「もう外に出るのも嫌」海外生活に耐えられず、日本にとんぼ返りする人も…期待に胸膨らませた若者が直面する〈理想と現実〉のギャップ
「海外に行けば、楽しいことばかりが待っている」…こんな風に何もかもバラ色の海外生活を想像してワーホリや留学に行くと、その期待が裏切られることもあります。しかし、ギャップに慣れてしまってからは、捉え方が変わっていくことも多いとか。本記事では『安いニッポンからワーホリ!最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(上阪徹著:東洋経済新報社)より一部抜粋・再編集し、海外生活への期待と現実についてご紹介します。
留学が合わない人、海外生活が無理な人
誰でもが留学や海外生活にマッチできるのかというと、必ずしもそうではない、というのが事実のようである。
「ワールドアベニュー」留学カウンセラーの染野絵里佳さんは言う。
「海外生活には憧れていても、合わなかったという人もいます。何をするにも、外に出るのも嫌になってしまって、もう日本に帰りたい、というパターンがありますね」
こんなはずじゃなかった、というより、とにかくすべてが嫌になってしまって、帰国したい気持ちばかりが強くなってしまうという。
「英語が思うように話せないから生活がうまくいかない、という声はよく聞こえてきます。うまくいかないことが連発するのは、留学や海外生活では当たり前なんですが、そのことに耐えられないということだったのだと思います」
勉強しなければ英語は通じない。通じないから楽しめない。そんな負のサイクルが起きてしまったのだろう。こうなると、なかなか連鎖は断ち切れないのかもしれない。
「あとは、2週間くらいシドニーを観光していたら満足してしまったので帰ります、と本当に帰国された人もいます。すごく楽しかった、満足したと言われていました」
ただ、合わない人は1%程度ではないか、と語る。留学カウンセラーの武政あやかさんも、合わなかったという人の経験を持っている。
「やはり英語が思いのほか伸びなかった、ということで半年くらいで戻ってきた人がいました。あとは、虫が無理だ、という人。日本とは種類が違いますから。生活する上での清潔感も違いますね。日本人は本当にきれい好きですから」
ちょっとびっくりしたのは、お風呂で湯船に入れないのが思ったよりストレスで、「シャワーだけでは無理です」という理由で戻ってきた人がいたことだという。
「注意しないといけないのは、本人にワーホリに行く意思はなく、親に言われて無理矢理行ったケース。これは楽しくないですし、心配です」
海外生活への期待と現実
ワールドアベニュー社長の松久保さんは、合わない事態が起こらないためにも、期待値を上げすぎないように気をつけていると語っていた。慣れない海外生活で、何もかもバラ色のはずがない。
松久保さんは言う。
「期待が裏切られるフェーズって、必ずあるんです。想像していたのと違う、と。ホームステイ先がもっと歓迎してくれると思ったのに違った、とか、オーストラリアは水不足の国なのでシャワーの時間に厳しく、うるさく言われて驚いた、とか。自分の常識とのギャップを学んでほしいのですが、期待値が高すぎるとストレスになる。ですから、現実をちゃんと伝えること、それからフォローも意識していますね」
とりわけ当初3か月はストレスが高まる。だが、それを過ぎると変わっていくようだ。染野さんは言う。
「不安、不安と言っていた人ほど、いざ海外に出てみると、ほとんど連絡をくれなかったりします(笑)。まったく日本に帰ってこなくなったり」
染野さんが注意しているのは、出発前にネガティブな空気にならないようにすることだと語る。
「とても残念なことなんですが、『ワーホリくらいで英語ができるようになるわけない』などと、まわりでネガティブなことを言う人が少なくなかったりするんです」
だから、できるようになるんだ、というマインドセットをしっかり行うという。実際、ほとんどの人が程度の差こそあれ、できるようになるのだ。武政さんも言う。
「泣き言が出てくるのは、最初だけですね。あとは案外、こちらに連絡すら来なくなります(笑)。楽しんでおられるのだと思います」
経験したことがない状況に追い込まれれば、人はストレスを感じる。しかし、それは裏を返せば、いつもと違うドキドキとワクワクの日々であることも意味する。
さて、どちらが楽しいか。そのことに気づかせてくれるのが、海外なのだ。
上阪 徹
ブックライター
※本記事は『安いニッポンからワーホリ!最低自給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。