恩師の下山秀樹さん(右)と高橋(下山さん提供)

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 「阪神4−0広島」(11日、京セラドーム大阪)

 阪神が首位の広島に快勝、自力優勝の可能性消滅を阻止した。2021年11月6日のCSファーストS・巨人戦以来、1009日ぶりの1軍公式戦登板となった先発・高橋遥人投手(28)が5回無失点の好投で1025日ぶりの白星をつかんだ。常葉橘中・高の元総監督で恩師の下山秀樹さん(55)が秘話を明かした

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 毎年、年末に高橋が静岡に帰省した際は、一緒に体を動かしながら言葉を交わすという。

 けがで苦しんでいる姿も見てきた。「『どうなの?』ってこっちから聞かなければ言わない子なんです」と下山さん。弱音を吐くことはなかったという。「それよりも不安の方。やりたいのにできない。できるけど気になるとか。検査しても分からないとか。もどかしさはずっと持ちながらだった」。その中でも強く感じた思いがあった。

 「阪神に申し訳ないという気持ちが大きかった。担当の吉野スカウトにも『恩返ししたい』と言っていました」。ずっと居場所を空けて待ってくれていた球団への申し訳なさ、そして感謝…。下山さんは「今年は特に1軍に貢献したい思いはすごい感じた」と明かす。

 5月23日には地元・静岡の草薙球場で登板した。「『楽しかった』と言ってたので。今はようやく投げられる喜びが大きいんじゃないかな」と下山さん。そしてエールを送った。「今までのいいことも悪いこともすべてここに来るまでの道のりだったと思えるように」。ここから“遥人の恩返し”が始まる。(デイリースポーツ阪神担当・山村菜々子)