【中島 恵】「日本のサービスってこんなだっけ?」…在日中国人が1400円の定食に衝撃を受けて激怒したワケ

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「これは鳥のエサ?」

日本にインバウンド客が急増する中、人手不足の問題が深刻化している。その影響か、飲食店などのサービスの質の劣化、低下を感じている日本人がいると思うが、在日中国人や中国観光客も同様に感じているようだ。数年前に知り合った都内在住の中国人女性は、憤りながら、自身の身に起きた体験を次のように語ってくれた。

「5月下旬の13時頃、勤務先から程近い港区内の和食店にランチに行きました。この店に行ったのは二度目。落ち着いた感じで、新鮮な魚料理に定評がある地下のお店です。店内にはまだ片づけていないテーブルがありましたが、そこに案内され、注文しました。しかし、一向に片付けてくれないまま15分以上が経過。おかしいな……と思いましたが、人手不足で忙しそうだし、そこまでだったら、私も我慢もできました。

しかし、問題はそのあと。ようやく運ばれてきた日替わり定食(1400円)を前にして私は唖然としました。ご飯の量が、『これは、鳥のエサ?』と思うほど、明らかに少なかったのです。店員は何もいわず、定食を置いて立ち去ろうとしたため、呼び止めて、ご飯の量について聞いたところ、「今、ご飯を炊いているところです。お代わりできます」とのそっけない返事。そのとき、『別に何も問題ないでしょう?』とでも言いたげな態度だったことに私は怒りが爆発。思わず『(今、炊いていることを)先に言ってほしかったです!』と言い返してしまい、とても不愉快な気分になりました。

怒りながら食べていると、店員がきて『お代わり、要りますか?』と不機嫌そうな顔で私に言いました。お詫びの言葉は一切なし。要るも要らないも、ご飯は2〜3口分くらいしかなかったのですから、私はもう呆れ返ってしまいました。

会計のときも、同じ店員でしたが、お詫びはなく、むしろ、こちらのほうが悪いことをしているかのように、終始、不機嫌そうな感じでした。店員は見た目、20代半ばくらいの女性。接客の際、「少々お待ちください」ではなく、「少々お待ちくださいね」と、いちいち語尾に「ね」をつけて言うなど、馴れ馴れしい口調だったことも、とても気になりました。

店内の接客体制がどうなっていたのかわかりませんし、この女性は新人のアルバイトだったのかもしれません。ですが、(ご飯がなくなったという)このような状況だったら、店員は最初に、お客様に事情を伝えるべきだし、もし店員がこんな態度を取ったら、店長はすぐに注意すべきだと思いますが、残念ながら、そういうことは、私が見ている限りではありませんでした」

高いお金を払わないと良いサービスは受けられない

この女性は怒りながら、話を続けた。

「私は中国生まれの中国人ですが、日本の大学に留学後、もう日本に15年ほど住んでいます。日本企業や中国系企業に勤め、これまで各地を旅行したり、さまざまなレストランや旅館を体験したりしてきました。各地で受けた日本の飲食店のサービス、接客、そして、旅先で出会った人々はすばらしいと感じてきましたが、正直、ここ2年くらい、『日本のサービスって、こんなだったっけ?』と疑問に思ったり、不審に思ったりすることが増えました。

よく覚えているのはコロナ禍の2022年頃のこと。飲食店の自粛がなくなり、久しぶりに、ある立ち飲み屋さんに行ったとき、店員が上手にビールを注ぐことができず、私の目の前で何度もやり直しをしていたことです。いかにも慣れない手つきで、危なっかしかったのですが、それを見て、コロナ禍の影響で、ベテランの店員が全員辞めてしまって、この人しかいなかったのかなと思いました。あくまでも私見ですが、この頃から、人手が足りず、十分なサービスができない状況が各地で増えてきて、今、その問題が一気に顕在化してきたような気がします」

この女性はこのようにまくし立てた。そして、「もうあの店には二度と行きません。でも、これからの日本では、もっと高いお金を払わないと、これまでに私が体験してきたような、すばらしいサービスは受けられなくなるのかもしれませんね……」と話していたが、このように感じていたのは、この女性だけではない。

同じく22年頃から、私のもとには、在日中国人や、中国から来日した観光客、以前日本に住んでいて、コロナ禍以降、3〜4年ぶりに懐かしい日本にやってきたという、日本語が堪能な中国人などから、「日本のサービスの質の低下」についての率直で厳しい意見が次々と舞い込むようになった。

後編『在日中国人が「日本のサービス」を見て「ここは中国か?」と思わずもらした衝撃の理由』でも、詳しく解説する。

在日中国人が「日本のサービス」を見て「ここは中国か?」と思わずもらした衝撃の理由