2024年版 ここまで進化した! 現代最強SUV 10選 海外の辛口評論家が選ぶ「ベスト」とは
コスパ、走り、信頼性など分野ごとに「ベスト」を選出
さまざまな形、サイズ、エンジン、価格帯で販売されているSUVの中から、特に優れた10台を筆者(英国人)が選ぶ。
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過去25年間、世界各地で「スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)」の商業的な発展が著しい。その要因は数多く、快適性、利便性、広さ、多用途性、重厚感のある外観、そして乗員の安全性と視認性など枚挙に暇がない。これほど人気のあるカテゴリーになったのも特別な驚きはない。
世界中でトレンドとなっているSUV。「どれも同じでしょ?」って、そんなことはない。トップ10の長所・短所をまとめてみた。
しかし、「今では誰も気にしていないのではないか」とすら思えるが、SUVにもさまざまな弱点がある。従来のセダンやステーションワゴンに比べ、車両重量が重く、空力的にも不利で、エネルギー効率が悪いのだ。テレビや新聞では日々、気候変動やガソリン代の高騰がニュースになっているというのに……?
SUVの設計や装備は、おそらく大半の人にとって「過剰」なものだろう。必要以上に資源を消費しているとも言えるかもしれない。しかし、多くの国・地域で人気が急上昇し、成長を続けていることから、もはや片時も目を離すことができない存在である。
では、現在市販されているSUVの中で最も優れたモデルは何だろうか? 小型で質実剛健なスズキ・ジムニーから、大迫力の豪華絢爛ロールス・ロイス・カリナンまで、SUVは今やあらゆるセグメントを網羅しているため、全体から10台を絞り込んでランキングするのは少々難しい。
そこで今回は、乗り心地、コストパフォマンス、高級感、オフロード性能など、いくつかの観点からそれぞれの「ベスト」を選出した。「乗り心地が最高なのは◯◯」というスタイルである。
1. シトロエンC5エアクロス
長所:サイズの割に広い、快適、手頃な価格
短所:運転支援機能に不満、のんびりした運転特性は賛否両論あるはず、インテリアの所々に感じる安っぽさ
最も優れた点:乗り心地
SUVに「乗り心地」を求める人は多い。車両重量とゆとりのあるサスペンションという、SUVが本来持っているアドバンテージを活かし、多くのモデルが快適な乗り心地をセールスポイントにしている。それも、ハイエンドな高級車ばかりではない。
1. シトロエンC5エアクロス
例えば、シトロエンC5エアクロスは、しなやかな乗り心地でクラスの中でも際立っている。足回りはかなり緩やかに設定され、シトロエンの油圧式サスペンションによって路面の凹凸からの大きな入力をナチュラルに吸収してくれる。
特にしなやかで快適なのは、シンプルで軽量なパワートレインを積んだモデル。つまりPHEVではなく、通常のエンジン車である。
この価格帯とサイズにおいては、シトロエンC5エアクロスが快適性で抜きん出ている。しかし、予算に余裕があり、大型の電動SUVを好むのであれば、BMW iXとレクサスRZも注目に値する。
2. ダチア・ダスター
長所:価格の割に十分な広さ、豊富なパワートレイン、バイフューエル仕様もある
短所:洗練性に欠ける、ところどころに感じる安っぽさ、特に魅力的なエンジンがない
最も優れた点:コストパフォマンス
ルノー・グループ傘下のルーマニアの格安ブランド、ダチアを知る人は少ないだろう。しかし、欧州では販売台数ランキングの上位に食い込む大人気ブランドであり、その主力の1つが小型SUVのダスターである。
2. ダチア・ダスター
ダスターは最近、新型の第3世代が発表されたばかりだが、ここでは現行型の第2世代を取り上げる。東西南北、欧州の消費者の幅広いニーズに応えるため、さまざまなバリエーションが用意されている。パワートレインは、ATおよびMTのターボガソリンエンジン、ガソリンとLPGのバイフューエル仕様、四輪駆動のディーゼルエンジンがある。
価格は一昔前よりもやや高いが、それでも1万7000ポンド(約320万円)強で手に入れることができる。近年の物価高や為替相場(1ポンド=190円で算出)を考えれば、十分に安いと言える。この価格で、4人がしっかり座れる広いキャビン、適度な大きさのトランク、運転のしやすさ、そしてかなり充実した標準装備が手に入る。
3. フィスカー・オーシャン
長所:斬新なインテリア、スタイリッシュなデザイン、優れた航続距離
短所:新興企業特有の欠点、月々の支払額は安くない、ところどころ品質が不安定
最も優れた点:航続距離
EV(電気自動車)で背の高いSUVボディを採用するメリットの1つは、大容量バッテリーを床下に搭載できることだ。室内の広さがほとんど変わらず、見た目の違和感もない。よく知られているように、SUVは車両重量と空気抵抗が弱点なのだが、バッテリーを大きくすることで航続距離を稼げる。
3. フィスカー・オーシャン
米国の新興企業フィスカーの記念すべき市販車第1号であるオーシャンもその1台だ。オーシャンは113kWh容量のニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを搭載し、WLTP複合サイクルでの航続距離は最長707kmと、テスラ・モデルYを150km以上も上回る。実走行では、550kmから650km程度になると予想されるが、それでも5万ポンド(約950万円)から6万ポンド(約1140万円)という価格帯では傑出している。
オーシャンは、ランドローバー・ディスカバリー・スポーツとほぼ同じ大きさの中型SUVで、洗練された乗り心地、スタイリッシュな外観、優れたマルチメディア機能を備えている。価格も競争力がある。
航続距離では、最長615kmのBMW iXと、97kWhバッテリーを積んだ新型プジョーe-3008も注目に値する。
4. キアEV9
長所:広い室内空間、力強い走り、優れた航続距離
短所:高価、価格の割に高級感に欠ける
最も優れた点:デザイン
大きくて四角いクルマは、停車していても存在感がある。だからこそ、人々はSUVに注目し、惹かれるのだ。キアEV9も目を奪われるに違いない。
4. キアEV9
メルセデス・ベンツGLEやレンジローバー・スポーツとほぼ同じ大きさで、キアとしては経験の薄い高級大型SUVとなる。重厚感のあるスクエアボディと、シャープに描かれたディテールは欧州でも異彩を放っており、通りすがりの人が思わず二度見したり、「あれがキア? 本当に? ワオ!」と声を上げたりするほどだ。
7万ポンド(約1330万円)という価格にしてはインテリア素材の高級感に欠けるが、6人乗りと7人乗りのレイアウトが用意され、広さは他の3列シートSUVに劣らない。99.8kWhバッテリーを搭載し、実走行での航続距離は420kmから520kmと予想される。
2基の電気モーターは力強く、乗り心地やハンドリングはややソフトだが、しっかり「しつけ」が施されている。
5. ランドローバー・ディフェンダー
長所:快適性が高い、非常に運転しやすい、ファッショナブル
短所:110と130は大きすぎる、重い、安くはない
最も優れた点:オフロード性能
ほとんどのSUVオーナーにとって、オフロード性能は「もしもの時のため」の安心材料であり、必要となる機会は本当に数少ない。にもかかわらず、ランドローバーのようなブランドは、それこそが「4×4」の神秘たるゆえんだと考えている。必需品ではなかったとしても、所有することに喜びを感じる人は大勢いる。ディフェンダーの成功がその証だ。
5. ランドローバー・ディフェンダー
ディフェンダーの素晴らしきは、十分な性能と使い勝手を備え、そうした購入者の期待に応えていることだ。高さ調整可能なエアサスペンションと、適度にタフなアクスルとドライブトレインが、優れた電子制御トラクションコントロールと組み合わされている。サイズと潜在能力は大きいが、運転は意外と簡単だ。ドライビング・ポジションと車載カメラが優秀で、周囲の状況を把握しやすい。
もっとタフで耐久性の高いモデルや、逆に小さくて軽快なモデルもある。しかし、泥や轍、濡れた草や砂といった悪路を走るのがこれほど簡単なクルマは他にない。
6. マツダCX-60 3.3d
長所:ディーゼルの大トルク、優れたオフロード性能、低燃費
短所:乗り心地と車体挙動の調整が不十分、高価
最も優れた点:実走行での燃費
直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載したSUVが、2024年に燃費で賞賛されるとはおそらく思わないだろう。しかし、多くのメーカーがディーゼルに見切りをつける一方で、マツダはディーゼル技術の革新を続けており、その成果は目を見張るものがある
6. マツダCX-60 3.3d
中型SUVのCX-60は、3.3Lターボディーゼルエンジンが用意され、WLTP複合サイクルで24km/lの燃費を誇る。実走行では、低温燃焼のリーンバーン技術により、高速巡航時には25km/lを超える燃費を達成できる。45kg-m以上の大トルクもたくましい。
ガソリンスタンドに行く回数を減らしたいなら、そしてEVやPHEVを自宅で充電できないなら、CX-60のディーゼルを検討すべきだろう。もし電動車を導入できるのであれば、ホンダCR-V e:PHEVも検討したい。
7. メルセデス・ベンツEQS SUV
長所:優れた乗り心地、広い室内空間、高度なインフォテインメント・システム
短所:高価、物議を醸すルックス、EVとして効率的ではない
最も優れた点:ラグジュアリーな質感
洗練性と高級感を追求するEVの台頭が目覚ましい。内燃エンジン車にもまだまだ卓越したモデルが多くあるものの、大型SUVにラグジュアリーな魅力を求めるのであれば、パワートレインの電動化が最も現実的である。
そして今のところ、メルセデス・ベンツ最大のEVであるEQS SUVに勝るものはない。近年のメルセデス・ベンツのインテリアは、素材の質感や手触りがやや期待ハズレで、昔のほうが良かったと思えることもある。だが、乗り心地はこの上なく静かで快適であり、外界から隔絶されているように感じられる。路面からの入力もまるでなかったかのように吸収し、ロードノイズや風切り音をほとんど認識させない。
100kWh以上のバッテリーを搭載し、実走行で約480kmの航続距離を達成できる。
8. ポルシェ・マカン
長所:クラス最高のハンドリング、広さと速さの見事な調和、考え抜かれたインテリア
短所:2.0Lは刺激に欠ける、最上級グレードは割高、間もなくモデルチェンジを迎える
最も優れた点:ドライビングの魅力
スポーツカーをこよなく愛する人たちから尊敬を集めるSUVがあるとすれば、それはマカンGTSだろう。ポルシェのエントリーモデルとして、誕生から10年近く経過しているにもかかわらず(ベースは2008年登場のアウディQ5と共通)、加速性能、室内の広さ、優雅なダイナミクスを融合させ、SUV市場における1つの基準となっている。トレンドに後ろ向きな人でさえも、乗れば納得してしまうほどだ。
8. ポルシェ・マカン
2024年後半にはEV専用の新型が導入予定だが、現時点でのトップグレードであるGTSは、最高出力445psの2.9L V6ターボを搭載している。0-100km/h加速はわずか4.5秒、最高速度は275km/hに達する。
サスペンションは標準車よりローダウンされ、改良が施された結果、まるで小さなホットハッチに乗っていると錯覚させるような、軽快なドライビング・エクスペリエンスを生み出している。物理学の常識を覆すような奇想天外な走りぶりだ。ステアリングもまた、ポルシェのスポーツカーらしい重みとレスポンスがあり、一方で乗り心地はクッション性に富んでいる。
エアサスペンションと豪華なインテリアを備えたマカンGTSは、高級セダンのようにリラックスして長旅を楽しむことができる。今回取り上げた他車ほど広くはないが、それでも十分なスペースが確保されているので、不満はほとんどないだろう。もし、SUVを1台だけ所有するとしたら、このクルマを選びたい。
9. スコダ・カロック
長所:荷室の使いやすさ、実用性、競争力のある価格
短所:古臭いキャビン、柔軟性に欠けるディーゼルエンジン、高速道路での不安定な乗り心地
最も優れた点:日常的な汎用性
SUVを購入する際、実用性を求める人は多い。市販のSUVにはさまざまな形やサイズがあるため、安いモデルでも十分期待に応えてくれる。
9. スコダ・カロック
フォルクスワーゲン・グループ傘下のチェコのスコダが販売するカロックは、汎用性に優れた実用車として人気を博している。2017年の登場以来、コンパクトSUVクラスの隠れた名車の1つであり、シンプルかつ柔軟な室内空間は、ライバル車を遠く引き離している。
例えば、後部座席は取り外し可能であり、5人乗りの乗用車から中型バン並みの積載能力を持つクルマに変身させることができる。後部座席のピクニックテーブルなど、古典的だが便利な装備も揃っている。
頼もしい四輪駆動モデルやディーゼルエンジンのほか、経済的な1.0L TSIガソリンエンジンも選択できる。
10. トヨタ・ランドクルーザー
長所:頼れるオフロード性能、広い室内空間、シンプルな4気筒ディーゼル
短所:快適性は高くない、舗装路ではライバル車に劣る、価格の割にインテリアが簡素
最も優れた点:タフネスと信頼性
トヨタ・ランドクルーザーは、歴史的にオーストラリアのアウトバック(人口の少ない乾燥地帯)のような過酷な地域で選ばれてきた。昔ながらのボディ・オン・フレーム構造で、あらゆる観点から世界に名を残すオフローダーだ。トレーラーの牽引、渡河能力、そして人を寄せ付けない大地を低レシオでひたすら走破することに対して、非常に高い評価を得ている。
10. トヨタ・ランドクルーザー
欧州ではスチールホイールを履いたベーシックな商用車仕様が驚くほど手頃な価格で販売されている。3ドアの乗用車仕様はそれほど高価ではなく、5ドアの最上級グレードには快適装備と最大7人乗りのシートが用意されている。
エアサスペンションやレザーシートも指定できるのだが、アウディやメルセデス・ベンツのモノコックSUVのような乗り心地やハンドリングを期待してはいけない。高速道路での洗練性はそれほど高くないが、オフロードでは別格の存在であり、機械の信頼性と壊れにくさ、頑丈さには定評がある。競合他社も嫉妬していることだろう。