続いて2つ目の課題は、競合他社の動向だ。2024年10月、すかいらーくは九州を地盤にした成長著しい「資さんうどん」の全株式を取得し、傘下に加える。すかいらーくは自社で不足する業態は、自社でイチから開発せずM&Aを活用し、時間を節約する経営方針であり、その一環だ。

 創業40年で年間売上100億円超(23年実績、123億円)を達成した資さんうどんの買収金額は240億円とのことだが、事業規模から考えて相当な将来性を見込んでいると言われている。丸亀製麺としては、コンセプトが違うとはいえ、同じうどん店として強敵となることは間違いない。

 資さんうどんとしては大手資本の傘下に入り、全国展開に向けた準備ができそうだ。現在は店舗数71店舗(24年8月時点)だが、2割の常連客が延べ客数の8割を占めるといったリピート率の高さが強みで、絶対的な顧客基盤を有している。第三極になるか否か、すかいらーく資さんうどんの統合効果が期待される。

◆最後の課題、原材料高騰をどう対処?

 最後の課題は原材料の高騰だ。うどん店も主力食材である小麦粉も1.5倍の値上がりし、その他のコストも他と同様に高騰している。国内最大のうどんチェーンである丸亀製麺も、この難局を自店に優位になるように、値上げや付加価値の追求で顧客に理解を求めながら、創意工夫して運営力の強化に努めないといけない。

 具体的にはメニューの釜玉うどんや天ぷらなどで顧客離反を起こさないように適切に価格弾力性を勘案しながら、値上げを実施することだろう。最新の決算でもことし1月に実施した値上げが奏功し、客単価が8%上昇している。

 付加価値を高めたトマたまカレーうどんなど期間限定商品も好調で顧客満足度を追求しながら客単価も上昇させているようだ。しかし、現状の結果は出ていても、物価高騰で苦しむお客さんが今後これらをどう評価するかは未知である。

◆常に新たなことに挑戦する組織風

 トリドールは中華圏での出店を加速しており、傘下の「肉のヤマ牛」の中国本土1号店を上海でオープンした。肉のヤマ牛は「炭火仕上げの牛カルビ焼肉丼」を主力商品としたトリドールの牛肉専門店で、「切りたての牛肉の美味しさを提供すること」をモットーにしている。

 現在は国内で24店舗(2024年8月末日時点)を展開しているが 4月に出店した香港のポップアップ店が好調なので、今回の出店を決めたそうだ。現状に甘んじることなく、新たなことに挑戦する姿勢が組織文化として定着しているようだ。

 もちろん中核事業の丸亀製麺でも、顧客に感動価値も提供するなど演出力の強化に力を入れている。全店に製麺所を設置したうどん店は他店にない明確な差別的要素になっており、この競争優位が2位以下を引き離す原動力のようだ。

 昨年5月の新商品「丸亀シェイクうどん」の異物混入というつまずきこそあったが、迅速な謝罪と再発防止策を発表した。うどんをドーナツにする奇想天外の発想で商品化した「丸亀うどーなつ」も販売好調だ。季節ごとのフェア商品も強化しており、人気商品、新作も続々投入しているのも頼もしい。

外食業界の苦境のワケとは

 経済社会の視点から考えると、物価が高騰し、賃金上昇が追いつかない中、節約のために外食を手控えるのは仕方ない。そもそも倒産・廃業が増える理由は経済社会的・客側・店側の3つの視点が考えられる。

 外食は業種業態にもよるが、原価の3倍の支払いを店にするものだ。人に料理を作ってもらって食事をすれば、その分を払わなければならない。

 しかし、スーパーで食材を購入し、家で自分が作れば光熱費と手間だけで、それ以外の負担がなく食べられる。もう背に腹は代えられない時期になっているのではなかろうか。