プロ野球開幕投手全員が中学軟式出身!軟式出身は不利じゃない!?

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いよいよ開幕した2019年のプロ野球ペナントレース。一方で甲子園球場では春の選抜高校野球大会も佳境を迎えており、本格的な野球シーズンの訪れを感じる時期となった。プロ野球選手のアマチュア時代に触れる時に、出身高校や大学は紹介されることが多いが、中学まで遡って見るケースは少ない。そこで今回は今シーズンの開幕スタメンに名を連ねた日本人選手の出身チームから、どのような傾向が見えてくるかを調査した。

3月29日の開幕戦でスタメン出場を果たした日本人選手は97人。その選手をまず中学時代硬式か軟式かで分けたところ硬式出身が63人(65%)、軟式出身が34人(35%)となり、現在行われている選抜高校野球で調査した割合(硬式出身:64%、軟式出身36%)とほぼ同じ数字となった。これだけで判断するには材料が少ないが、大まかに言うとプロ野球と高校野球のトップレベルは約2/3が中学時代から硬式野球を経験していたということになる。早めに硬式球でプレーしていることのアドバンテージは確かに存在していると言えるだろう。

しかしポジション別に見てみると面白い傾向が出てきた。

投手:硬式出身0人(0%) 軟式出身11人(100%)

捕手:硬式出身8人(67%) 軟式出身4人(33%)

内野手:硬式出身33人(79%) 軟式出身9人(21%)

外野手:硬式出身21人(70%) 軟式出身9人(30%)

指名打者:硬式出身1人(50%) 軟式出身1人(50%)

野手合計:硬式出身63人(73%) 軟式出身23人(27%)

なんといっても驚きなのが開幕投手を務めた日本人選手11人全員が軟式出身だったのである。改めてその顔ぶれと中学時代の所属チームを見てみよう。

広島:大瀬良大地(大村市立桜が原中)

ヤクルト:小川泰弘(田原市立赤羽根中)

巨人:菅野智之(相模原市立新町中)

DeNA:今永昇太(北九州市立永犬丸中)

中日:笠原祥太郎(新潟市立新津第二中)

西武:多和田真三郎(中城村立中城中)

ソフトバンク:千賀滉大(蒲郡市立中部中)

日本ハム:上沢直之(松戸市立第一中)

オリックス:山岡泰輔(広島市立瀬野川中)

ロッテ:石川歩(魚津市西部中)

楽天:岸孝之(仙台市立柳生中)

見事なまでに全員が中学軟式野球部の出身となった。もう一つ特徴的なこととして言えるのが、高校時代に有名だった選手が少ないというところだ。この中で高校時代に最も高い評価を受けていたのは山岡になる。3年夏の甲子園に出場し、当時ダルビッシュ有が「動画見たけど、これは一番だわと思いました」とツイートして話題となった。ただ山岡も体のサイズの無さなどもあり、社会人野球を経てプロ入りしている。高校から直接プロ入りしているのは千賀と上沢の二人だが、千賀は育成4位、上沢は支配下指名ながら6位という低い評価でのプロ入りである。

また甲子園出場経験があるのは山岡、大瀬良、小川の三人だが、小川は21世紀枠(成章高)での出場である。今永、笠原、石川、岸などはプロのスカウトの間でもほとんど話題に上るような選手ではなく、所属していた高校も強豪校とは言えないチームだった。ただ逆に言うとそういう環境だったからこそ、高校時代に無理をして試合で登板することがなく、大学以降での飛躍に繋がったと考えることもできる。この結果を見ると、投手に関しては中学時代に軟式野球であっても、大きなデメリットではないと言えることは間違いないだろう。

一方の野手はやはり圧倒的に硬式出身が多い結果となった。更にポジション別で見て最も硬式出身の割合が高かったのが内野手だ。高校生や中学生にボールが硬式になった時にとまどうことを聞くと、打球のバウンドと答える選手が多い。ゴロの処理が最も多い内野手ではやはり硬式球に早くから慣れておくことの強みがあると言えるだろう。

もう一つの大きな違いはバッティングであるが、軟式出身の強打者はいないのだろうか。改めて個別に見ていくと、下記のような選手が軟式出身であった。

青木宣親(ヤクルト/日向市立富島中)

丸佳浩(巨人/勝浦市立勝浦中)

大山悠輔(阪神/下妻市立千代川中)

糸井嘉男(阪神/京都組合立橋立中)

柳田悠岐(ソフトバンク/八幡少年野球クラブシニア ※軟式クラブチーム)

大田泰示(日本ハム/松永ヤンキース ※軟式クラブチーム)

近藤健介(日本ハム/修徳学園中)

青木、丸、糸井、柳田はタイトルも獲得している強打者である。軟式出身であってもプロのホームランバッターになれないということは決してないだろう。そしてこちらも先述した投手のように、高校時代から高い評価を受けていた選手は大田、近藤くらいであり、大学以降に伸びた選手が多い。青木、丸はプロで大きく開花した選手であり、糸井にいたってはプロ入り後に野手に転向した選手である。こういう例を見ると、打撃の感覚も後から身につけることは十分可能と言えるだろう。

実情としてはプロ野球のレギュラー、特に野手は硬式出身の方が圧倒的に高い傾向にあるが、投手に関しては軟式でも活躍できる可能性は高く、野手でも大学以降に伸びる選手が存在していることが分かった。この結果を見て高校の時点で見切りをつけることなく、その後の飛躍を目指して大学でもプレーを続ける選手が一人でも多く出てくることを期待したい。(西尾典文)