抜群の安定感(ダイヤモンドバックスのゲーレン投手) (C)Prensa Internacional via ZIMA Press Wire/共同通信イメージズ

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「浮き上がる直球」と2種類の変化球で幻惑

■ザック・ゲーレン(28=ダイヤモンドバックス)

【タイトル争いの強敵】ロナルド・アクーニャは「パワー・スピード・技術」すべてに死角なし

 昨季は17勝9敗、リーグ3位の220奪三振、防御率3.47。高レベルの安定したピッチングで、決して試合を壊さないのがウリだ。

 平均球速は150キロ台前半だが、打者から見れば「まるで浮き上がるような」伸びのあるフォーシームが武器。大きく落ちるカーブ、変化量は少ないものの途中までカーブと軌道が同じチェンジアップで打者を幻惑させ、高い奪三振率を誇る。

 メジャー通算5年で667回3分の1を投げ、729奪三振。2019年のメジャーデビュー以後、奪三振数が投球回数を下回ったことは一度もない。

 昨季のワールドシリーズでは第5戦で先発。6回3分の1を1失点に抑えたものの、援護がなく、後続の投手が打たれたことで涙をのんだ。

 エンゼルス時代の大谷との対戦経験もあり、昨季は3打数無安打2三振に抑え、球宴でも三振を奪った。「引退した後、『俺は大谷と対戦したことがあるんだぜ。最高の選手と対戦できたんだ』と言えるほどの選手だ」と、大絶賛。ドジャース移籍については「それほど驚きはない。金額はびっくりしたけど」と話し、ド軍のカネにあかせた大補強は「クレージー」と評している。

 大谷とすれば、昨季3三振の借りを返したいところだろう。

死球も辞さないセーブ王の内角攻め

■カミロ・ドバル(26=ジャイアンツ)

 ライバル球団の守護神で、メジャーを代表するクローザーだ。

 火消し役に抜擢された昨季は69試合に登板し、39セーブを挙げてパイレーツ・べドナーと、リーグ最多セーブのタイトルを分け合った。

 最速165キロ超の直球と同163キロの高速シンカーを武器に昨季、救援投手ではリーグ6位の87奪三振をマークし、被本塁打はわずか3本だった。

 大谷と同じ左打者にめっぽう強く、昨季は121打数21安打の被打率.174、43奪三振。昨季のナ・リーグ新人王でダイヤモンドバックスのキャロル、大谷と最優秀DHを争ったアストロズ・アルバレスら多くの左の好打者をねじ伏せた。

 制球力のなさを逆手に取っているのもドバルの持ち味。スライダー、カットボールの制球は安定を欠き、昨季8死球。主にバッテリーを組んだ正捕手ベイリーが内角攻めを要求する傾向が強いこともあり、相手打者が死球を恐れて腰が引けた打撃になるのも珍しくない。

 今季から指揮を執るボブ・メルビン監督の方針もあってジ軍の選手は同地区のライバルであるド軍に並々ならぬ対抗心を燃やしている。大谷はドバルを筆頭にジ軍投手陣の強気な攻めには要注意だ。

童心を忘れないダルビッシュの親友

■ジョー・マスグローブ(31=パドレス)

 昨季のサイ・ヤング賞左腕スネルこそ移籍したものの、パドレスにはダルビッシュと並んでこの男がいる。

 150キロ前後のフォーシームを軸に、スライダーやカーブ、チェンジアップ、シンカー、カッターなど多彩な変化球を駆使する右腕。昨季はトレーニング中のケガで開幕に出遅れ、8月に右肩炎症で離脱。それでも17試合で10勝3敗、防御率3.05の成績を残した。

 ダルとは親交が深く、かつて「自分は球種が6つあるが、シーズン中は使える球と使えない球がある。ダルビッシュは8、9種類のボールをシーズン通して操っている。その秘訣を聞きたい」と話したことも。母が経営する地元のカフェに、ダルが訪れたこともある。

 遊び心を忘れていないのもマスグローブの特徴。シーズン中、相手の先発投手とマウンドの砂でイニングごとに○×ゲームをしたり、22年オフは自身の誕生日祝いとして南極で球速を計り、“南極大陸最速138キロ”をマークした。ユニークな男だが、甘く見ていい相手ではない。

「菊池ドリル」で剛速球を手にした魔球使い

■ミッチ・ケラー(27=パイレーツ)

 昨季、ナ・リーグ中地区4位に終わった弱小パイレーツで孤軍奮闘したエース右腕。

 一昨年までは度重なる故障にも苦しんだものの、昨季、素質が開花。シーズンを通じてローテを守り、32試合に登板して自身初の2ケタとなる13勝(9敗)をマークした。

 2019年のメジャーデビュー以来、毎年のように放出候補にリストアップされてきたが、21年に多くの投手が利用するトレーニング施設で投球フォームの改善に着手。

 ブルージェイズ・菊池雄星が取り入れている下半身を強化する通称「菊池ドリル」を実践して球速が大幅にアップ。昨季は最速163キロ、平均で154キロを記録した。

 新たに球種に加えたスイーパーの精度はメジャーでトップレベル。横への変化量47センチは、レイズのアダム(52センチ)らに次いでメジャー4位。この球種を多投した大谷(40センチ)を上回った。ケラーのスイーパーを「魔球」と分析する投球解析の専門家もいるほどだ。

 大谷との対戦が実現すれば、自身も武器とする魔球でねじ伏せられるかもしれない。

メジャー屈指の奪三振マシーン

■スペンサー・ストライダー(25=ブレーブス)

 米国での愛称は「Quadzilla」。Quad(クワッド)は太ももの四頭筋を指し、zilla(ジラ)は日本でもお馴染みのゴジラが語源で、怪獣や怪物、巨大な物という意味。卓越した太ももの筋肉から、「剛脚獣」と呼ばれているのだ。

 MAX165キロの直球を武器に三振を量産。昨季は20勝(5敗)、281奪三振でリーグ2冠に輝いた。さらに「123回3分の1で200奪三振」を達成し、自身の持つメジャー最速奪三振記録を更新。200個目を奪った相手は、エンゼルス時代の大谷だった。

 メジャー通算3年で483奪三振とはいえ、デビューした21年はわずか2試合のリリーフ登板のみ。実質2年でこれだけの数字を積み上げたといってもいい。

 速球投手にありがちな制球難とは無縁。昨季は186回3分の2で58四球。9回完投で3人歩かせるかどうか、だ。

 背番号99は映画「メジャーリーグ」でチャーリー・シーンが演じた剛球守護神、リッキー・ボーンが背負ったものにちなむ。大谷とムービーばりの激突を見せてくれるか。

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