4団体統一王者・井上尚弥(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

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米スポーツメディア「The Sporting News」(ウェブ版)が2024年9月3日、プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、31)の特集記事を組み、これまでのKO勝利ベスト5を選出した。

世界戦23戦のうち21試合がKO・TKO

井上は3日に東京・有明アリーナで4団体王座の防衛戦を行い、挑戦者テレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド、37)を7回TKOで下した。

プロデビュー以来、無敗を誇る井上は、戦績を28勝(25KO)とした。

世界戦23戦のうち21試合がKO・TKOという驚異的な強さを誇る井上。世界戦23勝は、日本人歴代単独最多だ。

これまでKOの山を築き上げてきた「モンスター」だが、「The Sporting News」は独自の視点でベスト5を選出した。

5位に選出されたのは、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦だ。

19年5月に英国で行われたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)準決勝で、IBF世界バンタム級王者ロドリゲスと対戦。井上は2回に3度のダウンを奪い、無敗の王者を撃破した。

「井上の追撃によりレフェリーは試合を止めざるを得なかった」

4位は、ノニト・ドネア(フィリピン)との第2戦目。19年11月の初戦は判定までもつれ、井上が3−0の判定で勝利した。両者は22年6月に再び拳を交え、井上が2回TKOで勝利した。

3位は、ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)戦。WBSS1回戦として行われ、元王者を1回1分10秒で仕留めた。わずか70秒のKO劇は、世界中のボクシング関係者から称賛され、改めて強打が注目された1戦だった。

2位は、スーパーバンタム級転向初戦となったスティーブン・フルトン(米国)との1戦だ。

バンタム級4団体の王座を返上した井上は、WBC・WBO世界スーパーバンタム級王者フルトンに挑戦。初めてのスーパーバンタム級での試合に、大きな注目が集まったが、井上はパワーでフルトンを圧倒し、8回TKOで勝利。いきなり2本のベルトを手にした。

「The Sporting News」は、フルトン戦に関して、次のような寸評を付けた。

「当時チャンピオンだったフルトンは井上をアウトボクシングで打ち負かすだけの実力とノウハウを持っていると大いに噂された。だが、フルトンはできなかった。井上はこの試合で見事なボクシングを見せた。試合が進むにつれて情報を集めながら、相手にジャブを上下に打ち込んだ。試合は8回に終わりを迎えた。井上がボディへのジャブに続いて顎に強烈な右パンチを放ったのだ。フルトンは一瞬地面に着地したが、立ち上がったところで強烈な左フックを食らって倒れた。井上の追撃により、レフェリーは試合を止めざるを得なかった」

ネリもチームも大逆転は確実だと思った

1位は、24年5月に行われたルイス・ネリ(メキシコ)戦。

スーパーバンタム級4団体王座防衛戦として行われた1戦は、初回に井上がダウンを喫する展開に。プロ入り後初のダウンにもかかわらず、冷静さを失わず、2回と5回にそれぞれダウンを奪い、6回TKO勝利。東京ドームでプロボクシングの試合が行われるのは1990年2月11日に行われたマイク・タイソン対ジェームス・ダグラス戦以来34年ぶりで、日本ボクシング史に残るビッグマッチだった。

ネリ戦の寸評は以下の通り。

「東京ドームでの試合は1990年にバスター・ダグラスがマイク・タイソンを逆転して以来のことで、またもや衝撃が起こるかと思われた。第1ラウンド、ネリが強烈な左フックで井上をキャリア初のKOしたとき、ネリもチームも大逆転は確実だと思った。しかし、現実はそこから始まった。日本のスターは、すぐに「モンスター」モードを発動させたのだ。ネリは2回と5回に一度ずつダウンし、6ラウンドには壊滅的なパンチのコンビネーションでノックアウトされた」

スーパーバンタム級でも圧倒的なパンチ力で挑戦者を寄せ付けないモンスター。次戦は、12月にIBF・WBO世界スーパーバンタム級1位サム・グッドマン(オーストラリア)との防衛戦が予定されている。