右が変態唐辛子さん、左が著者の孫向文

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 こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。

 先日、「変態唐辛子」のペンネームで活動する風刺漫画家・王立銘先生(41)と都内でお会いしました。言論統制が敷かれている中国において、王先生はネット上にて痛烈に中国共産党を非難する漫画をアップし続けていました。

 そんな王先生の中国版ツイッター「微博」のアカウントが停止されたのは、日本旅行の最中、今年の5月のことでした。

「このまま中国に戻ったら、拘束されるだろうと思ってね、今は日本政府に亡命を申請しているところだよ。奴らは本当に卑劣だ。私が中国で開設していたインターネット商品の取引サイトのアカウントも突然閉鎖されてしまったんだ。おかげで今は収入が全くない状態だよ」

 中国には「五毛党」と呼ばれているネット工作員がたくさんいます。中国共産党からお金をもらって、政府にとって都合のいい情報を書き込む者たちです。五毛党は、こうした先生の惨状を嘲笑いました。

<変態唐辛子は売国奴だが、今は無職だ。日本で金を稼いでいたら、本当の売国奴だが、今は金を稼いでいないから、0円売国奴だwww>

 多くの中国国民にとって、中国共産党を揶揄する王先生の漫画は痛快なもので、先生は中国国内で圧倒的な支持を受けていました。ですから、こういう書き込みの大多数は、五毛党だと容易に想像がつきます。中国政府にはむかった者が、どういう末路をたどっていくのか。その見せしめとして王先生は利用されたのでした。

共産党の卑劣な嫌がらせ

 ネット上での発言権ばかりか、収入すらも断たれてしまった王先生。ですが、中国共産党に立ち向かう闘志は依然として衰えておらず、この日も、僕らは政府を罵倒する話でもりあがりました。

「私の友達も、ことごとく共産党の嫌がらせを受けているよ。あいつらはいつも卑劣だ。肉体的に暴力をふるったら民衆の非難を受けるから、証拠が残らないようにやるんだよ。たとえば、椅子の上に手錠をかけて拘束された状態にされるだろ。その周りを何人もの警察官に囲われ、目に強烈な照明を当てられるんだ。とてもじゃないけど、目なんか開けられるような状況じゃない。でも、目をつぶったら、肩を叩かれ、寝てはいけないと起こされるんだ。そんな状態で10時間以上も座らされてね、それをやられた友人は、精神的に参ってしまったよ」

 こうした嫌がらせや虐待は、中国の十八番です。特に思想犯や反政府の者たちに対する尋問は厳しくて、虐待のレパートリーは数え切れないほどあります。そもそも、中国は、法の上に共産党が存在しており、「法は人民ではなくて共産党を守るため」にあるのです。そういう国の成り立ちからしても、反政府の者には人権など存在しないのは当たり前でしょう。

「今度、そういう漫画を描こうかと思っているんだ。中国共産党の悪行を広めるためにね。これまで奴らがどんなことをしてきたのか徹底的に描く! 文化大革命のときなんか、派閥闘争で負けた者は、自分で地面に穴を掘らされてその中に飛び込まされ、生き埋めにされた。さらに銃殺の際には、その遺族に対して銃弾のお金を請求するようなこともしていた。本当に残酷だよ」

 中国でのネット上での発言権を奪われてしまった王先生。こうした中共の拷問漫画は、まず、この日本において発表される可能性が高いでしょう。僕らは反中共漫画家として同盟を組み、今後も中国の悪事を描きたてていきたいと思っています。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)