国メディアの新京報は12日、中国では行政の責任者や官僚の「異常な死」が相次いでいるが、当局発表には不自然な点が多いとして、情報の公開を求める記事を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国メディアの新京報は12日、中国では行政の責任者や官僚の「異常な死」が相次いでいるが、当局発表には不自然な点が多いとして、情報の公開を求める記事を掲載した。

 記事はまず、広西チワン族自治区柳州市の肖文〓市長が「秘書と散歩中」に川に転落して死亡した件を挙げた。なお、秘書も転落して行方不明になったとの報道もあったが、人民日報系の人民網は11日、「秘書は転落しておらず、正常に出勤している」と報じた。(〓は草かんむりに「孫」)

 記事は続けて、湖北省恩施州財政局の王金維局長が9日午前、執務室の窓から転落して死亡した件と吉林省蛟河市公安局(警察)のカク壮局長が同日、執務室の窓から転落して死亡した件を取り上げた(「カク」は「赤」におおざと)。

 カク局長の転落死の場合、公安局は「執務室のガラス窓を自分で拭いていて、足を滑らせて転落」、「執務室には秘書がいた。手を伸ばして転落を防ごうとしたが間に合わなかった」と表明した。

 新京報は、同表明には多くの人が疑問を示した。インターネットでは「秘書もいるのになぜ、窓ガラスを自分で拭いていたのだ?」、「東北地方はすでに厳寒で、水滴がそのまま氷になるほどだ。そんな天候なのに、窓ガラスを拭いたのか?」といった書き込みが寄せられた。

 新京網は、「公務員が異常な死亡をした場合、背景に隠し事があるとは限らない」とした上で、カク局長の死亡について「なぜ、自分でガラスを拭いたのか。当時、何が起こったのか。監視カメラの映像資料も検死報告、現場にいた秘書の証言などを公開する必要はないのか」と批判。

 さらに、「地位のある官僚や政府関係者の異常な死は、本人の私事ではない」と主張。また、情報を公開してこそ、「真に突発的な事故で死亡した官員の潔白を示すのに役立ち、政府への信頼も維持することができる」と主張した。

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◆解説◆
 中国の習近平政権は、腐敗撲滅運動に力を入れている。腐敗摘発の現場を担当するのが、共産党の紀律委員会だ。取り調べは、警察よりもはるかに熾烈という。警察は行政機関なので、取り調べや訴訟などに関連する法律を全く無視するわけにはいかないが、共産党の場合には「超法規的」な取り調べを敢行するという。

 また、本人を取り調べる前に調査を相当に勧めているので、「取り調べを行う」と宣告されてしまえば、ほとんど逃れる術はないとされる。厳しい「訊問」で、芋づる式に取り調べ対象者が挙げられる場合も珍しくない。

 官僚などの飛び降り自殺などのかなりの部分が、自分が「取り調べ」の対象になるか、対象になることが確実という状況で発生しているという。

 新京報は直接書かなかったが、情報公開が「真に突発的な事故で死亡した官員の潔白を示すのに役立つ」との主張は、「腐敗により自殺に追い込まれた官員が存在する」と指摘したに等しい。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)