空気入れ「必要ナシ!」の凄いタイヤってなに? ブリヂストンのエアレスタイヤ「Air Free」の気になる“乗り心地”はいかに?

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ブリヂストンがエアレスタイヤ「Air Free」の自治体向け試乗会を実施。その乗り心地とはいかに?

 ブリヂストンは2008年からエアレスタイヤである「AirFreeConcept」を開発して、2023年からAirFreeと名称を変更しています。
 
 今回自治体向けにAirFreeの試乗会が行われ、開発の経緯やAirFreeの将来に向けての話が行われました。

ブリヂストンがエアレスタイヤ「Air Free」の自治体向け試乗会を実施。その乗り心地とはいかに?

 AirFreeは2008年からブリヂストンが開発を進めてきたエアレスタイヤです。

【画像】「えぇぇぇぇ!」これが「斬新タイヤ」です。(30枚以上)

 AirFreeConcept第1世代は超低速の1人乗りのスローモビリティ向けタイヤとして開発が進められ、2013年からは第1世代へと進化。

 1人乗りのモビリティ向けは変わりませんが、超低速から低速へと速度域も進化し乗り心地の向上も図られました。

 2023年に第3世代として進化し、「AirFreeConcept」から「AirFree」へとコンセプトの文字が外れ、2〜3人乗りの超小型EV向けに進化し、現在実証実験を開始しています。

 Air Freeはその名前の通りタイヤの空気が入る部分がなく、表面のゴムとスポーク形状に作られた熱可塑性樹脂のホイール部分の2ピース構造となっています。

 この熱可塑性樹脂のスポークホイールで、空気入りタイヤの乗り心地や柔軟性を確保している部分を担います。

 一見固そうな樹脂に見えますが、樹脂の一部を切り出したサンプルを持たせてもらうと折り曲げられるほどの柔軟性を持っています。

Air Freeってなに?

 今回のイベントではグリーンスローモビリティはありませんでしたが、軽自動車に装着して試乗が行われました。

 実際に車両に装着された状態で見ると、ホイール下部は車両の重量によりたわんでいますが、破断することなく受け止めてくれます。

 この柔らかさが空気入りタイヤの空気がバネになることの代わりとなり、走行中でも快適に走れるようにしてくれます。

 この部分は熱可塑性樹脂より成形されており、熱で溶かして再資源化できる性質を持っているそうです。

 色も昼夜を通して視認性の良さを目指し「Empowering Blue」と名付けられた青いカラーになっています。

 タイヤのゴム部分は厚み10mmちょっとあり、このタイヤサイズではこの厚みが今の所最適だそうです。

 ちなみにサイドウォールに535×115N305 67Lというサイズ表記がされています。

 一般的タイヤサイズに変換すると、145/80R12相当の大きさだと言います。

今回は軽自動車に装着して試乗

 実際に運転してみると、若干の硬さは感じるものの、乗り心地が悪いかと言えばそうでもなく、走り出して慣れてしまえば意外に気にならない程度の硬さでした。

 ロードノイズのうるさくなく、ざらついた路面でも安定した走りとノイズで普通のタイヤを遜色ない感じでした。

今後注目される「グリーンスローモビリティ」ってなに? Air Freeはどうなる?

グリーンスローモビリティとは、街中におけるラスト/ファーストワンマイルを担う、小型EVモビリティのことです。

 ゴルフカートを少し大きくしたタイプや小型電気自動車タイプ、中型の乗合バスタイプなどが存在しています。

 これらは基本的に電気で走るGreen、景色を楽しんだり住宅街で速度を出さずに移動できるSlowを表現している乗り物になります。

 グリーンスローモビリティの名付け親であり、その価値を提言するのは、国土交通省で総合政策局交通計画課で活躍後、東京大学公共政策大学院 交通・観光政策研究ユニット特任准教授、運輸総合研究所の客員研究員を努める、三重野 真代さんです。

 三重野さんによれば、ミニバスすら入りにくい住宅街や観光地、地方都市の公共交通機関としてグリーンスローモビリティがラスト/ファーストワンマイルを担う乗り物として優れていると言います。

 徒歩よりも早く自転車より少し遅い、タクシーやコミュニティバスより運転も楽に行え、地域の足として活用できると言います。

 このグリーンスローモビリティは2022年の国土交通省調べでは全国130の自治体で走行実績があり、38地域で本格運用が行われていると言います。

 グリーンスローモビリティは自治体が直接運用、NPO団体、運輸・輸送事業者、地域で認定された団体などへ委託など、さまざまな方法で運用されています。

様々な種類があるグリーンスローモビリティ

 全てがEVということもありメンテナンスもそれほど多くの労力を割かなくても平気です。しかしタイヤは空気圧管理や、パンクの問題などがあります。

 そこでこのAir Freeを装着すれば、パンクのリスクがなくなり、地域の移動を止めないことになります。

 ホイール部分は10年10万kmに耐えうる性能を目指して開発されており、タイヤゴムが減った場合はゴム部分を外してリトレッド(再生)して装着することで利用できます。

 長期的に考えれば普通のタイヤよりもコスト面で下がる可能性もあります。

 これらがいろいろ合致して、現在グリーンスローモビリティを運用している自治体や、これから運用してみたいという自治体の担当者向けの試乗体験が行われました。

 実際乗ってみた感想では「普通のタイヤと変わらない」という声が多く聞けました。

Air Freeはどうなる?

 今回は軽自動車用サイズでの試乗となりましたが、今後の展開についてブリヂストンの関係者は次のように話しています。

「グリーンスローモビリティはタイヤ径が小さかったり、ホイールナットを止める穴のPCDがバラバラです。

 そのため、それぞれの車両に合わせたホイールの製作も一体となって行う必要があり、なかなかグリーンスローモビリティ向けのAir Free開発が進みにくい状態です。

 グリーンスローモビリティを運用する自治体などからのフィードバックを得て、2026年には実際のグリーンスローモビリティ車両で社会にでて実装実験を行っていきたいと思っています」

※ ※ ※

 グリーンスローモビリティが社会の足として一般的になり、その足元にはAir Freeが装着されているのかもしれません。

 その先には一般乗用車にも対応したAir Freeができてくるのかもしれません。未来ではパンクという事故が無なくなる日が来るのかも。