2007年の自国開催以来の8強進出を果たしたベトナム。日本を相手にいかなるサッカーを見せるのだろうか。前列右から2番目、19番がグエン・クアン・ハイ。(C) REUTERS/AFLO

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 昨年12月、SUZUKI CUPを制して10年ぶりにASEAN王者となったベトナム代表が、UAEの地でも躍動している。

 グループステージを1勝2敗の3位で終え、各グループ3位の上位4か国での勝ち抜けスロット“最後のひと枠”を争ったレバノン代表とは実に“フェアプレーポイント”の差であった。

 ラウンド16で相まみえたのはヨルダン代表。今大会初戦でオーストラリア代表に勝ち切り、無失点で勝ち上がってきたアル・ナシャマ(ヨルダン代表の愛称)は、ベトナムにとっては難敵と思われたのだが――。

 この試合で筆者はベトナムの命運の鍵を握ると思われるふたりのキーパーソンに注目した。パク・ハンソ監督とMFグエン・クアン・ハイ(ハノイ所属)である。

「東南アジアの頂点も格別だが、アジア地域でより高みへ向かって努力する」

 東南アジア最高位をもぎ取ってみせ、アジアカップへの意気込みをこう語っていた韓国人指揮官。グエン・スアン・フック首相から勲章を授与され、ベトナム国内では時の人となっている。そして試合前のメディアセンターには多くの韓国メディアが押し寄せていた。自国でも注目を集めている証だろう。

 日曜日の昼下がり、スタジアムには1万4205人のファンが集った。両国のファン比率は3対7でヨルダンが優勢。場内に流れる中東的BGMにヨルダン・ファンが乗っかり空気を創っていた。

 試合開始前の国歌斉唱、FWグエン・コン・フォン(ホアンアイン・ザライ所属/元水戸)が大声で歌う姿がスクリーンに映し出されると、ベトナム・ファンも負けじと歓声を上げ、戦闘モードへのスイッチを入れていた。
 
 試合は、39分にMFバハ・アブデルラフマン(アル・ファイサリ所属)のFKでヨルダンが先制し、優勢のまま折り返す。しかし迎えた後半は、終始ベトナムのペースで進んだ。そして51分にMFグエン・チョン・ホアン(FLCタインホア所属)の絶妙クロスに、FWグエン・コン・フォンが合わせて振り出しに戻した。その後も6割近いポゼッション率を誇りグループステージ無失点のヨルダンを攻め立てた。試合は延長戦でも決着がつかずPK戦へ。そして、越露混血のGKダン・バン・ラム(シマン・ハイフォン所属)の活躍によってヨルダンを下し、“ジャイアント・キリング”を実現してみせたベトナム。ヨルダンの長所である縦に放り込んでくるカウンターへの対策もきっちりと講じてきたパク采配は天晴れだった。
 
 もうひとりの注目、21歳の攻撃的MF、グエン・クアン・ハイも攻撃の中心として輝きを放っていた。筆者は2年程前から彼に注目してきたが、当時はどこか幼かった青年の胸板はいつの間にか分厚くなり、いまや自信に満ち溢れたプレーでベトナムの攻撃をリードしている。

 彼にはJクラブも注目していると聞くが、この冬の移籍市場では契約したという話は聞こえてこない。ピッチ外の障害はあるだろうが、一皮むけた感のある今の彼ならJリーグでも遜色なく輝ける素材だろう。
 
 準々決勝の相手は、日本代表に決定した。平均年齢の若いベトナム代表は、多くの選手たちがアンダー世代から一緒に慣れ親しんできたが、その経験を大一番で存分に発揮することができるのだろうか。試合は24日、ドバイのアル・マクトゥーム・スタジアムで行なわれる。
 
取材・文●佐々木裕介(フリーライター)