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『婦人公論』8月号(7月15日発売)では、「豪雨、地震、台風……今すぐ見直すわが家の防災」という特集を組み、自然災害への備えについて特集しました。そのなかから、選りすぐりの記事を配信します。*****大地震が起きたときに心配なのが、自宅が倒壊するリスクです。建て直さずに、地震に強い家にすることは可能でしょうか。木造住宅の耐震に詳しい建築士が、住まいの安全性の調べ方や対策をアドバイスします(構成=村瀬素子 イラスト=青山京子)

【表】住まいの危険度チェック表

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古い家が地震で倒壊する理由

今年1月に発生した能登半島地震では、石川県内の住宅被害が8万棟あまりにのぼり、亡くなった方の約9割は家屋崩壊によるものでした。日本では、いつどこで巨大地震が起こるかわかりません。「築年数を経たわが家は大丈夫かな?」と不安を感じている方も多いでしょう。

どんな家が地震に弱いのか。揺れに耐える強い家にするにはどうすればいいのか――。命を守るために欠かせない《耐震》についてお話ししていきます。


2016年の熊本地震で建物の被害が大きかった地域のデータによると、1981年以前の「旧耐震基準」で建てられた木造住宅は、約45%が倒壊、または大破しました。

耐震基準とは、建物が地震に耐えられるよう建築基準法で定められた指標です。78年に発生した宮城県沖地震をきっかけとして旧耐震基準が大幅に見直され、81年6月に「新耐震基準」が施行。

「震度6強から7では倒壊しない」ことを新たな基準とし、壁量(※)などが規定されました。つまり、それ以前に建てられた家は大地震に耐えられないものが多いということなのです。

※地震や風などの水平力に抵抗するために必要な壁の量


(イラスト:青山京子)

さらに、95年の阪神・淡路大震災を受けて、2000年にも新耐震基準を改正。壁の配置のバランスを考慮し、接合部は金物で固定することが義務化されるなど、より基準が厳しくなりました。

加えて、建物の耐震性能を示す指標として「耐震等級」を設定。これは任意で受ける評価制度で、次の3つの等級に分けられます。

【等級1】建築基準法に定められた最低限の耐震性能を満たす。震度6強〜7に相当する、数百年に一度起こる大地震に倒壊しないレベルの強度がある
【等級2】等級1の1.25倍の耐震強度がある
【等級3】等級1の1.5倍の耐震強度がある

実際、熊本地震の調査でも、2000年以降に建てられた家で倒壊・大破したのは約6%、耐震等級3にあてはまる建物には大きな損傷が見られなかったという結果が出ています。

とはいえ、建築時期だけで耐震性が左右されるわけではありません。その土地の地盤や、メンテナンスをしているかどうかも大事な要素。

古くても、大工さんがしっかり基礎をつくり定期的に補修しているような丈夫な家もあれば、比較的新しい家でも湿気で土台が腐朽し劣化しているケースもあります。

安全への第一歩は家の健康診断

そのため、家の現状を知ることが何よりも大切です。下に、地震に弱い家の特徴を6つ挙げました。

ご自身で判断しやすい例で言うと、家の中でシロアリや羽アリを見た、大きな車が近くを通ると揺れを感じる、といった場合は耐震性が低い可能性があります。

少しでも不安がある場合は、専門家による耐震診断を受けましょう。人間の健康診断と同じで、家の弱い部分がわからなければ適切な対策を施すことはできません。

市区町村の建築指導課、防災課など担当窓口に相談すれば、簡易診断を受けることができます。ここまではほとんどの自治体が無料。その結果次第で、専門家による詳しい耐震診断を受けるか判断しましょう。

【CHECK!】わが家は地震に強い?弱い?

まずは、住まいの危険度をチェックしてみましょう。
複数あてはまる場合は、地震で損壊しやすい家の可能性があります。

□ 2000年より前に建てた
1981年改正の新耐震基準では柱と梁の接合部などの規定がまだ明確ではなく、施工業者によって強度に差がある

□ 家の平面がL字やコの字など複雑な形、または増築している
正方形から遠ざかるほど家の重心のバランスが悪くなる。弱い部分に力が加わると建物がねじれ、損壊の原因に

□ 1階に大きな窓や入り口がある
下の階を強固にするのが耐震の基本。1階の壁の量が少ないと耐震性が低くなる。ビルドインガレージも要注意

□ 屋根が重い素材でできている
家は上が軽いほうが安定する。屋根が瓦など重い素材でつくられていると、家の重心が高くなり揺れが増幅

□ 1階と2階で壁のある場所が一致しない
壁が同じ位置にないと地震の力が2階から1階へスムーズに流れず、2階の床に大きな負担がかかってしまう

□ メンテナンスをしていない
木造住宅に水は大敵。雨漏りや水漏れを放置すると木が腐り、シロアリ被害を招くことに。家の耐久性も低下する

▼もう少し詳しく調べたい方は……

国土交通省監修・日本建築防災協会編集の「誰でもできるわが家の耐震診断」で、簡単に耐震性をチェックすることができます

耐震診断では、診断士が建物の構造や屋根、柱、基礎などの状態を検査し、外壁のひび割れ、雨漏りやシロアリの有無、建物の傾きなどをチェック。

また、過去にどこを修繕したかといった家の歴史から現在の状態を推察します。依頼する際は、家の図面のほか、増改築やメンテナンスなどの履歴があれば用意しておきましょう。

診断士はさまざまな角度で建物の強度を計算し、耐震性を示す数値「評点」を算出します。

【評点1.5以上】震度6強クラスの大地震で倒壊しない
【1.0〜1.5未満】一応倒壊しない
【0.7〜1.0未満】倒壊する可能性がある
【0.7未満】倒壊する可能性が高い

一般的には、評点が1.0未満と診断されたら、1.0を目指して耐震補強を検討すべきです。

診断の費用は、住宅の規模のほか、主に目視で行う一般診断か一部解体を伴う精密診断かによっても異なります。50平米ほどの木造住宅の一般診断であれば、10万〜15万円ほどが目安です。

ただし、今は国が家屋の耐震化を推進しているため、旧耐震基準で建てられた木造住宅などを対象に助成制度を設けている自治体がほとんど。費用の一部負担、全額補助など自治体により内容が異なるので、問い合わせてみてください。

マンションなど集合住宅にお住まいの方は、個人では耐震診断や補強工事を行えませんが、建物の状態を知っておくことは大切です。管理組合に、建築年、耐震診断や補強工事の履歴、今後の修繕予定などを確認しておくと安心でしょう。

<後編につづく>