【文春vs新潮 vol.22】年賀はがきが46円のカラクリ、元トレンディ俳優・加勢大周が語る「逮捕された瞬間」、仮設住宅で暮らす独居老人の思い
［新潮］巻末グラビアの「ノルマ1万6000枚 『格安年賀状』が師走に出回る呆れた“事情”」。「年賀はがき」の値段は1枚50円だと思っていたが、金券ショップでは「46円」で売られているという。その理由がひどすぎる。
2002年まではお役所が発行するはがきを、年賀はがきも含めて「官製はがき」と呼んでいた。翌年からは「郵政はがき」と呼ぶようになったものの、今でも「官製はがき」と呼ぶ人も多いのではないか。形も値段も同じだし、なにより私製ではないという意味で。「官製はがき」には、買ったときから郵便料金が印刷されているし。
「私製はがき」ではないのだから、「官製はがき」の値段が引かれることはありえないのではないか。筆者はそう思い込んでいたが、現実は異なっていた。記事によると、まず「郵便会社の職員などには毎年、年賀状の販売枚数の“ノルマ”が割り当てられる」。そして、「少なくて数千枚、多くて1万枚以上と非常に厳しい数字のためにとても達成できず、仕方なく自腹で買い、金券ショップに42円程度で買い取ってもら」うのである。
筆者は、年賀状のやりとりをやめて5年になる。インターネットの普及とともに、郵便ではがきや封書を送ろうと考える人は確実に減少していると思われる。そんな中、いい加減な見込みを元に「年賀はがき」を大量に刷り続けている郵政事業株式会社の経営戦略には疑問を持たざるをえない。
大量に刷った「年賀はがき」をさばくため職員にノルマを与え、ノルマが達成できないから職員が自腹で買い、金券ショップで売るという悪循環を断ち切らなければ、郵政職員もやってられないだろう。グラビアでは、金券ショップで撮影された「お年玉付き郵便葉書 4000枚」と書かれた段ボールの山が紹介されている。
［新潮］「『加勢大周』 一糸まとわぬ告白！ 『大麻栽培』『逮捕の瞬間』『取調室』」。巻頭グラビアで、元トレンディ俳優の加勢大周さんがバーテンダーとしてシェイカーを振る写真が載っている。「おっ、久しぶりに見たな」と思ったら、本文にはすごい内容の記事が掲載されていた。
元「加勢大周」の川本伸博さんは、2008年10月に突然、覚せい剤取締法および大麻取締法違反で現行犯逮捕され、裁判では懲役2年6月、執行猶予3年の判決を言いわたされた。井本さんは当時、昼の連続ドラマ『キッパリ!!』に出演中であったが、逮捕によりドラマは打ち切りとなった。逮捕を契機に、井本さんは芸能界を引退する。
芸能人と薬物。いまや「よくあること」という感があるものの、当事者が逮捕の瞬間や取り調べの様子などを語ることは少なかった。川本さんは赤裸々に語る。パンツ一丁でくつろいでいたら刑事が部屋に踏み込んできたこと。クローゼットの中では、みずから栽培していた大麻が「青々と茂っていた」こと。大麻だけでなく、覚せい剤も所持していたこと。取調室での刑事とのやりとり……。
井本さんの具体的な言葉からは、現場のリアリティが伝わってくる。読んでいると、内容にぐいぐい引き込まれる。久しぶりに週刊誌ならではのおもしろさを実感させてくれる記事に出会った気分だ。今週は前編。来週の後編が待ち遠しい。
［文春］巻末グラビア「仮設住宅 独居老人たちの冬」。老人たちの言葉を紹介する。
「泣いてばかりいられない。寂しい時は、音楽をかける」（藤倉ミサ子さん、76歳）。
「手持ち無沙汰をお酒で埋め、思いだされる望郷の念」（小野寺通さん、66歳）。「海はもう見たくない。生きていくために、お金が欲しい」（日野とめのさん、82歳）。
「初めての炊事に眠れぬ日々。体重は13キロ以上減った」（佐藤豊吉さん、75歳）。「楽しく生きる。離れ離れになった愛犬に思いを馳せながら」（浅野芳枝さん、68歳）。
「『おじいさん』の寂しさを埋めてくれるみんなの優しさ」（日野米子さん、80歳）。「話せる人が近くにいたから、避難所の方がよかった」（小松勇さん、78歳）。
「仮設住宅には知り合いもいないし、一人のほうがいい」（伊東東さん、88歳）。「じっとしてると精神的にまいっちゃう」（渡邊和俊さん、60歳）。
「焼酎1リットルの寝酒が習慣に」（中田英治さん、67歳）。被災地で暮らす独居老人たちの思いは、まさに「不安と展望、不満と感謝」という記事本文に書かれた言葉であらわすことができるようだ。彼らが暮らすのは仮設住宅だが、建設した業者が異なると、部屋の広さや壁の厚さなどの仕様が異なる。寒い部屋、暖かい部屋。狭い部屋、広い部屋。また、部屋に閉じこもることによって、あらゆる心身機能が低下する「生活不活発病」にかかる老人が増えるのではないか、とも危惧されている。独居老人の暮らしに今求められているのは「生活全体に目を向けた対策」であり、その対策を地方自治体に抱えさせるのは酷であろう。それこそ国、すなわち復興庁の出番なのだといえる。［その他］文春で、伊集院静さんの小説の提灯記事を姜尚中さんが書いているが、姜さんはそんなことまでするようになってしまったのか……。同じく文春に、LADY GAGAが「紅白出場決定的！」だと書かれていた。ほんとかよ!?新潮によると、いま仙台では高級時計や高級車が飛ぶように売れ、高級クラブやキャバクラ、そして風俗も大盛況だという。危険と隣り合わせの場所で働いた労賃をどう使おうがかまわない。だが、「そうやって仙台で湯水のように使われる復興マネーが個々の被災者に届いたら、どれだけ有効に使われるのだろう」などと思うと、せつない気分になってくる。さて、今週の軍配は新潮に！【これまでの取り組み結果】文春：☆☆☆☆☆☆☆☆☆
新潮：☆☆☆☆☆（谷川 茂）
