「男性社員の育休取得率が高い会社」トップ100

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男性の育児休業取得率ランキング1位のNTT西日本(写真:ヒラオカスタジオ)

昨年度から有価証券報告書(以下、「有報」)で、人的資本、多様性に関する開示指標として、「男性の育児休業取得率」の記載が義務化された。

このような法制度の変更を受け、大企業を中心に男性社員の育児休業の取得等が急速に進展している。『CSR企業総覧』編集部では、個社の状況を捉えるために男性の育児休業取得率ランキングを作成した。今回から3年度の平均でランキングしている。


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ランキングは『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2024年版掲載1714社のうち、3年度(2020年度以降)分の男性育児休業取得率・取得人数を開示しており、3年平均育児休業取得人数が1人以上の540社が対象。

原則、取得率は新規育児休業取得者数を育児休業取得可能者数で割って算出した。一部、対象や算出方法、取得時点の違いなどによって100%を超えることがある点には注意が必要だ。以後、各社の具体的な取り組みと併せて紹介する。

なお、『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』2024年版には2022年度の男性育児休業取得者数・取得率のランキングを上位200社まで掲載している。

首位は3年平均取得率が136.8%のNTT西日本

1位はNTT西日本(3年平均男性育児休業取得率136.8%、以下同)。同社は産休・育休取得者のキャリアアップや異動への配慮を行うとともに、社内外のロールモデルを招いた男性育児関連休暇の取得促進セミナーを実施。ほかにも看護休暇(最長5日)と積立有休(同40日)を合計して最大45日休める配偶者出産休暇制度を導入するなど、出産時から男性が休暇を取りやすい環境が整っている。なお、育児休業取得者数には育児休職や育児目的休暇取得者を含んでいる。

2位は小売業の代表格である丸井グループ(115.6%)。同社は「育児休職マニュアル(男性編)」を作成するとともに、新たに子が生まれた男性社員へ「育児休職に向けて」のお知らせを配信するなど、男性の育休取得促進に取り組んでいる。

3位は生保中堅の朝日生命保険(114.6%)。男性職員の育児休職取得促進を目的に「朝日イクボス・イクメンプロジェクト」を展開。社内セミナーの実施、取得可能者に対する取得案内文書の送付、男性育休用マニュアルの提供などを行っている。また、出生時育児休職についても、取得可能全期間(最大4週間)を有給とするなど、取得しやすい環境整備に取り組んでいる。

4位は大東建託(113.2%)。同社は男性育児参画を目的に育休5日取得を義務化。当該社員とその上司に、未取得日数の周知と子育て支援面談、子育てプランニングシートの記入依頼などを個別に行っている。

5位は傘下に三井住友信託銀行を有する三井住友トラスト・ホールディングス(111.7%)。取得率・人数は三井住友信託銀行との合算。男性育休取得促進のため、人事部より該当者への取得奨励のみならず、所属部署のマネジメント責任者に対して個別連絡を行い、育休を取得できる業務配分等のサポートを指示。また、男性社員が配偶者の産前・産後に長期の育休が取得可能なベビーケア休暇を導入し、1カ月の休暇取得を奨励する取り組みを開始している。

以下、6位関西電力(111.1%)、7位大和証券グループ本社(110.4%)、8位積水ハウス(104.9%)、9位TOPPANエッジ(103.0%)、10位七十七銀行(102.7%)と続く。

取得率は2022年度に急上昇

ランキング上位企業の取得率の高さは認識できたと思うが、全体的な推移にも触れておこう。『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』と『CSR企業白書』の集計によると、2018年度23.8%(集計対象:321社、以下同)、2019年度28.9%(393社)、2020年度31.3%(494社)、2021年度37.7%(610社)と増加傾向にあったが、2022年度は53.1%(760社)とこれまでとは次元の違う水準まで跳ね上がっている。有報における開示義務化の効果が大きいのはもちろんだが、「育児・介護休業法」における制度の創設や開示の義務化も、企業の取り組みを加速させた要因だろう。


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母親が「産後うつ」を発症するケースが多いといわれる産後期間に夫がサポートし、「ワンオペ育児」をさせないことが求められるようになった。雇用する企業としては、「子育ては女性の役割」という時代の終焉への対応だけではなく、人的資本経営の観点からも男性社員の育休取得支援が不可欠になりつつある。女性の活躍が進むにつれて、男性の育児休業取得率はさらに上昇することが予想される。『CSR企業総覧』編集部も雇用・人材活用分野の重要指標として今後の推移について調査を続けていく。

1〜50位


51〜100位


(佐々木 浩生 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)