Netflixシリーズ『ガス人間』
 2026年7月2日に配信開始となった、Netflixシリーズ『ガス人間』で注目のモデルUTAが、俳優デビューを果たした。

 父は本木雅弘。その父が出演したトーク番組『A Studio +』(TBS系)2026年6月19日放送回で、息子のデビューの話題になり、ひとまず安堵していた。

 祖母・樹木希林の後押しもあり、12歳でスイスに留学。異国風の存在感が俳優デビューを裏打ちする。“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。

◆日本映画の資源とハイブリッド性

 Netflixシリーズ『ガス人間』のタイトルロールで、UTAが俳優デビューを果たしたことには、“ハイブリッド”な歴史的意義があると思うのだ。

 本作は1960年に公開された『ガス人間㐧一号』を刷新したリブート版だが、1960年というと映画館で映画を観る人口がまだ年間のべ10億人もいた時代だった(近年は2億人にも満たない)。

『ガス人間㐧一号』の監督は本多猪四郎。代表作は何と言っても、1954年公開の『ゴジラ』である。ゴジラは現在までにハリウッド映画化も含む、数々の大ヒット作を生み出す、東宝が誇る日本映画の資源だ。

 本多は1933年に東宝の前身となるP.C.L.映画製作所に入社した。助監督仲間に1936年入社の黒澤明がいる。黒澤もまた1954年に代表作『七人の侍』を公開した。時代劇の巨匠監督として1957年には、シェイクスピアの『マクベス』を翻案した『蜘蛛の巣城』を公開。『ガス人間㐧一号』も実はアメリカの脚本家の短編を原作にしながら、作品内には日本舞踊を取り込んでいる。

 今回のUTAの俳優デビューは、こうした日本映画のハイブリッド性とその歴史の文脈として考えるべきだろう。

◆UTAの演技が産声を上げる瞬間

『ガス人間㐧一号』で役作りのために減量し、タイトルロールを演じたのは、名優・土屋嘉男だった。土屋演じるガス人間は、生体実験によって生み出され、日本舞踊の家元・藤千代(八千草薫)を支援するため、銀行ギャングを繰り返した。家元との許されざる愛を育む、主体的なキャラクターでもあった。

 一方、UTAが演じるガス人間(レン)は、隕石が落下したエリアで違法な強制労働をさせられる中で身体が変異した。さらに命令されて行動するというキャラクター性は、極めて受動的である。ガス化した彼は幸せな思い出が宿る廃屋に石像化したところ、犯罪に利用されることになったのだ。

 レンは、サザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」が流れると、元の肉体の姿で出現する。身長189センチのUTAが、画面上に全裸で屹立する佇まいがオブジェ感を強調する。しかしかつては人間であり、主体的な好青年だった。レンがガス人間になる前の場面では、UTAの演技が産声を上げる瞬間が垣間見える。

◆安堵する父・本木雅弘

 本作第5話で、ガス人間になる前のレンが登場する。物語のキーとなる少女が、強制労働施設から逃げてくるのだが、たどり着いたのがレンが常連のラーメン屋だった。少女がお腹をすかせていることに気づくレンは、店内に招き入れようとする。

 少女の警戒を解こうとする彼は、路上の石を拾っておにぎりにみたてる。そのとき、レンがおもむろに「おぉ!」と言って石を拾い上げる間合いがいい。

 引きの画面。ワンショットを持続させるように、印象的な母音を響かせたUTAにカメラが寄る。今度はローアングルのアップで、「うーん」とキュートな母音を発する。

 UTAはこうした初々しい母音の発し方がきらめかせる。そこには、彼のデビュー演技が産声を上げる瞬間に立ち会っているかのような手触りがある。

 ラーメン屋の店主役を演じる松崎悠希は、UTAの演技コーチでもある。12歳でスイスに留学し、異国的雰囲気を醸すUTAが、こうして東宝の歴史的資源のリブート作で産声を上げた。

『黒牢城』の宣伝で出演した『A-Studio +』で、父・本木雅弘は「同業者」になった息子を心配する様子だったが、が何とか俳優デビューにこぎ着けたことに安堵していた。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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