オリヴェイラ監督にどんな質問をしようか?


試合後、真っ先に頭に浮かんだのはそんなことだった。





2011J112節。浦和×鹿島。





本来、この試合は鹿島のホームで行われる予定だった。しかし、鹿島スタジアムが震災の影響によって使用できないことから、鹿島はホーム&アウェイの日程変更を申し出た。浦和側は「いや、国立競技場を使って下さい」ということもできる。しかし、サポーターの重要性を理解している両クラブはそれをしなかった。



以前、浦和に対して挑発的な弾幕を出した鹿島サポーターも、この日の試合前ばかりは友好的だった。過去の“レッドバトル”よりも殺伐とした雰囲気が若干ではあるが薄れていた。そんな試合の主審を務めたのはW杯でも主審を務めた西村雄一である。





今シーズン開幕前、「W杯の功績を受け、選手と良い関係でレフェリングができているようになっているのでは」と問いかけると、「顔でレフェリングはしない」「2011シーズンは大切な一年になると思っています」という熱い答えが返ってきた。


『顔でレフェリング』というのを簡単に説明すると、たとえば、有名なシェフが作った料理と、無名の見習いが作った料理が同じものだったとする。それでも、どこか有名なシェフの料理がおいしく感じたりしてしまう感覚に近い。多少の微妙な判定であれば、受け入れてもらえるというような。逆に、新人の主審は顔がないため、ボールアウトの判定ひとつで物凄いプレッシャーをかけられたりする。






西村が「2011シーズンは大切な一年になると思っています」と言ったのには、理由がある。





審判は敵だ―


『中東の笛』という揶揄はそんな思いの最たるものだろう。要は、「審判は向こうのチームに有利な判定をする」という意味が込められている。


Jリーグのサポーター間でも、主審に対してそのような感情が働いているらしい。当の私も、小学生時代、あるクラブを応援していた時に、一緒になって「審判 審判 へぇ〜たくそ〜」というシュプレヒコールを歌っていたくらいだ。


そして、選手も少なからず、審判に対して敵対感情を持っていた。それは、審判の技術不足から生まれたものでもあり、決して選手だけの問題ではないというのは付け加えておきたい。


それが近年、変わりつつある。





審判員たちは、そんな空気を感じている。


だからこそ西村は、伝わらなくてブーイングを浴びようとも、ピッチ上では選手と良い関係で試合を作っていきたい。そんな思いから「2011シーズンは大切な一年になると思っています」と熱く語ったのだ。そして、この日の西村からはそれが伝わってきた。








20秒、競り合い時、柏木に青木の腕が当たってしまいファウルに。よく見ていた判定で、コミュニケーションの取り方も素晴らしかった。


7分、高橋の足にスライディングタックルする格好になった青木に注意。アドバンテージを採用することもできたが、テンションを見てファウルをとった。インタビュー
をご覧になられた方はおわかりになると思うが、これがW杯で掴んだものでもある。


13分の西のシュートは興梠の手に当たったように見えたが、そのままゴールに。西村もおかしいと感じたのか、副審とアイコンタクトしていたが、“見えないものは吹かない”。さらにいえば、よけようとした手で、不必要な位置にないし、ボールが手に向かっていた。


15分にもスピラノビッチとコミュニケーションをとる。23分のスライディングタックルもボールにいっているため、ノーファウル。30分の興梠へのファウルも見逃さない。








西村はとにかく選手とコミュニケーションをとり続ける。





その最たる例が35分。


エスクデロのドリブル突破を、アレックスをホールディングで止めようとするが、エスクデロがそのまま突破を続けたためアドバンテージを採用する。とはいえ、アレックスのプレーはカードかどうかギリギリのため、プレー後にアレックスに注意を与える。警告を出さずに済ませるために、である。





この注意にオリヴェイラ監督が激昂する