街の路上やビーチで、男性が日焼けした女子を言葉巧みに誘い、撮影まで持ち込む“企画もの”の代名詞的存在、「ナンパAV」に異変が起きている。

「ナンパもの? 企画系ではそこそこ人気ありますよ。よく出ているのは“4時間総集編”といった過去のシリーズをまとめたものですね。だいたいナンパものの新作って月に数本しか入荷しないですから、制作本数そのものが少ないのかもしれない」(某有名DVDレンタル店)

ナンパもので有名なAVメーカー、ホットエンターテイメントの広報もこう証言する。

「ウチは毎月4本くらいリリースしてますが、言われてみれば、ナンパもの専門のメーカーさんってウチを入れても3社くらいしか残ってない。業界全体で見ればナンパAVの制作本数が減っているってことになりますね」

人気の高い企画ならば、制作サイドとしてはこぞって作りたがるはず。しかし、なぜナンパAVに限って制作本数が減少しているのか。AV業界に詳しいコアマガジン社の編集者、松沢雅彦氏は言う。

「(ナンパAVは)実はもう消滅しているのに近い状況でしょう。AV業界全体が不振ってこともあるけど、2008年の東京都の迷惑行為防止条例改正が大きかった。路上でスカウト行為やキャッチができなくなった。つまり、AV女優プロダクションの人が路上で声をかけてスカウトするとか、ナンパAVで女のコに声をかけるのも一緒ってこと。渋谷とか新宿ではロケが難しくなって、ナンパAVから撤退したメーカーも多いんですよ」

20年以上、現場でナンパAV撮影に立ち会ってきた男優兼監督の島袋浩氏も同意する。

「渋谷は撮影しにくい。車の中に女のコを連れ込むと、それを見た第三者が通報するんです。パトカーが10台ぐらい集まってきたことがあった。それからは必ず撮影スタッフの中に女のコを入れて、不審な感じがしないようにしたり、気を使うようになりましたよ」

しかしナンパAVが衰退した理由は、迷惑行為防止条例だけではないらしい。

「AVメーカー側の自主規制もどんどんキビしくなっているのもある。メーカーによっては『キミは女優の●●さんに似ているね』って声をかけるのが女優の所属事務所からのクレームを警戒してNG。街中のBGMが入るのも音事協(日本音楽事業者協会)からの指摘を恐れてNG。だからロケ隊もなるべく音のない所に行くんです。それでも街中だと音楽の宣伝カーがグルグル走ってて、ロケのBGMに入る。現場は、そうとう神経過敏になっている」(島袋氏)

こんな状況では、むしろ今でも新作がリリースされていることをありがたく思うべきなのかもしれない。

■週刊プレイボーイ32号「夏の風物詩『ナンパAV』が消滅の危機!?」より