2012年のシアトル・マリナーズは、4月29日まで勝率5割付近をウロウロしていたが、水曜日の午後、セーフコ・フィールドで行われたアスレチックス戦で2-1で負けた試合の9回に、最後の打者になったイチロー・スズキが、その日3つ目の三振を喫した時、ジャック・ズレンシックGMはトレード・マーケットで売り手となった。

ズレンシックは、そうすることには慣れている。彼は2年前に、左腕の先発投手であるクリフ・リーをテキサスに送り、昨夏は24時間の間に、先発投手のダグ・フィスターをデトロイトに、エリック・ベダードをボストンに送った。

そしてマリナーズのベテラン先発投手ケビン・ミルウッドは、今シーズンの明らかなマリナーズのトレード候補だった。なぜなら彼は37才で、先発ローテーションの5番目、ミルウッドはC級のプロスペクトよりも素晴らしいコントロールを見せていなかった。しかし彼は、優勝争いの見込みがありながら、投手の補充が必要なチームには価値がある。その男は、投球を知っているからだ。
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5週間前、ミルウッドはコロラドでロッキーズを相手に完封勝利を飾った。クアーズ・フィールドでそれをやったのは、他に8人しかいない。そして6月8日のドジャース戦で、彼は右足の付け根に張りが出るまで、6回をノーヒットに抑えた。

その日のノーヒッターは、複数の投手によって成し遂げられた。そしてミルウッドのトレードの価値は落ちなかった。しかし素晴らしい成果を残したドジャース戦の投手の一人となった後、彼は本拠地のジャイアンツ戦と遠征でのパドレス戦で打ち込まれた。水曜日のミルウッドは、先頭打者のココ・クリスプにライト側の観客席に運ばれ、たった1球で完封を期待する人たちの期待を裏切った。

ミルウッドは、マウンド上での仕事を続けたが、3回途中で怪我が再発した。

「彼がなんか、おかしな様子でマウンドから降りたんだ」キャッチャーのジョン・ジェイソは言った。「彼がどうかしたのかと思った。だけどその後、彼は感情を表に出さない人間だって思い出した」

ミルウッドのその日の仕事は終わった。

「彼は違和感を感じたようだ」エリック・ウエッジ監督は言った。「私に選択の余地はなかった」

足の付根の張りは、ハムストリングの張りと同様でとてもしつこい。もしミルウッドが最低でも1回か2回の先発を飛ばさなかったら、それは驚きだ。そして7月31日のノン・ウェイバー・トレードの締切日までに、彼のトレードバリューが復活したら、それは衝撃を与えるだろう。

ミルウッドの不運の恩恵を受けたのは、彼に替わって登板してロングリリーフをしたヒサシ・イワクマだ。日本のパシフィック・リーグからきたフリーエージェントとして1年契約を結んだイワクマは、豪速球を投げる投手が多いマリナーズブルペンで、ほとんど忘れられた存在だった。

イワクマはシーズンが始まって2週間が経つまで登板の機会が訪れず、水曜日のアスレチックス戦で3 2/3イニングで49球を投げるまでは強烈な印象を残していなかった。

「彼のコントロールと、投球の組み合わせは印象に残ったね」ジェイソは言った。「彼はホームベースの両サイドに球を投げ分けて、打者のバランスを崩し続けた」

 マリナーズがイワクマを大切にしてきたのには理由がある。昨シーズンの彼は、右肩を痛めて二ヶ月間も故障者リスト入りをしていた。その怪我は2008年の沢村賞(日本のサイ・ヤング賞)投手から、6〜7勝を奪った。

その31才が東京生まれであることは知っている。そして彼がロングリリーバーを望んでいないのも知っている。彼は日本で226試合に登板しているが、そのうち225試合は先発だったのだ。

しかし仕事は仕事だ。そして水曜日、イワクマの挑戦は三回の表に始まり、仮想の先発投手としてアスレチックスと対戦した。

「イワクマは、大きかったね」ウエッジは言った。「あの状況で出てくるのは、難しいことだった。彼は私たちに、試合に勝つチャンスを与えてくれた」

しかしマリナーズはマリナーズだった。イワクマの成果は、メジャーリーグでの初黒星だった。シアトルの打撃はセーフコ・フィールドが苦手だ。それは再びと言いたいが、そうでない時があっただろうか?マリナーズの投手陣は、このシリーズでアスレチックスに5点しか与えず、37人の打者を三振に取った。それでもマリナーズは3試合のうち2試合で負けた。

シアトルの投手陣は、時に選択の余地なく、パーフェクトに近くではなくパーフェクトにならなければならない。今日、イワクマはコーナーの両サイドに投げる能力を見せたが、7回の初めにヨエニス・セスペデスにホームランを与えてしまった。

マリナーズが餌を与えたかのようになったキューバから来た新人のセスペデスは、カウント1-1から、その球場であまりボールが届かない場所であるレフト-センター間に叩き込んだ。

「失投です」イワクマは通訳を通して短く言った。

ミルウッドのトレードバリューが限りなくゼロに近づいた今日の午後、ズレンシックとウエッジは、先発ができる選手を見つけたことを喜ばなければならない。楽天的な見方はこうかもしれない。マリナーズはヒサシ・イワクマのためにケビン・ミルウッドをトレードしたと。

シーズンの半分まであと4試合が残っていながら45回も負けているチームにとって、それは悪いご褒美ではない。

他の44の負けについては?慰めもないし、ご褒美も無しだ。それは今のミルウッドの耐久性には疑問符が付き、トレードを可能にするシナリオもないということだ。

だけどそう、日はまた昇る。日出ずる国からきた投手と共に。

参考記事:Season on rise for Iwakuma JOHN MCGRATH; STAFF WRITER  The News Tribune
http://www.thenewstribune.com/2012/06/28/2197274/season-on-rise-for-iwakuma.html