日本一長い距離を走る路線バスは片道約170km。逆に日本一短いバス路線となると特定は困難ですが、なかには片道500mというものもあります。このような「短すぎる路線」、なぜ存在するのでしょうか。

都バスは短距離路線の宝庫?

 高速道路を経由しないバスのなかで、日本一長い距離を走る路線バスは、奈良交通「八木新宮線」の約167kmです。では逆に、最も短いバス路線はどこかというと、バス会社ではおおむねの営業キロしか公開していないことも多く、断定は困難です。しかし、全長2kmにも満たないバス路線は全国にあります。


都営バスのなかでも運行距離が短い「市01」は、築地中央市場バス停で10分ほど停車。ターレットトラックが行き交う(風来堂撮影)。

 たとえば、東京都内に11カ所の営業所をもち、129もの系統を運行している東京都交通局(都営バス)には、短い路線がいくつか存在します。恵比寿駅と日赤医療センターを結ぶ「学06」や、目白駅と日本女子大を結ぶ「学05」は、片道約1.6kmから1.7kmという短さ。高田馬場駅と早稲田大学を結ぶ「学02」も2.2km程度しかありません。これらは系統名が示すとおり、おもに沿線にある学校や幼稚園に向けた路線です。

 ほかに、新宿駅西口と東京都庁を結ぶ1.9kmの「CH01」も短い系統ですが、「学」系統や「CH01」はいずれも料金が安く設定されており、特殊なバスといえるでしょう。通常運賃ということになると、「市01」が最短です。

「市01」は新橋駅を出発して築地中央市場バス停に停車したのち、国立がん研究センターバス停を経由する別ルートで新橋駅に戻る循環系統。総距離は2.5kmです。ちなみに、便によっては築地中央市場バス停を経由しないものもあり、その場合は2.3kmとなります。

 これら運行距離の短い系統に共通するのは、特殊かつ大きな需要を見込める区間であること。「学」系統であれば特定の時間に大量の学生が乗車しますし、遅刻しそうなときなどは、たとえ歩ける距離でもバスに乗ってしまおうと考える人は多いのではないでしょうか。もちろんダイヤも、学生の通学時間に合わせて組まれています。

もっと短距離、なのに本数が多い「病院行きバス」

 2km程度の路線は、全国にかなりの数あります。1km以下となるとさすがに少ないですが、存在します。ひとつは千葉県柏市にある阪東バスの北柏駅〜慈恵医大柏病院(26系統)。わずか1.0kmの距離を4分で結び、途中のバス停はありません。駅から病院に行く専用のバスといって差し支えないでしょう。利用者はかなり多く、なんと1日に50往復以上の運行本数があります。

 病院行きのバスは短距離のものが多く、栃木県にあるおもちゃのまち駅(壬生町)から獨協医大病院への路線も、距離わずか0.8km。関東自動車が運行するこの路線は、途中のバス停もふたつあります。やはり病院に通う人の需要を見込んだ運行となっており、本数は日に40往復以上です。

 そして、同じく病院への路線で驚きの短さを誇る路線があります。近鉄の大阪上本町駅から至近の大阪赤十字病院へ向かう「赤十字病院線」です。その距離なんと500m。歩いて10分かかりません。ただしこの路線は大阪赤十字病院のシャトルバスとして運行されているもので、土休日の運行は一切なく、平日7時台から18時まで12分間隔の運行。運賃は100円です。


都営バス「学05」のバス停に表示されているシンプルすぎる路線図(風来堂撮影)。

 学校よりも病院への路線で距離が短いものが多いのは、高齢者や病人など、歩くのが辛い人が利用するため、非常に短い距離でもバスを運行する意義や需要があるから、と考えられます。

※記事制作協力:風来堂

【路線図】起終点が近すぎる? たった500mの路線バス


近鉄上本町駅と大阪赤十字病院を結ぶ近鉄バス「赤十字病院線」(国土地理院の地図を加工)。