生徒を守る立場である教師自らが、いじめを行っていたり加担していたといった報道が後を絶ちません。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、そもそも学校でのいじめを止めることが出来るのは教師だけとした上で、彼らに求められる態度や役割、そして学級内で醸成すべき雰囲気について記しています。

仲間を守る一言

立冬も過ぎ、本年もあと1か月あまり。今の時期は毎年、いじめ相談が増えます。何とか年内にいじめを解決できないかとの相談です。「今まで学校に相談しているのですが、先生方がいじめに向きあってくれません」と、このように相談する保護者の方も少なくありません。いじめを訴えても「いじめとは認定できません」と結論づけられてしまうことが、多々見受けられます。さらに、教師によるいじめの相談もきています。

最近の報道でも、教師によるいじめ、教師によるいじめの加担、助長事件が相次いでいます。福井県池田町では、今年2月、中2男子生徒が校舎3階から転落して死亡。町教委は、「担任と副担任から強い叱責を受けて追い詰められた末の自殺」と結論づける報告書を公表しました。教師の叱責は執拗(しつよう)で、怒鳴り声も大きく、目撃した生徒が「聞いている者が身震いするくらい」とも報道されています。男子生徒の母親は、取材に応じて、「教師によるいじめ。他の先生も見て見ぬふりをした」と語っています。

福岡市では、小学6年の女子児童へのいじめに教師が加担し、児童は体調を崩して入院しました。集合写真から、その子の顔だけを切り取ったり、自分で切り取らされたり、「死ね」と言われたり、様々ないじめが行われたのですが、担任はいじめ加害児童らに注意せず、「冗談だ」と笑いながら、その子の顔が切り取られた写真を家に持ち帰らせた、と報道されています。

学校でのいじめを止めることができるのは教師だけ。このように、自ら生徒をいじめたり、いじめ加害者に迎合して、いじめに加担、助長する教師が、子供たちを指導したり、いじめを解決することなどできるはずがありません。教師からのいじめなど言語道断です。そのような教師として不適格な人には、学校現場から退いていただくしかないでしょう。

その一方で、勇気を出していじめをやめさせた中学生が話題になっています。11月12日、中学生が身近な体験を通じて意見を述べる「少年の主張全国大会」が開かれ、新潟県の中学2年生、平沢幸芽さんが「仲間を守る一言」というテーマで意見を述べて、最優秀の内閣総理大臣賞を受賞しました。新聞に掲載された平沢さんの主張を要約すると、

皆でひとりの生徒を仲間外れにしてしまった。「こんなのいじめだ」と分かっていた。でも、自分がはぶられることは絶対に嫌で、自分の意見が言えない。そんな自分が大嫌いになった。そんな中、「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」という言葉に出会った。自分が変わらなければならない。自分が言うべきは、「自分を守るための言葉」ではなく、「こんなのいじめだよ。もうやめよう」という「大切な仲間を守るための言葉」だと気付いた。勇気を出して、友達に、「もうやめよう」と伝えて、皆でその子に謝った。今では「良い」、「悪い」と自分の思いを伝えられるようになった。その一言が、周りの大切な「仲間を守る一言」になるからだ。

(2017年11月14日付産経ニュース記事を要約)

勇気を振り絞った一言が心を打ちます。

どこの学校でも、子供たち自身の力でいじめが解決できれば、それが一番良いことだと思います。しかし、いじめを止めようとしたら、逆に自分がいじめの標的にされてしまった、というケースが後をたちません。「傍観者」はいけない、子供たち自身でいじめをやめさせる指導を、とよく言われますが、でも、「今度は自分がいじめられるかも知れない」という恐怖心には、あらがいがたいものがあります。

いじめを止めたらいじめられる」、この恐怖心を乗り越えるには、「いじめを止めても絶対いじめられない」という雰囲気を作り出してあげなくてはなりません。仲間がいじめられているとき、他の子が「やめなよ」と言ってもいじめ返されない教室、先生に「仲間がいじめられている」と相談しても、「チクッた」と報復されない教室、そうでなければ、「仲間を守る一言」などいえません。

いじめを止めてもいじめられない」という雰囲気を作るのは教師です。教師が、「いじめは悪。絶対に許さない」、「いじめからは私が守る」、「仲間を助ける勇気ある一言は大事」、「いじめの報告はチクリではない」と、いじめを許さない強い態度を徹底することです。実際にいじめがあった場合には、被害者側に寄り添い、他の教師と連携を取りながら全校をあげて、いじめ解決に取り組むことが大事ではないでしょうか。

そして、何よりも大切なことは、日々の毅然とした指導にあります。教師が、「キモー」とか、「くさー」という言葉を見すごさず、「今のは誰? 謝りなさい」と一言いうだけで、クラスの雰囲気が引きしまってきます。先生のその態度を見ているからこそ、「いじめを止めても先生が守ってくれる」という信頼が生まれ、「いじめを止める勇気」が出てきます。

学校や教師には、いじめのない環境で子供たちを学習させる責務があります。教師にも勇気が必要です。「悪いものは悪い、良いものは良い」と判断して、注意する勇気です。そして、子供たちが「傍観者」にならない教室、「仲間を守る一言」が言える教室を増やしていきたいと思います。

いじめかなと思ったら、ご遠慮なくご相談ください。少しでもお役にたてれば幸いです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

松井 妙子

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