とんがり君は1000年先の仏像

東京都港区・六本木ヒルズの毛利庭園で22日、特別展示が始まった巨大彫刻作品「とんがり君と四天王」。このタマネギのような形をした頭を持つ愛嬌ある“仏像”の作者が、世界で活躍する現代美術家の村上隆さん(43)だ。「とんがり君」は2年前、ニューヨークのロックフェラーセンターで日本人作品として初めて展示されたもので、今回が日本初公開。作品に込められたメッセージを村上さんに聞いた。
─とんがり君は仏教からインスピレーションを得たということだが、どんなことを感じたのか。
村上「日本の文化は全部「勘違い」文化だと思っている。例えば日本に入ってきた仏教でも、インドで発祥した仏教とは全く違ったものが伝来しているはず。どんどん文化が転移していく時に「勘違い」が新たな革命的なものを生み出すという発想で、仏教があと1000年先に行ったら、こういう仏像があってもいいじゃないか、と思って作った作品。日本の今の「kawaii(かわいい)カルチャー」と仏教の伝来していく「勘違い」を融合すると「こうなりました」というトランスカルチャーがテーマの作品だ」
─頭にアンテナがあるが、誰と交信しているのか。
村上「(映画の)ETと同じで宇宙と交信している(笑)。見えない所と交信したいという願望」
「この作品は、ニューヨーク郊外にある小児末期がんの病棟に作る彫刻を依頼されて発案した。すなわち、その病院に入ってきた子どもたちは二度と病院から出られないが、病院に入った時のエントランスにこういう物があれば、自分が今から行く先、要するに死んで行くんだけど、苦しいだけの世界じゃなくて、生まれてきた自分たちは祝福された、ということをあらためて思い浮かべられるような作品にしたいと。宇宙に行っても、お父さんお母さんとちゃんと交信できるからね、という気持ちで作った」
─六本木ヒルズのイメージキャラクター「ロクロク星人」との関係は。
村上「ロクロク星人も星人だし、アウト・オブ・スペースから来た生き物。この人たち(とんがり君)もそういう感じで、全部同じキャラと言ったら何だが……似てます。(笑)」
─どのような人に見てほしいか。
村上「毛利庭園は夜遅くなるとカップルがたくさんいる。そういう人たちに見てほしい」
─村上さんにとって、サブカルチャーを原点とする創作活動とは何か。これからどういうものを作りたいか。
村上「日本の国でアートを勉強して、日本の国の中でアート活動をやろうと思ったら、活動させてくれる場所がなかった。それは今でもない。だがアメリカやヨーロッパに行ったら、活動の場がどんどん広がって、楽しくやらせてもらっている。やっぱり日本の人たちにも共感してもらいたいことがあるので、そういう意味では、アートという形を借りないで純粋なアニメーションとか、そういうものを作っていって発表したいと思っている」【了】
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