「無添加化粧品」は決して肌にいいとは限らない…消費者には知らされない「医薬部外品」の本当の意味
※本稿は、西正行『美肌になりたければ、その肌ケアをいますぐやめなさい。』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
■ほとんどすべての化粧品に使われている「合成界面活性剤」
恐ろしいのは、ほとんどすべての化粧品に合成界面活性剤が使われているという事実です。
合成界面活性剤はさまざまありますが、代表的なもののひとつに、ラウリル硫酸ナトリウムというものがあります。
これは非常に洗浄力が強く、また、必要な皮脂まで落としてしまうほど脱脂力が強力、という特徴があります。
確かに泡立ちが良く、使い心地は爽快なのですが、その一方、体に害を及ぼすリスクがあると警鐘をならす識者も大勢います。
■「シャンプーで使わない成分」でも化粧品には入っている
なぜなら、このラウリル硫酸ナトリウムは皮膚刺激性があり、また、分子が肌に残留しやすいのです。
泡立ちの良さや洗浄力の強さに加え、原材料が安かったことから、以前は多くのシャンプーがこのラウリル硫酸ナトリウムを使用していましたが、現在は「ラウリル硫酸ナトリウムは危険」と唱える専門家が増えてきたことから、日本のシャンプーに使われることは少なくなってきました。
しかし、シャンプー以外の化粧品は別です。
調べてみると、誰もが知っている有名ブランドのフェイスクリームにも、ボディクリームにも、ハンドクリームにも、さらには化粧水や美容液などの基礎化粧品にも、しっかりラウリル硫酸ナトリウムが使われているのです(図3)。
■理由は「薬機法」にある
確かに、「正しい使用法なら健康に害はない」と提唱する学者もいるため、確実に「ラウリル硫酸ナトリウムが危険だ」とは、言えないかもしれません。
しかしなぜ、そのように“危険かもしれない”成分を含んだ化粧品が、日本で発売されているのでしょうか?
その理由は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、いわゆる「薬機法」(旧薬事法)にあります。
この法律は、その名の通り、医薬品、医療機器等の品質と有効性及び安全性を確保する目的で、製造・表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律です。
2014年の改正により、薬事法から薬機法へと名称が変更になりました。
■全成分を表示することが義務づけられた
薬機法は医薬品や医薬部外品だけでなく、化粧品や健康食品の規制にも適用され、近年では罰則規定が強化されたことから、医薬品や化粧品を販売する事業者は十分、注意を払う必要があります。
たとえば、事業者は商品を宣伝する時も、「これを使えば○○が治ります」といった誇大広告や、「売上げNo.1」「日本一、強力」など消費者に誤解を与えるような表現は避けなければなりません。
これまでも薬機法(旧薬事法)は何度か改正されていましたが、化粧品会社に大きな影響を与えたのが、2001年4月の改正です。
改正により、医薬部外品を除くすべての化粧品について、消費者にわかりやすく全成分を表示することが、義務づけられたのです。
■「表示指定成分」を表示すれば良かった
それまでは、化粧品の成分については「厚生労働大臣の定める基準に適合するものでなければならない」とされており、薬事法(当時)で決められた「表示指定成分」を表示すれば良い、とされていました。
「表示指定成分」とは、人によってはごくまれにアレルギーなどの問題を引き起こす可能性があると認定された成分のことで、成分としてそれらを使っている場合は、表示しなければならない、ということになっていました。
しかしこの法改正により、化粧品に配合されているすべての成分を、外箱または容器に表示しなければならなくなったのです。
全成分表示が義務になったので、消費者にとっては一見、安心・安全に思えますが、これは、裏を返せば消費者に対して、こう言っているのではないでしょうか。
「化粧品のパッケージをよく見てください。全成分が表示されていますよね? あとは調べるのも、使うのも、ご自身の責任でお願いします」
どうでしょう?「えっ、自己責任なんてひどい!」って思いませんか? 化粧品の成分がすべて表示されているとはいえ、化粧品の外箱や容器に書かれた文字はアリのように小さくて読めませんし、そもそも、どの成分が危険で、使用を避けた方が良いのかなんて、ほとんどの人は理解できないでしょう。
■薬用化粧品には全成分表示の義務がない
さらに怖いのは、「薬用化粧品(医薬部外品)」に関する規定です。
これは有効成分を配合した化粧品のことです。薬用と名がついていても決して「くすり」ではなく、いってみれば「化粧品以上、医薬品以下」という感じです。
薬用化粧品は化粧品と違って、全成分表示の義務はありません。その代わり「有効成分」と、アレルギーなど肌トラブルを起こす可能性のある102種類に香料を加えた103種類の「表示指定成分」さえ表示すれば、他の成分は一切表示しなくて済むのです(2022年9月現在)。
たとえば、よく、ビタミンを豊富に含む薬用化粧品があります。「美白効果がある」といった謳い文句で、ドラッグストアなどでも売られていますが、これらの場合、規定の有効成分を1種類以上表示すれば、表示指定成分以外はまったく表示しなくて良いことになります。
■メーカーの抜け道になってしまっている
つまり、合成界面活性剤や、表示がはばかられるような危険な成分を配合していたとしても、「指定成分でなければ表示をしなくて良い」のですから、メーカーとしては抜け道にもできてしまうのです。
良心的な業界団体やメーカーは、薬用化粧品においても、自主的に全成分表示をしています。しかし残念ながら、そうではない団体やメーカーも少なからず存在するのです。
薬用と言われると、普通の化粧品よりも肌への効果を期待してしまうのが、消費者の心理です。おそらく多くの人が「薬用と書かれているから肌に良さそう」と考えて、手に取った経験があるのではないでしょうか。
確かに肌に有効な成分は入っていますが、同時に何が入っているかわからないリスクもあります。薬用化粧品だから安心・安全というわけではないのです。
■化粧品会社の仕事はお客様に夢を売ること
日本の某有名化粧品会社の方から聞いたことがあるのですが、化粧品会社の仕事はお客様に夢を売ることだそうです。キレイな肌や髪の持ち主が高価な化粧品のCMに出演していれば、「それを使えば、きっと自分も!」と誰もが期待してしまうでしょうし、真似したくなるはずです。
なぜなら、CMは夢を見せる場所だからです。そして、耳に心地良い言葉でその気にさせ、その商品を買いたい気持ちにさせるのです。
CMや広告では、イメージ戦略が重要です。天然成分、オーガニック、自然派、アミノ酸、弱酸性……。これらの言葉が耳に入ると、「なんとなく肌や髪の毛に良さそう」と感じる人も多いと思います。
たとえ、消費者はそれらの言葉の「本当の意味」を知らないとしても、「なんとなく」というイメージを持たせることは、理屈を説いて聞かせることよりも、ずっと大きな購買意欲を抱かせます。
■「無添加」とは何が「添加されていない」のか?
たとえば、シャンプーや化粧品でよく見る言葉に「無添加」というものがあります。
「無添加」と書かれていると、なんとなく肌や髪の毛に良さそうというイメージがわいてきます。「余計なものが使われていなくて、肌や髪の毛にやさしそう」と感じて、つい、手にとってしまう人も多いのではないでしょうか。
しかし「無添加」とは、何が「添加されていない」のかご存じですか?
そもそも「無添加化粧品」の定義など存在しないのですが、「表示指定成分が含まれていない」という意味で使われることがあります。
表示指定成分とは、「アレルギーなどの皮膚障害を起こす恐れのある成分」などのことです。
■42年前の基準が使われている
「無添加は、危険な成分が使われていないという意味だから、やっぱり安心でしょう?」
そう考えるかもしれませんが、ちょっと待ってください。この表示指定成分が定められたのは、1980年の話。当時の厚生省(現厚生労働省)が定めたのです。
この42年間に、どれだけ新しい成分が開発されたでしょうか。1980年には存在していなかったけれど、そのあとに開発された成分が、表示指定成分よりもっと危険だったとしても、それは、「表示指定成分」としては定められていないのです。
それでも、製品には「無添加」と表示できるのですから、これは、とても恐ろしいことだと思いませんか。
実際、化粧品に使われる成分は、5000種類以上も存在すると言われています。そのなかで、表示指定成分に定められているのは、わずか103種類。あまりにも少なすぎます。
「無添加」と書かれていても油断できない。テレビCMや広告の情報をうのみにできない。
何よりイメージ戦略にだまされてはいけないということが、よくわかっていただけると思います。
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西 正行(にし・まさゆき)
皮膚科専門医・医学博士、ひふ科形成外科西クリニック院長
1961年、鹿児島県奄美大島生まれ。幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされていたこともあり、皮膚科医になることを決意。鹿児島大学医学部卒業後、皮膚科医の道へ進む。皮膚科医になった後に、自らのアトピー性皮膚炎を完治させる。現在は鹿児島県皮膚科医部会の会長を務める傍ら、合成界面活性剤を使用しないスキンケア用品の監修も担当。スキンケアの真実を一人でも多くの人に伝えるため講演会なども積極的に行っている。著書に『美肌になりたければ、その肌ケアをいますぐやめなさい。』(自由国民社)。
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(皮膚科専門医・医学博士、ひふ科形成外科西クリニック院長 西 正行)