怪腕・藤平尚真、完全復活。投打のキーマンが活躍し、収穫ある初戦!

 12日、横浜高校がこの夏、初登場。渡辺元智監督のラストイヤーということで、この日のサーティーフォー保土ヶ谷球場の内野席はほぼ埋め尽くされ、空席を探すのがやっと。非常に注目度が高い試合となった。

 この夏、初めての渡辺監督のシートノックは球場内に大盛り上がり。捕手フライを打ち上げた後は大きく盛り上がり、シートノックが終わると大拍手が送られる。一種のショーを見ているかのような雰囲気であった。

 横浜が先攻で始まったこの試合。光明相模原の先発の植田新乃介(2年)は伸びのある速球を武器にする右腕であった。171センチと小柄だが、体全体を使った投球フォーム。125キロ〜130キロながら、なかなか伸びがあり、初回は二者連続三振を奪う投球で、球場を沸かせる。

  2回表、横浜は先頭の公家 響(3年)が中前安打で出塁して、二死二塁となって、7番山田 知樹(3年)の中前適時打で1点を先制するが、このヒットは深めに守っていた影響によるポテン安打。打ち取っていた当たりで、植田はしっかりと横浜打線に対して、怯むことなく、気持ちで向かtっていく投球を見せていた。

 対する横浜の先発は藤平 尚真(2年)。中学時代は、2013年のU-15代表入りを果たした逸材。その時から速球が140キロを超え、鳴り物入りで入学したが、故障が続き、満足いくパフォーマンスができなかったが、ようやく復帰。横浜が勝ち上がるには欠かせない存在である。

 この日の投球はまさに完全復活を印象付ける投球だった。身長は185センチ79キロと体格の良さはもちろんだが、肩、肘の柔らかさ、手首の柔らかさ、下半身の柔軟性、バネの強さも感じられ、身体的な素質が抜群である。

 フォームも一連の流れに無駄がなく、洗練された投球フォーム。ワインドアップからゆったりと始動し、投げ急がずにじっくりと間を置きながら、バランス良く立つことができており、左足を遊撃方向へ伸ばしてながら、左足のひざを曲げて左腕のグラブを斜めに伸ばし、半身の態勢を取って着地しているので、打者から見難い。さらにテイクバックを見ると内回りで、しっかりと肘が上がり、胸を大きく張ってリリースに入る。打者寄りでリリースすることができており、体を回旋させて、腕を振ることができており、体の使い方が非常に上手い。まさに好投手である。

 球速は135キロ〜130キロ後半(最速139キロ)を何度も計測。2年夏でこの球速なので、順調にいけば、来年は常時140キロ台・最速145キロ以上の期待も高まるだろう。何といってもボールの回転が良く、手元まで失速しないストレートなので、空振りが奪える。そして内外角へコントロールも安定しており、5回まで1安打無失点と敵なしの投球。スライダー、チェンジアップ、カーブをしっかりと投げ分け、完成度の高さ、スケールの高さは歴代のエースと比べても高いものがあり、横浜高の高卒右腕としては涌井 秀章以来のプロ入りを期待したくなる投手であった。

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  5回表、山田、藤平の連打、代打・村田の四球で無死満塁のチャンスを作ったが、1番相川 天河(3年)が投ゴロ併殺で、二死二、三塁。だが2番戸堀敦矢(2年)の適時打で1点を追加。だが光明相模原も、二塁走者・村田雄大(2年)をアウトにして3点目を与えない。

 そして6回表、無死一塁から4番公家が神奈川大会1号となる、豪快な2ラン本塁打で4対0とすると、女房役の山田も本塁打が飛び出し、5対0と大きく差を広げる。じわりじわりと守ってきた光明相模原にとっては大きな3点であった。これで3打数3安打の公家。構えが実にゆったりとしており、手元までボールを呼び込んでフルスイングするパワーヒッター。自分の間というものをしっかり持っており、常に自分のスイングができるのが強みな打者である。1年夏から見てきているが、だんだん迫力、長打力ともに増してきている。横浜では久しい右のスラッガーの登場である。

  6回裏からは左腕・石川 達也(2年)が登板。去年のエース・伊藤 将司(国際武道大)を彷彿とさせるようなフォームから繰り出す最速135キロのストレート、スライダーをコントロール良く投げ分ける投手で1回無失点。

 さらに7回表、無死一塁から倉嶋 啓太(3年)が左越えの適時三塁打を放ち、1点を追加すると、3番増田 珠(1年)の左犠飛で7対0とする。 増田は、中学時代、U-15代表入りを果たした侍ジャパン経験者。この日もとても1年生とは思えないパフォーマンスを披露。シートノックから素早く、正確な返球を披露。肩は中々強く、守備範囲の広さも披露。打者としてはスクエアスタンスで力みのない構えから、最短距離でバットを振りだし、鋭い打球を連発。期待の大型外野手だ。

 その後はここまで当たりがなかった三河 聖央(3年)の適時打やバッテリーミスなどで8対0と差を広げる。

 7回裏からは実戦経験豊富な左腕・春日井 静斗(3年)が130キロ前後の直球をコントロール良く投げ分け、あっさりと二死を取ると、4番手には最速139キロ右腕・北山 比呂(3年)が登板。二者連続四球を出すが、最速138キロのストレートとスライダーのコンビネーションで打者を抑え、試合終了。横浜は7回コールド勝ちで好発進した。

 神奈川展望では、「石川、春日井、相川の3投手の成長と藤平の復活。この構想が実現すれば、過去5年間でトップクラスの充実度があると言えるだろう。」と記したが、何よりも藤平の復活が不可欠であった。そしてこの試合、藤平が素晴らしい投球を見せたことは大きなプラスにあんっただろう。打線も、終盤から打線が活気づき、9得点。

 難しい初戦だが、かなり試合慣れした様子。やはり今年の横浜も怖いと印象付けるには十分な試合であった。

(文=河嶋 宗一)

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