ネット上の漢字が減ってきている?読みやすい、わかりやすいネット・スマホ時代の落とし穴

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パソコンやスマートフォンの普及で24時間365日インターネットができる便利な時代になった。しかし、1つ気になっていることがある。ネットで見たり読んだりする世界から「漢字の表記が減っていないか?」ということだ。


●「書けない」から、「読まない」、そして「使わない」に変わりつつある漢字
インターネットのWebサイトやメディアで見かけるコンテンツの文章が、昔に比べて漢字の表記が減り、「ひらがな」や「カタカナ」で表記されることが多くなったように感じる。
たとえば、「ダメ」はよく見るが、「駄目」を見かけることはまずない。
さらっと書いたが、「まず」を「先ず」、「ない」を「無い」と表記されていることも少ない。また、文章そのものも、難しい表現も減って、簡単な文法の文章や文面が増えてきている。
「インターネットのコンテンツは」と一括りにするのは乱暴かもしれないが、文面や文章は、やさしく、読みやすくなってきているようだ。

これまで、パソコンやスマホの普及により、漢字を読めるけれど書けなくなったということは、よく言われてきたし、耳にもしてきた。そもそも漢字に触れる機会が減ったことで、漢字を書く機会も減り、漢字を読むことも減る。

こうして漢字を使うことが減った人たちが増えた世界になれば、漢字が使われなくなっていっても不思議はないだろう。

●難しい漢字や漢字の用法は、ひらがな化する?
スマホなどで文章を読む人が増えたことで、文章を読む速度や読む時間が短くなっているとも言われている。ネットのように短時間で読む(見る)習慣がつくと、漢字のように、音読み、訓読み、熟語によって意味が変化する文字は読むのが面倒になる。読む側は、自然に漢字を避ける傾向が強くなるのだろう。
一方で、サイト側にも、漢字を使わない世代が増えるにつれて、昔のように漢字の用法を厳密に管理できなくなってきたという事情もでてくる。
たとえば、「変える」、「代える」、「換える」、「替える」の違いなど、正確に使い分ける習慣がほぼ消失している現代で、以前のように正確に使い分けることは難しくなってきている。
誤った用法を表記し、指摘や叱責を受けるくらいなら、「ひらがな」や「カタカナ」で表記したほうが安全だからだ。

漢字が減ることは、読みやすくなり、わかりやすくなる。小説などの文学は別にして、インターネットの情報などでは、誰でもが読みやすくなることは良いことにも思える。

しかし、漢字でないと困ることもまだある。

●漢字がないと表現できない言葉の意味
たとえば、同音異義語だ。漢字を使わずに同音異義語をひらがなで書くと、逆に意味が通らなくなる。「ヘイコウした」とカタカナで書いても「平行」なのか「閉口」なのか意味が通じない。前後の文章から判断すればいいわけだが、それなら漢字で表記したほうがわかりやすく伝わりやすい。

言葉は時代と共に変化していくものだ。
しかし、情報元がインターネット、読む入り口がスマホなどに集約されることで、一様に漢字の使用率が下がるのではないかという危惧はある。

いつか日本語も、ひらがな・カタカナだけといった時代がくるのかもしれない。そんな時代では、昔の学生が「因数分解なんて、社会に出てから何の役に立つの?」と思ったのと同じように、未来の学生に「漢字なんて、社会に出てから何の役に立つの?」などと言われてしまうのかもしれない。

もちろん、これは冗談だが、実際に、ひらがな・カタカナ表記は増加しているし、今後も増えていきそうだ。

世界中のニュースがリアルタイムで読め、知りたい情報も検索で素早く知ることができ、遠く離れた友人ともいつでもコミュニケーションが取れるインターネットは、便利で、もはや生活から切り離すことはできない。
しかし、便利なインターネットの世界には、思わぬ落とし穴があるのも事実だ。
漢字、ひらがな、カタカナと多様な表現ができる日本語を、少し意識してみてはいかがだろうか。