スポニチ

写真拡大

 日本野球機構(NPB)と12球団が「延長タイブレーク制」の導入を検討することが24日、分かった。早ければ来季からの採用に向けて今後、議論を重ねていく。大リーグでは延長10回から「無死二塁」で始める特別ルールとして20年から実施。より勝敗が決しやすく、選手の負担軽減や試合時間短縮にもつながっており、導入されれば画期的な制度変更となる。

 「タイブレーク」は延長回の初めから塁に走者を置き、得点が入りやすくなる特別ルール。導入されれば、ファンの最大の関心事である勝敗がはっきりとつき、消化不良が解消される。来季以降を見据えて、近く本格的な検討が始まる。

 最大の狙いは、より魅力的な試合づくりとなる。榊原定征コミッショナーは22年12月の就任から「プロ野球の一層の魅力向上、観客動員の拡大」を掲げ「野球の魅力、楽しさを発揮して夢や希望を与える役割を果たしたい」と語ってきた。タイブレークでは延長戦突入後、得点の機会が多くなり早期決着が見込まれ、よりスピーディーかつ、エキサイティングな結末が増えることになる。

 また、選手のコンディション面でも負担軽減となり、疲労によるケガ防止などの利点もある。今季は計20試合の引き分けのうち、雨天コールドなどを除く18試合が延長12回引き分け。リーグ再開初戦だった21日、ナイターでの日本ハム―楽天(エスコン)は史上初の両軍外国人選手の満塁弾などで盛り上がったが、9―9で決着がつかなかった。終了は午後10時23分で、翌日の同戦は午後2時開始のデーゲームだったが、こうした日程面の負担軽減が見込まれる。

 アマチュア球界は高校、大学、社会人がすでに採用。大リーグではコロナ禍だった20年に特別ルールとして始まり、現在は延長10回以降「無死二塁」で実施している。これまでも「リプレー検証」、「コリジョンルール」など新ルールを大リーグの数年遅れで導入した経緯もある。さらに、WBC、五輪などでも採用されており、国際大会への対応にもつながる。ドジャース・大谷らを擁して世界一を奪還した23年WBCで、侍ジャパンのタイブレーク突入はなかったが、直前合宿から10回以降の無死二塁を想定した練習を重ねていた。

 昨年11月のプロ、アマ合同の日本野球規則委員会では、NPBは導入しない方針が示されていた。だが、NPBの専門委員会は導入の場合のメリットやデメリットの調査を開始している。今後、開始回や場面など、さまざまな意見を出し合い、導入への道を探っていく。

 ≪引き分け0なら順位に大きな変動も≫両リーグの試合制限規定が同じになった01年から昨季まで、引き分け試合数は603試合。平均すると1チーム年間4試合ほどになる。今季のセは23日時点で首位・広島(勝率.550)と2位・阪神(.516)が、ともに4試合ずつ引き分け。決着がつくタイブレークが導入された場合、広島が最大の4敗、阪神が最大の4勝していたと仮定すると、阪神が勝率.544、広島が.516となり順位が入れ替わる。4試合で貯金、借金は最大8つの差が出るなど大きな差が生まれることになる。

 ≪「ピッチクロック」結論まだ≫投球間の時間制限「ピッチクロック」は、23年7月のオーナー会議で本格的に検討していくことが確認されたが、まだ採用可否の結論が出ていない。23年にピッチクロックを導入した大リーグでは投手の故障が相次ぎ、選手から批判が噴出。地方球場開催が多い日本では、タイマー設置などの課題も多く残っている。

 ▽各組織&大会のタイブレーク

 ☆アマ野球 社会人野球は03年からタイブレークを導入。大学野球では11年の全日本大学野球選手権で採用し、東都大学野球リーグでは19年秋以降延長10回から無死一、二塁で、継続打順で実施している。高校野球では甲子園大会で18年から採用。当時は延長13回からだったが、23年の規則改正で10回から無死一、二塁で行うことになった。

 ☆大リーグ コロナ禍の影響を受け、特別ルールとして20年シーズンから実施し、現在も継続している。延長10回から無死二塁でスタートする。

 ☆国際大会 17年WBCで採用され、当時は延長11回から無死一、二塁で実施。23年大会は延長10回から無死二塁でスタートした。東京五輪の野球競技では延長10回からタイブレークで、無死一、二塁でスタートした。