セレクトショップ「ドレッサーズ」のHPより

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 謎多き事件は、愛媛県松山市の中心部にあるホテルの一室で起きた。

【写真を見る】「親しみやすくてオシャレ」と地元では評判だった山田容疑者

 10月1日、客室内で山田妙子さん(76)を殺害したとして、息子の山田潤一郎容疑者(47)が松山東署に逮捕されたのだ。

 地元記者が振り返る。

「妙子さんの死因は首を絞められたことによる窒息死でした。山田容疑者は、犯行後に自ら“人を殺した”とフロントに伝え、ホテルが通報。取調べでも殺害を認めています」

 親子はホテルからわずか数百メートルの住居で二人暮らしをしており、

「前日の午後にチェックイン、同室に入っていました。警察は、二人で相談のうえ心中を図った可能性もあるとみています。というのも、山田容疑者は今年1月に患った脳梗塞の後遺症で下半身が不自由になり、車椅子生活を余儀なくされた。高齢の母親が付きっきりで世話をする状況に、今後の生活の不安を感じたのかもしれません」

セレクトショップ「ドレッサーズ」のHPより

 ともあれ、息子は母親の後を追わなかった。事件までの履歴をたどる。

巨匠からも褒められた“紳士服への情熱”

 地元記者によれば、

「山田容疑者は2009年から、松山市中心部の銀天街商店街近くでセレクトショップ『ドレッサーズ』を経営していました。イタリアを中心としたヨーロッパものをメインに、スーツやシャツ、ネクタイをはじめ靴やかばんも扱っていた。なかでも、厳選した生地で仕立てるパーソナルオーダーのスーツは好評で、全国に顧客がいたといいます」

 洋服好きの大人の店です、と山田容疑者の旧友が言う。

「彼は180センチ100キロといった按配の体型。にもかかわらず、とてもおしゃれです。だいぶ前、ドレッサーズを出すまでの約10年間、東京は銀座のセレクトショップでマネージャーを務めていたと聞いたときには得心がいきました」

 銀座の店は「テイジンメンズショップ」。1960年創業の日本初のメンズセレクトショップだ。

「彼の話し方は朴訥で親しみやすい。そのキャラクターで、私淑していたイタリアの高級仕立職人、アントニオ・リヴェラーノさんにも教えを乞うことができました。しかも気に入られて、ドレッサーズを特集したテレビ番組内で“紳士服への情熱がすごい”などと褒めてもらってもいる。ドレッサーズでは、この巨匠がオーナーのテーラー『リヴェラーノ&リヴェラーノ』の製品も扱っていましたね」

東京進出から半年で脳梗塞に

 こうしたこだわりを、テレビや高級ファッション誌などに取り上げられていた山田容疑者は、

「昨夏、銀座のすぐ隣の京橋に、念願のドレッサーズ東京店を出しました。ですが、東京進出から半年ほどたった今年1月、脳梗塞を発症してしまったのです。リハビリを続けつつ、時折、ドレッサーズの運営会社の取締役でもある母上に車椅子を押してもらって松山の店を訪れてもいた。9月には、バリアフリーに改装し終えていたのですが……」

 己の境遇に絶望し、母親を道連れに心中を図ったのか。ならば、なぜその場所に自宅近くのホテルを選んだのか――。動機の解明が待たれる。

「週刊新潮」2024年10月17日号 掲載