(『THE JAPANESE BEACH ーSUMAー』長谷波ロビン)

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夏の海といえば、泳ぎに行くもの。そんな中、砂浜に“出張スタジオ”を作り、海岸に遊びに来た人の楽しそうな表情をひたすら撮影し続けている人がいる。名前は長谷波ロビンさん。その成果が認められ、「キヤノン写真新世紀」優秀賞を受賞。実はよしもとNSCの23期生で、あの人とも同期だというロビンさんに、真夏の海岸での撮影についてお聞きした。


――なんだか楽しそうな写真ですが、既に何人分を撮ってますか?
「およそ1000人ですね」

――1000人!?しかも、真夏に撮影しているから、大変じゃないですか?
「もう、フラフラですよ(笑)。特に1年目と2年目なんかはホントに暑くて、いつも日射病みたいな感覚で撮影してました。撮影は7月と8月の週末ごとに行きますが、まずは朝早く出て、海岸の場所取りから始めるんです。そこにバック紙を立てて、いわば出張スタジオを設営するんですよ。『ビーチでなにしてんねん』って感じで、その時点でジロジロ見られますけどね(笑)」

もう、聞いているだけで体が暑くなってきそうだ。しかも、撮影する場所は、朝に場所取りをした所でずっと撮るのではなく、自然光の順光で撮影する関係で、大きな白バックを持って少しずつ移動させていくのだとか。ただでさえ暑いのに、地味に大変なのだ。水着の女性が見られるからといって、ハシャいでいるわけではない。

――そもそも、なぜ真夏の暑い時に海岸で撮ろうと?
「普段は広告写真の仕事をしていますが、作家として人に見せる作品を作るからには、『普段の撮影よりも、もっとしんどいこと』をやらないといけないんじゃないかって思ったんです。なおかつ、自分が絶対楽しいって思える撮影を…。そこで、僕は海が好きだし、人を撮るのも好きだから、真夏の海岸で人が開放的になって盛り上がっている皆さんを撮影することにしました」

やっぱり、時に人間は、しんどいこともやっていかないといけないのである(しみじみ)。

――神戸の須磨海水浴場を選んだ理由は?
「ここは関西では一番有名なビーチなんですが、なんというか大阪の繁華街のようで、街の匂いがするんですよ。地元の人、大阪の人、関西の個性が密集しているし、こんなに個性むきだしで、おもしろくて、かっこいいビーチは他にありません。そこで、須磨で撮ろうと決めて、ビーチに白バックを立てたんです。このステージは、みんなのステージであって、まさに“お笑い劇場”なんです」

下は3歳から上は70歳くらいまで撮っているそうで、さまざまな個性が光る老若男女の写真の数々。ギャル系の集団がいるかと思いきや、通りがかりの近所のおばちゃんや、犬の散歩をさせているおじちゃんが混ざっていたりする。まさか、おじちゃんも犬も、砂浜をフツーに歩いてて、写真を撮ってもらうことになるとは思わなかっただろうけど。

●ハイテンション・ロックンロール撮影

――ロビンさんは、いつもどういう雰囲気で撮ってます?
「(突然、大声を出して)『OK!いこーぜ!はじけようぜ!OK!しびれるぜ!レッツ、カモン!』なんて、声をかけながら(笑)。こっちが緊張してると楽しい写真が撮れないので、常にテンションを高めに撮って、ノリノリの空間をつくってます。盛り上げていくので、『ロックンロール撮影』って言われたこともあります。でも、須磨の海岸にいるみんなは元々ノリが良いから、こっちから指示をしなくても、勝手にキメてくれますけどね(笑)」

確かにお客さんのノリも良いけど、場をより一層盛り上げるロビンさんのコミュニケーション能力も長けているのではないかと思う。
「自分にしか撮れない写真だと思います。暑くてもハイテンションだし(笑)」

――撮った写真は?
「送付先を教えていただくので、1枚ずつプリントして全員に郵送でプレゼントしてます。この作業は楽しいけど、80人とかになるとかなり時間がかかりますね」

●全組を同じ構図で撮っている理由

PCの方は、下の「関連写真」を見ていただきたい。掲載されている砂浜の写真を見ると、撮影した砂浜の場所こそ違うが、全て同じような構図で撮影していることが分かる、

「常に引きで撮っているのは“劇場”の全体をとっているから。これが写真のテーマである『関西』であり、僕の絶対的な構図だと決めました。決めた構図で個性あふれるステージをひたすら撮り続けるスタイルです。僕が広告撮影で培ってきた、カッチリ撮る中で自分の色を出す作業ですね」

背景にも気を使っていて、まわりの賑わいが分かるように、敢えて人が楽しんでいる風景が映るようにしているという。

●友近と同期!ロビンさんは、NSC(吉本総合芸能学院)の23期生だった!

そんなロビンさんはどういう人なのかというと…
「僕はお笑いを目指していて、大学在学中にNSCに入ったんです。23期生でして、友近、三浦マイルド(2013 R1ぐらんぷり優勝)、モンスターエンジンの西森さんと同期です。友近とはたまに飲みに行きますし、今年のR1で三浦マイルドが優勝した時は、本当に嬉しかったですね。続ける事のカッコ良さを感じました。僕の方はというと『ロビンソン』というコンビを組んで、ボケを担当してました。もう12、3年前の事になりますね(笑)。『ロビン』という名前はここからきています」

●おむつにバナナを指してドッジボール大会出場。そこでもらった商品が人生を変えた!

ある日、京都の番組でドッジボール大会に出場。そこで、運命のモノに出会う。
「テレビに映るかもれないっていうので、僕はおむつをはいて、バナナを挿して大会に出たら審査員特別賞をいただきまして。その商品がポラロイドカメラだったんです」

人間、なんでも率先してやってみるものである。まさか、おむつとバナナで、ポラロイドカメラがいただけるとは。
「それ以来、同期のメンバーや大学の友達を撮るようになって、写真の世界が気になるようになりました。夢を求めて、ネタをずっと書いていましたが、芸人としてはくすぶる日々が続き、相方が資格を取ってマッサージ師になると言い始めたの頃、僕は写真の世界に飛び込むことを決意しました」

大学卒業と同時にフォトスタジオに入社。3年間のアシスタント生活を経て2003年よりフリーランスで活動されている。

――友近さんの写真も撮影されました?
「一度、友近の番組『THAT'S ENKA TAINMENT〜ちょっと唄っていいかしら?〜』(朝日放送)の取材で撮らせてもらいました」

――おお〜〜!撮影中はどんな雰囲気でした?
「なんだか、照れるというか、恥ずかしかったですね(笑)。でも、友近はやっぱり被写体として格好良いんです。普段もずっとお笑いのことを考えていて、プロ意識が非常に強いですね。NSC時代からズバ抜けてましたし」

友近ファンの筆者としても、ロビンさんに友近さんの素敵な写真を撮り続けて欲しいと願うところである。

――では、今後の目標を教えてください。
「やはり友近の写真集は絶対撮りたいですね!あと『リハウスガール』のCMに出てくる子のような、美少女も撮りたいです。元々、広末涼子さんを撮りたいっていう思いでこの世界に入ったんですけど、広末さんのように一気にスター街道をかけめぐっていくような方を僕のこの手で撮りたいです。あと、海岸での撮影は海外でも撮影したいですね。色々な海岸で撮った写真を集めて、写真展を開きたいです。色々と言いましたが、とにかく“抜けた気持ちいい表情”を撮り続けたいですね、それが僕の使命!」

もちろん、須磨海水浴場での活動も続けるという。
「須磨の海岸から神戸の震災の復興も伝えたかったし、撮られるほうも、撮るほうもいいテンションで楽しくていい写真が出来て、その写真を見た人がハッピーな気持ちになって、僕の写真でプラスの力に変われば光栄です」

毎年撮影しているため、毎シーズン遊びに来てくれる人や、恋人ができて彼女を連れてくる人もいるという。今夏、須磨の海岸に行ったら、白バックを見つけてみては?おそらく、そばにはハイテンションで「OK!いこーぜ!はじけようぜ!レッツ、カモン!」と言っている長谷波ロビンの姿があることであろう。※とはいえ、体力的にはフラフラになっていると思うので、何か飲み物でも持っていってあげた方がいいかも。  (取材・文/やきそばかおる)


●長谷波ロビンさんのサイト
http://www.robin-jpn.com/index.html

ロビンさんの写真を見たい方はこちらでも。
「写真新世紀 大阪展 2013」
2013年4月2日(火)〜4月25日(木) 10:00〜19:00(会期中無休)
OAPアートコートギャラリー
〒530-0042 大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F
入場無料