夜道で迷子になりぐるぐる回る金正恩氏の「ポンコツ軍隊」
北朝鮮の核兵器開発を巡り、情勢が緊張の度を増している。
その一方、北朝鮮の通常兵力が実にお粗末な状態にある事実については、本欄で繰り返し指摘してきた。
食料の横流しによる兵士の飢餓、女性兵士への「性上納」強要などの軍紀びん乱、若者の兵役忌避による人員不足などにより、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は正規軍として機能するか疑われるほど組織が弱体化している。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)
それに加え、装備の貧弱さも深刻である。
北朝鮮メディアは8月26日、朝鮮人民軍の特殊部隊が金正恩党委員長の視察の下、韓国の島しょ部を攻略する訓練を行ったと伝えた。報道とともに公開された写真を見ると、兵士らのヘルメットには夜間戦闘用のナイトゴーグルと思しき装置が付いている。他の装備も充実しており、先進国の装備と比べても遜色ないように見えるが、これは特殊部隊のごく一部に限られたものであると考えられる。
韓国の北朝鮮専門メディア、ニューフォーカスが軍出身の脱北者らの話として伝えたところによると、朝鮮人民軍で最も重視されている訓練は夜間行軍だ。これは前方後方の別なくどの部隊でも繰り返し行われる。指定した時間内に目的地に到着するよう命じられ、時間を守れなかった部隊は辛い反復行軍のペナルティを科せられるのだという。
兵士たちにとって問題だったのは、ナイトゴーグルはおろかフラッシュライト(懐中電灯)すらろくに支給されなかったことだ。そのため、部隊の先頭に最も方向感覚の優れた兵士を立て、地形を頼りに行軍するのだが、そんな動物的な挑戦がそうそう上手く行くはずもない。 一度方向がわからなくなると、自分たちがどこへ向かっているのかまるでわからなくなってしまう。同じところをぐるぐる回り、スタート地点に戻ってしまうことさえあるという。
そのような状態で、まともに戦争などできるはずもないのだ。
しかし、だからと言って北朝鮮が危険ではないと考えるのは間違いだ。自国の軍隊のポンコツぶりについて、最もよくわかっているのは恐らく金正恩氏だろう。
だからこそ、金正恩氏は核兵器開発を急ぐのであり、彼にとって戦争とはイコール「核戦争」なのである。