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このところベテラン選手に厳しい現実が直面するニュースばかり飛び交っている中、前向きなニュースが飛び込んで来た。マリーンズの渡辺俊介が大リーグに挑戦するという。一歳上の上原浩治高橋尚成の活躍に影響を受け、今このタイミングしかないと挑戦を思い立ったという。

「37歳という年齢もあり、厳しい挑戦になるとは思うが、腹をくくって(米国へ)行くことにしました」

渡辺は海外FA権を取得しているが、今回は球団と話し合って自由契約にしてもらい、挑戦するという。交渉については代理人の団野村氏に一任するという。

本人も危惧するように37歳と、投手としては分岐点にさしかかる年齢。だが海外では稀少な(日本でもそうだが)アンダースロー。獲得に名乗り出る球団があって欲しいものだ。

日本を代表するアンダースローがメジャーのマウンドに立つ姿を見てみたいがどうなるだろうか?


(写真:まさに地を這うような投球フォームの渡辺俊介。来季はこのフォームがメジャーで見られるか!? 2005年11月)


37歳、成績は下降傾向。独特のアンダースローという希少価値を考えても、メジャーの球団がホイホイ手を挙げるかは疑問なのかもしれない。渡辺俊介本人は会見で、「メジャーに上がれる可能性が少しでもあれば、マイナー契約でも招待選手でも行く」と決意を示したなかに厳しさへの覚悟もにじませた。渡辺やファンの人には申し訳ないが、最初にこの一報を聞いた時には「えっ!?」という感じだった。


渡辺は今季、一軍では6試合の登板にとどまり、0勝4敗。25回1/3を投げて防御率4.62。先発ローテーション投手なら達したい規定投球回数には2010年を最後に達していないし、未勝利は若手の頃の2002年以来11年ぶり。故障かと思うファンも少なくないかもしれないが、ファームではイースタンの実戦でマウンドに上がっていた。

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今季のイースタン・リーグでの成績は13試合に登板して6勝3敗。木村優太、阿部和成、ディッキー・ゴンザレスに次ぐチーム4位となる62回2/3を投げた。ただ防御率は3.02。この数値を見る限り、ファームの選手を見下して投げるほどの格の違いを示せてはいないようだ。登板日でもないのにチームに帯同して鎌ヶ谷で、若手投手達と一緒に試合前に汗を流す渡辺の姿を何度か見た。


ともに長くチームを支えてきた小野晋吾薮田安彦が今季限りで現役引退を表明していたので渡辺の動向が気になっていたが名前が出ないので来季に勝負をかけるのかと想像していたら、球団と水面下でメジャー挑戦の交渉をしていたとは…。推測でものを言ってはいけないが、球団としても高額年俸のベテラン選手の処遇という点では渡辺の申し出に拒否、慰留することもないだろう。敢えて言えば渡りに船と感じているかもしれない。

渡辺としても、チームはおそらく自分より若手にチャンスを与える。来季、ファームから一軍にのし上がろうにも、今季と同等の実戦機会をもらえるかもわからない。それであれば、野球人生の集大成を海の向こうに求めるという選択も考えるだろう。


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三年前にファイターズの建山義紀が大リーグ挑戦を前提にFA宣言すると表明した時には、正直「気は確かか」と驚いたが(ごめんなさい)、渡辺はそれ以上の衝撃だ。もちろんマイナーリーグで苦しむことも覚悟の上でのチャレンジならむしろ応援したい。ただ、三年前の建山はファイターズにとって貴重なセットアッパーであったが、今の渡辺はマリーンズに必要ではあっても不可欠な選手では無かろう。

また海外FA権の行使でなく自由契約にしてもらっての挑戦というのも、大リーグ球団との契約が不成立に終わった場合に国内球団との契約に足枷になるからという、いわば退路を断たない行動とも取れ、潔さに欠けるという見方もあろうが、ここは渡辺の挑戦を応援したい。


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ライオンズの牧田和久や、ホークスの山中浩史といった渡辺の後継者的アンダースローが出てきたが、まだまだ渡辺の芸術的フォームを身近に見たい。


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敗戦処理。の年代だと、プロ野球に興味を持ち始めた時点で山田久志、足立充宏、高橋直樹、上田二郎、山下律夫、三沢淳、金城基泰と個性的なアンダースローが結構いた。

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その後も松沼博久、仁科時成などが活躍したが、徐々に減っていった。彼らの全盛期にメジャー挑戦が実現していたらと言うのもあるが、それが叶わなかった以上、渡辺のチャレンジに期待したい。本人が言うように、厳しいことは間違いないだろうが、NHKの大リーグ中継で、メジャーの右打者連中が渡辺俊介にきりきり舞いする姿を想像しただけでワクワクする。


* 筆者注.山田久志と松沼博久の写真は現役引退後のものです。