フライブルクでプレーする堂安律【写真:Getty Images】

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バイエルンに2-2ドローのフライブルク、堂安も喜び「この勝ち点1はポジティブ」

「我々はサッカーをしたかった。ボールキープの時間帯が必要だった。だから選手を信頼して、うしろからビルドアップを丁寧に行って、相手を攻略しようと準備したんだ。見事なプレーをチームは見せてくれた。素晴らしい試合を見せてくれた。大事だったのは、チームがサッカー的な解決策を見出そうとしたことだ。大事なところだ。今後の自信につながる」

 フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督は、2-2の引き分けで終えた第24節(3月2日)のバイエルン・ミュンヘン戦後にそう語り、チームを心から労っていた。

 右サイドハーフでスタメン出場した日本代表の堂安律も「バイエルンがそんなに今状態が良くないとはいえ、バイエルンはバイエルンなので。この勝ち点1はポジティブに捉えるべき」と、自分たちが勝ち取った勝ち点1を喜んだ。

 フライブルクは、ブンデスリーガの直近7試合でわずかに1勝。主力組の負傷欠場、UEFAヨーロッパリーグ(EL)との過密日程の影響を受け、「ここ2シーズンずっと上昇気流に乗っていたあとだけに、今季はとても難しいシーズン」と、シュトライヒ監督も苦しさをしばしば吐露する。

 それだけに、この試合でキャプテンの元ドイツ代表左サイドバック(SB)クリスティアン・ギュンター、センターバックのマティアス・ギンターの2人がスタメン復帰したのはとても大きい。ギンターは守備陣に秩序と落ち着きをもたらし、そしてギュンター復帰で元イタリア代表MFヴィンチェンツォ・グリフォとの魅惑のコンビが復活。巧みなフリーランとリズムカルなパス交換でバイエルン守備陣を混乱に落とし込んでいた。

 この日、右SBでプレーしていたバイエルンのドイツ代表ヨシュア・キミッヒがどうすることもできずに困惑するほど。ギュンターは2度の左腕の骨折とその時に負った感染症で半年近くの離脱を余儀なくされていた。リーグでのスタメンは2023年5月以来。そんなギュンターが先制ゴールを決めたのだからスタジアムの雰囲気は一気に最高レベルに跳ね上がった。シュトライヒ監督も心から信頼する主力の復帰を祝福した。

「ギュンター、ギンターが90分プレーできたことが一番大事だ。ビルドアップでチャレンジした。中盤へ運び、いいサイドチェンジが見られた。ギュンターには前半2点目のチャンスだってあったんだ」

判断精度とスピードが際立った堂安、敵将トゥヘルも日本人アタッカーに言及

 ギュンターのゴールの起点となる正確で鋭いサイドチェンジを送ったのが堂安だ。このシーンだけではなく、この日の堂安は判断精度とスピードが素晴らしかった。

 ダイレクトパスで味方の好シーンを何度も演出し、味方からのパスから柔らかなタッチで相手をかわしてスペースに抜け出したり、馬力のあるドリブルで縦への推進力をもたらしたり、状況に応じてボールを落ち着けて、自分たちの時間を作った。後半12分には左サイドからグリフォのクロスに飛び込み、わずかに届かなかったが惜しいシーンだった。

 バイエルンのトーマス・トゥヘル監督は試合後、「フライブルクの攻撃に対してどのような準備をしていたのか」と聞かれると、「昨日まで守備の練習と分析をしてきた。グリフォとギュンターのコンビについては取り上げてポイントをまとめていたし、堂安のドリブルへのケアについても取り上げていた」と答えている。だが、その準備を無力化するほどフライブルク両翼からの攻撃は効果的に機能していた。

「システムを含めて今日は4バックで前がかりに行けたし、自分も前へとプレーできたんで良かった。非常に魅力的なゲームができたんじゃないかなと思います」

 狙いどおりの戦いで、勝てるチャンスがあった試合でもあった。確かな手応えとほんの少しの残念さも残すなか、堂安は「勝ち点1が平等な、ふさわしい結果かなと思います」と振り返る。

「もちろん勝ち点3が取れたゲームではあったと思いますけど、相手のチャンスを考えれば、もっと決められる可能性もありましたし」

 本調子ではないとはいえ、バイエルン相手に主導権を握る時間帯を作り出し、ダイナミックな連続プレーとインテリジェンスの高いビルドアップからの展開力を見せることができたのは大きな収穫。主力の復帰とともに過去2シーズン、ブンデスリーガに旋風を巻き起こしたフライブルクらしいサッカーがそこにあった。ここからのフライブルクと堂安のプレーが楽しみだ。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)