ビジネスシーンでの「腕時計」に賛否?

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 男女問わず身に着けている人が多い「腕時計」。近年では「スマホで時間が確認できるから」「必要性を感じないから」と、腕時計を身に着けない人も増えているようです。一方で、ビジネスシーンにおいては特に、「腕時計をすること=社会人として最低限のマナー」と考える人もいるようで、ネット上でも賛否が分かれています。

 ビジネスシーンにおいて、腕時計を身に着けることは“最低限のマナー”といえるのか、「腕時計をしない社会人」はマナー違反なのか――。ヒロコマナーグループ代表で、収益アップに貢献する企業の人財育成マナーコンサルティングをはじめ、皇室のマナー解説やNHK大河ドラマ「龍馬伝」、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、同シリーズ最新作「密漁海岸」のマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに、見解を聞きました。

全員が守らなければいけない規則ではない

Q.マナー的観点において、ビジネスシーンにおいて「腕時計をする」ことは最低限のマナーといえますか。逆にいえば、「腕時計をしない」ことはマナーに反するのでしょうか。

西出さん「ビジネスシーンにおいて腕時計を『する』か『しないか』については、マナー的観点において、それがマナーである、マナーではないといった正解や答えはない、というのが私の見解です。『腕時計をするのが最低限のマナー』と言い切ることはできませんし、『腕時計をしないのはマナーに反する』ということもありません。一般的にマナーといわれている内容は、全員が守らなければいけない規則(ルール)ではないからです。

しかし、もし、自社の規則で『腕時計をすることが必要』と明記されているならば、その場合は『する』のが正しいこととなります。そうでない場合は自己判断となり、するかしないかは自由、といえます。

『では、時間管理はどうするの?』となりますが、近年、時間はスマートフォンで確認する人が増えています。また、肌アレルギーなどで腕時計をすることを避けなければいけない人もいらっしゃるかもしれません」

Q.昨今は「腕時計をしない」社会人が増えてきているようですが、これについてどう思われますか。

西出さん「私は、個人的にはスマートフォンで時間管理ができるのであれば、それはそれでよいと考えます。実際に、昭和世代の私も最近はつい、腕時計をするのを忘れてしまうこともあります。意識の中に『スマホがあるから』という思いがあるからでしょう。

一方で、実は拙著のビジネスマナー本では、『腕時計をした方がよい』と紹介しています。理由は、ビジネスにおける時間管理、時間への意識からです。

今ではさまざまな機能がついている腕時計もありますが、基本的に、腕時計は時間を知るためのものです。腕時計をしていることで、かばんからスマホを出さなくても、すぐに時間を確認することができます。

また、腕時計をしない社会人が増えているからこそ、腕時計をしている人は、いい意味で目がそこへいきます。その印象を『時間への意識がある人』『ひと手間かけている人』とプラスに感じる人がいることも事実です。さらには、腕時計をすることで、気持ちがビジネスモードになる、という人もいます。

古いと言われるかもしれませんが、腕を曲げて腕時計を見るしぐさが『かっこいい』『キュンキュンする』などの声もあったように思います」

「見た相手がどう思うか」の視点で考えてみる

Q.ビジネスシーンで身に着ける腕時計の「選び方のポイント」や、腕時計を身に着ける上で意識したい心がけとは。

西出さん「ビジネスシーンでの腕時計の選び方のポイントは、その職種や業種にもよると思いますが、基本は『時間が正確に表示されるものであること』です。

デザインは、一般的には年齢や立場相応であり、華美でないものを身に着けておくと安心です。腕時計のベルトの色も黒、こげ茶系、シルバーなどの落ち着いた色が無難でしょう。文字盤も同様に、原色などの目立つ色は避けると安心です。また、お客さまや上司、先輩よりも高価なものを身に着けない、という点も意識しておくとよいでしょう。

腕時計は、自分の“魅せ方”に影響するアイテムの一つにもなり得ます。自身をどのように見せるかに応じて、時計の選び方も変わってきます。私が知る、ある社長は『プライベートでは、仕事を頑張り憧れて購入した高価な腕時計を身に着けるが、仕事中はそうではないものを身に着けるように使い分けている』とおっしゃっていました。一方で、あえて仕事中に高価な時計を身に着けて、仕事で成功しているということを見せている、という人もいらっしゃいます。

考え方や感じ方は人それぞれです。ビジネスシーンにおけるマナーとして、『それを見た相手がどう思うか』という視点で、腕時計をするか、しないかを考えてみてはいかがでしょうか。そうすることで、相手の感情がプラスになり、それによって自身もプラスの評価を得る結果になることを願います。マナーは、双方に、そして社会にもプラスになるために存在するものですから」