取得可能だ。希望者は早期にフルタイム勤務に復帰できるよう、シフト固定や月10日間までの一時的時間延長によるフルタイム勤務ができる。

また、育児中の従業員が悩みや情報を交換する場として、「ワーキングマザー情報交換会」を実施するなど、育児・介護面の制度も充実している。

2年間で失効する有給休暇を積み立てて、育児や子どもの学校行事などの理由で取得できる「ストック有休制度」などもあり、一般的に「休みが取りにくい」とされる小売業で、有給休暇取得率86.2%(有休取得日数17.2日)と高い水準を誇る。

さらに、コアタイムなしの「フレックスタイム制度」もあり、残業時間は月6.5時間と少ない。「社内公募制度」、「FA制度」や「キャリア形成支援」など柔軟な働き方を取り入れ、「働きやすさ」の評価も高かった。

2位は三越伊勢丹のライバル高島屋(87.2点)。トップとはわずか2.2点差だった。各分野では、女性の活躍33.4点、育児・介護25.8点、働きやすさ28.0点という内訳。働きやすさの得点差が三越伊勢丹と順位を分けた形となった。個別項目で見ていくと、開示項目や内容はほぼ同じだが、有休取得率(63.9%)と有休取得日数(12.6日)で差がついた。

以下、3位イオン82.6点、4位丸井グループ81.3点と小売業が続く。5位にサービス業トップの楽天77.7点。6位ベネッセホールディングス77.5点、7位エイチ・ツー・オー・リテイリング77.4点となっている。

8位は76.5点の電通だ。女性管理職比率7.7%(155人)。産前産後休暇取得者57人、育休取得者45人と、女性従業員2077人の会社としては、取得率も決して悪くない。介護休業も、2014年度4人で2015年度2人と、取得者が出始めている。

電通の新卒3年後の定着率は90.4%だった!

電通の大卒30歳平均賃金は36万5676円、最高は45万9700円と、経済面の待遇もいい。新卒3年後定着率(2013年→2016年)も、90.4%と低くない。社内公募制度や海外留学制度、自己啓発のための各種セミナー・講演会の実施といった各種制度も充実している。

ただし、2015年末の新入社員過労自殺によって、世間の評価は地に落ちてしまった。有休取得率の推移を見ると、2013年度51.5%、2014年度54.0%、2015年度40.5%となり、もともとそれほど高くない比率が急落している。この数字からも2015年は全社的にかなり繁忙だったことがうかがえる。こうした中で十分には新入社員のフォローができなかったのかもしれない。


『CSR企業白書』2017年版(書影をクリックすると販売サイトにジャンプします)

すでに同社からは、この翌年の情報となる最新の調査票も、回答されている(11月発売予定の『CSR企業総覧』2018年版に掲載)。詳細はまだ公表できないが、今回の件を深く反省し、全社的な働き方改革に取り組んでいるようだ。2014年入社者の3年後(2017年4月)定着率も、高い水準であり、従業員が会社を見捨てていることはなさそう。有休取得率も2016年度は大きく上昇するなど改善の見られる項目が増えている。

もともと女性登用に積極的で各種制度も充実している。今回の件を反省し、すべての従業員が働きやすい会社になってほしい。

さて、電通のように、大手企業で不祥事があると大きな批判を受けやすい。多くの情報を開示している会社は、それらを併せて見て、その会社が本当にダメなのかどうか、各自が考えることをお勧めする。たとえば、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』『CSR企業総覧(ESG編)』に掲載している会社であれば、徹底的に調べていただきたい。

小売業・サービス業はもともと女性従業員が多い業種だ。そのため、すでに存在する女性社員がより活躍できるよう、少しずつステップアップしてきている会社が多い。

まだまだ他業種に比べて、有休が少ないといった課題もあるものの、今回紹介した先進企業などは、これまでと同じように一歩一歩取り組みを進めている。今年の採用はすでに終わったケースも多いかもしれないが、ぜひ会社選びの参考にしていただきたい。