介護休業等に関する主な改正点

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■ニーズに合わせて柔軟な介護休業

1月から育児・介護休業法が改正された。注目は介護休業だ。これまでも介護休業は取得可能だったが、制度が硬直的で利用しづらい面があった。今回の改正で、より実体に即した形で休業できるようになる。親の介護が現実味を帯びてくる働き盛りの世代には心強い改正だ。

具体的に中身を見ていこう。これまで介護休業は、対象家族1人につき原則1回、93日まで取得できた。問題は「原則1回」の部分だ。自らも介護経験がある千葉博弁護士は、次のように解説する。

「介護には山が複数あります。たとえば親が倒れたときや、施設を探したり入所させるとき、あるいは親をいよいよ看取るときなどは、どうしても慌ただしくなります。従来は1回のみだったため、たとえば入院時に介護休業を取っていったん仕事に戻ると、最期を看取るときには有休などほかの制度を使って対応するしかなかった」

今回の改正では、介護休業を最大3回まで分割して取得できるようになった。たとえば親が倒れたときに20日、退院後に施設を探すのに30日、最期を看取るのに43日というように、必要な時期に柔軟に休むことが可能になる。

年5日の介護休暇も、1日単位から半日単位になった。これで午前中はケアマネジャーとの打ち合わせで休み、午後から出社という柔軟な休み方が可能になる。その他、介護休業と合わせて93日内で認められていた時短勤務等が介護休業と別になったり、介護終了まで残業免除を請求できる権利も明記された。

「今回の改正に合わせて、厚労省の省令で対象家族の範囲も拡大されました。従来、祖父母や兄弟の介護は自分が同居かつ扶養している場合しか介護休業の対象になりませんでしたが、同居・扶養の条件がなくなりました。離れて住んでいるおじいちゃんの介護で仕事を休むことも可能になります」

■上司のケアハラは会社の責任

今回の改正で企業は介護休業の運用体制を見直す必要がある。就業規則を変更したり、申請書類を用意するなど、やるべきことはたくさんある。なかでも重要なのが、ケアハラ(介護ハラスメント)防止措置だ。介護休業を理由に会社が従業員に不利益な取り扱いをすることは、従来、禁止されていた。たとえば介護休暇取得者を本人の意思に反して配置転換するのは違法だ。

「今回はさらに一歩踏み込み、上司や同僚にケアハラをさせない措置を講じるように会社に義務づけました。たとえば『介護で休むなんて責任感が足りない』という上司を放置すれば、会社も責任を問われます」

具体的にはセクハラやマタハラと同じように、社内に周知したり、相談窓口を設置するといった対策が必要になる。改正法はすでに施行されているので、まだ手をつけていない会社は早急に制度を整えたいところだ。

(文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 千葉 博 図版作成=大橋昭一)