by Daniel Oberhaus

イーロン・マスク氏は2024年のアメリカ大統領選挙においてドナルド・トランプ前大統領の支持を表明しており、選挙に関連する意見をX(旧Twitter)に投稿しています。しかし、オンライン上の偽情報拡散やヘイトスピーチを阻止する目的の非営利団体であるデジタルヘイト対策センターの調査では、マスク氏の投稿の多くに虚偽が含まれているにもかかわらず、誤った投稿を訂正したり補足したりする「コミュニティノート」が機能していないと指摘しています。

Elon Musk's misleading election claims have accrued 1.2 billion views on X, new analysis says

https://www.nbcnews.com/tech/misinformation/elon-musk-misleading-election-claims-x-views-report-rcna165599



Elon Musk deletes post spreading fake news about UK ‘detainment camps’ - Politics.co.uk

https://www.politics.co.uk/news/2024/08/08/elon-musk-deletes-post-spreading-fake-news-about-uk-detainment-camps/

Anti-hate group says Elon Musk continues to peddle election falsehoods on X unchecked

https://www.engadget.com/social-media/anti-hate-group-says-elon-musk-continues-to-peddle-election-falsehoods-on-x-unchecked-194522883.html

コミュニティノートは2021年に「バードウォッチ」の名前で始まった機能です。主に、プロパガンダや誤情報を拡散する投稿について注意を促すことが目的の機能で、ファクトチェックを通じて異なる意見や誤りを訂正するような情報が付記されます。バードウォッチは当初アメリカ国内だけで公開されていましたが、2022年3月のロシアによるウクライナ侵攻に関する誤情報や、同年に新型コロナウイルスに関する誤情報をめぐって注目された結果、2022年11月に名称をコミュニティノートと変更してアメリカ以外でも展開されています。マスク氏はWiredの取材に対し、「コミュニティノートは『誤った情報と戦うためのゲームチェンジャー』であり、『情報の正確性を向上させる素晴らしい可能性』です」と話しています。

ツイートのファクトチェックをTwitterユーザーみんなの力で行う「コミュニティノート」が日本を含む全世界で利用可能に - GIGAZINE



デジタルヘイト対策センターは、マスク氏による2024年の投稿のうち、「ファクトチェッカーによって誤りであると証明された内容をXで拡散した事例」が50件あると指摘しました。特にマスク氏が頻繁にする主張は「民主党は不法移民から票を『輸入』している」といった内容であり、デジタルヘイト対策センターによると2024年だけで少なくとも42回この件について触れ、合計7億4700万回以上閲覧されたとのこと。しかし、移民などの外国人が投票権を獲得しているという主張は虚偽であることが、NBCニュースやその他の報道機関による事実確認で判明しています。

また、マスク氏は2024年8月8日に、虚偽を含む「イギリスのキア・スターマー首相がフォークランド諸島に緊急の収容所を作成している」というニュースを拡散しました。しかし、このニュースはスターマー首相に対立する極右政党の代表者がシェアした偽記事であり、マスク氏は35分後に投稿を削除しましたが、その時点で閲覧数は180万回以上ありました。

イーロン・マスクが極右政党の共有した「イギリスで収容キャンプが作られる」という偽情報を再投稿して30分で削除 - GIGAZINE



マスク氏による50件の虚偽を含む投稿のいずれにもコミュニティノートは表示されておらず、デジタルヘイトセンターのCEOであるイムラン・アーメド氏は「Xのユーザー主導のファクトチェックシステムの有効性に疑問が投げかけられています。マスク氏は広告主や政府などに対し、コミュニティ・ノートはXの偽情報問題に対する解決策だと語りましたが、マスク氏の嘘に対して反論が表示されないようであれば、効果がない機能であることは明らかです。マスク氏の主張がファクトチェックされていない理由は不明で、ルールが何なのか、マスク氏には他の人とは異なる特別なルールが適用されるのか、もっと明確にするべきです」と述べています。

アーメド氏はマスク氏の虚偽情報拡散やその他のXにおける虚偽投稿も含め、プロバイダ免責を定めた通信品位法230条を改正し、「ソーシャルメディア企業も、アメリカ全土の新聞社や放送局、その他企業が誤情報を拡散した時と同様に、責任を負わせるべきだ」と主張しています。

一方でマスク氏は、2023年8月にデジタルヘイト対策センターに対し「広告主を追い払うためのキャンペーンとして、違法にXのサーバーをスクレイピングし、悪意に満ちた投稿の源泉をしている」と主張して訴訟を起こしています。Xは公式ブログで「私たちには表現の自由を守る大きな責任があります。私たちは、人々の自由な表現の権利を守り、すべての人にとって安全で健全な空間を作ることに努めたいと考えるすべてのパートナーと協力し続けます」と語りました。