男性がスイッチを少年に贈ったワケは…

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品薄が続く任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の購入希望者を狙った電子マネー詐欺に引っかかり、「11か月かけて貯めた」計3万1000円をだまし取られたと嘆いた少年に、まさかの出来事が起きた。

悲嘆する少年に同情したあるゲーム会社の取締役男性が、新品のニンテンドースイッチを少年に無償でプレゼントしたのだ。なぜ、見ず知らずの少年に高価なゲーム機を贈ろうと考えたのか。J-CASTニュースは、プレゼントを贈った男性に話を聞いた。

「頭の中が真っ白になりました」

ツイッター上では2017年7月中旬頃から、ニンテンドースイッチの品薄を利用した詐欺に「引っかかった」と訴えるユーザーが続出している。手口は共通していて、購入希望者にプリペイド式の電子マネーで代金を「先払い」させ、商品を送らずに金銭だけをだまし取るというものだ。

この詐欺に引っかかったある男子中学生ユーザーは7月16日、ツイッターで、

「誰か助けてください。 だめだホントに逃げられた、Switch売ってくれるって言って簡単に乗ってしまった。死にたい、どうしよう」

と被害を報告。あわせて、詐欺アカウントとのDM(ダイレクトメッセージ)でのやり取りや、取引のために購入した3万1000円分の電子マネーの写真も公開した。

この少年は親から貰う月の小遣い3000円を貯め、11か月かけてスイッチの購入代金を用意したという。また、詐欺被害に遭ったことを報告する前に投稿したツイートでは、近隣の家電量販店5件を自転車で回ったが「(スイッチは)どこにもない」とも漏らしていた。

18日のJ-CASTニュースの取材に応じた少年は、すでに警察には被害届を出したと説明。詐欺被害に遭ったことに気付いた後の心境については、「頭の中が真っ白になりました」と振り返っていた。

なお、この少年の被害報告ツイートはネット上で大きな注目を集め、19日昼時点で投稿には1400件以上のリプライ(返信)が寄せられている。その大半は少年に同情的な意見だが、一部からは「救いようのない馬鹿だな」「頭が悪いから騙される」といった声も出ていた。

「スイッチを無料で贈らせて頂きたい」

今回の騒動で少年は、必死に貯めた小遣いをだまし取られた挙句、ネット上でも批判に晒されることになった。だが、こうした辛い状況に落ち込んだ少年に同情し、「救いの手」を差し伸べる大人が現れた。

それは、あるゲーム会社で取締役を務める男性ツイッターユーザーの「某ゲーム会社の末端作業員M」(@cgc_game_create、以下「M」)さんだ。彼は悲嘆に暮れる少年の投稿を見て、ツイッターで次のようなDMを送った。

「投稿を見て、何かできることは無いかなぁと考えた時、私に出来るのは今後ゲーム業界を支えていく子供達にゲームを少しでも遊んでもらう事だと思いました。なので、私からの少ない気持ちですが、スイッチを無料で贈らせて頂きたいと思います」

そして、少年の元には7月18日、本当に新品のニンテンドースイッチが送られた。少年は贈られてきたスイッチの写真をツイッター上に公開するとともに、Mさんへの感謝の言葉を繰り返しつづっていた。

品薄が続くスイッチは、オークションサイトなどで定価(税別2万9980円)を大幅に上回る4万円超のプレミア価格で取り引きされている。なぜ、こうした高価なゲーム機を見ず知らずの少年に送ったのか。

「M」さんは18日のJ-CASTニュースの取材に対し、過去に少年と同じようにゲーム機をめぐる詐欺に引っかかり、代金を支払ったのに商品が届かなかった経験があると明かす。その時は、Mさんに同情した友人が、同じゲーム機をプレゼントしてくれたそうだ。

今回、少年にスイッチをプレゼントした理由は、こうした過去の経験に基づくものだという。Mさんは取材に対し、

「私は困った時に何度も助けられてきて、少年の様子を見て、過去の自分がフラッシュバックしました。『今ここで、かつて自分を救ってくれた人間になれたら』と、気づいたら動いていました」

と話す。また、詐欺アカウントを信じて代金を支払った純粋な少年をただ批判するネットの動きを見て、どうしても「この子を救う」必要があるとも考えたという。

少年の反応は・・・

Mさんが少年に贈ったスイッチは、オークションサイトで落札したもの。少年はプレゼントに「凄く喜んでいた」ほか、Mさんに対して何度もお礼を述べているという。実際、少年はツイッター上でも、

「Mさんはゲームを楽しんでくださいと優しいお言葉を掛けてくださいました(略)立ち直れずにいた僕の意見を聞いて下さり、アドバイスまでして下さりました。本当にありがとうございます」

などと感謝の言葉を繰り返している。

なお、いまツイッター上で横行している「スイッチ詐欺」について、Mさんは「『ゲーム機が欲しい』という子供の欲を利用した悪質な手口だと思っています」とピシャリ。その上で、

「これからのゲーム業界を育てていく若い子供達を食い物にするのは辞めて頂きたい。子供達が安心してゲームが出来るような世の中になって欲しいと思っています」

としていた。