結婚相手は自分のコミュニティ以外で…「マッチングアプリ」の台頭で「結婚相談所」が倒産・経営危機に

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「婚姻件数」が、1970年の半分以下に…

結婚相談所」の倒産が増えているという。昔は結婚といえば、恋愛か見合いというイメージが強く、一部に結婚相談所の利用もあった。最近はオンライン上で相手を探す「マッチングアプリ」の利用者が増えており、結婚相談所の脅威になっていると、信用調査会社の帝国データバンクは指摘する。いまどきの「婚活」はどうなっているのだろうか。

最近は少子化が社会問題になっている。若年層の人口減少のみならず、さまざまな理由で結婚しない人が増えており、婚姻件数の年間推移を見ると、つるべ落としの状況だ。

厚生労働省「人口動態統計」によると、婚姻件数は’70年に102.9万件だったが、’80年代以降は70万件台に落ち込み、’10年代は60万件前後で推移していた。人と会う機会が減ったコロナ禍の’20年以降は50万件超にまで下落。’23年は速報値で48万9281件となった。

婚姻件数の急落に加え、最近はマッチングアプリの利用者が増えて、結婚相談所は苦戦しているという。帝国データバンクによると、’23年の結婚相談所の倒産が11件と初の10件超えとなったほか、休廃業・解散も11件と過去最高の水準で、計22件が婚活支援サービスの市場から退出したとしている。 

「昔は『出会い系アプリ』というのがあり、ネガティブなイメージもありましたが、いつからか『マッチングアプリ』が出てきました。それを婚活に利用する人が増えており、結婚相談所と競合するようになったとみています」

こう分析するのは帝国データバンク情報統括部の飯島大介さん。出会いのきっかけを気軽に求めたい人たちがマッチングアプリに引き寄せられていったという。

結婚相手は、自分が所属するコミュニティ以外のところで…

「ここ10年くらいで、婚活を支援するアプリが広がっています」と話すのは落合歩・リクルートブライダル総研所長。その背景には「自分が所属するコミュニティへの考え方が変わってきている」と指摘する。

学校や職場などで知り合った人間関係など、自分が所属するコミュニティを大事にして、そこを乱したくないと考える人も出てきている。結婚相手を、現在自分が所属するコミュニティ以外のところで見つけようとする人が増えているという。

落合さんは「学校や職場の人間関係による恋愛結婚はまだ多いですが、減ってきています」と話し、代替する形でマッチングアプリの利用者が増えているとみている。

悪意のある利用者を判断するのが難しい「アプリ」、結婚相談所は「会員制ビジネス」

結婚相談所」と「アプリを使った婚活支援サービス」はどのような違いがあるのだろうか。帝国データバンクの飯島さんは、いずれも「不動産の物件紹介ビジネスに似ており、利用者側から門をたたかないといけない」と話す。物件を探すのに街角の不動産店を訪ねるか、ネットで検索するか。

飯島さんによると、結婚相談所は「会員制ビジネス」で、入会金、月額利用料、結婚にこぎつけた成約料などが収入となる。入会金は3万円とか、5万、6万円くらいで、月額利用料が数千円から1万、2万円くらい。成約料は30万円くらいのところがあるほか、相手が弁護士や医者、企業経営者など「ハイクラス」だと60万、70万円くらいもあるという。結婚相談所にとっては、相手探しのため紹介所同士のネットワークに加盟する必要があり、その維持費用がかかる。

一方、マッチングアプリ出会いの場を提供する「プラットホーム」であり、デートの設定や成婚は本人同士でというところも少なくないという。

婚活支援サービスは、結婚したくて相手を探している人が利用する。飯島さんは「成婚率」がポイントになると指摘する。事業者は「成婚率が高いとやっていけますが、低いと、大きな事業者でも利用者が集まらない」とみている。対面の結婚相談所では、「本人同士の相性が良さそうか、だめそうか、目利き力が高い」と成婚率も上がるという。結婚相談所について、飯島さんは「あの事業者は成婚率が高いといった評判につきる」とも話す。

一方、

マッチングアプリは、あくまで自己申告制で、本人が入力項目を埋めるだけのことが多い。紹介された人が事前の写真と違うとか、既婚者だったとか、悪意のある利用者をアプリの段階で見つけるのは難しい」 

と飯島さんは言う。そこで、結婚紹介所に頼る人もいるとみている。結婚相談所には、本人の収入証明や在職証明などを求めるところもあるとも。

「本人が自分で見えていないものを客観視して、背中を押してくれる」結婚相談所

最近のマッチングアプリ利用について、リクルートブライダル総研の落合さんは次のようにみている。

「最近はアプリを主体的に使う人が出てきています。効果的、効率的に結婚相手を見つけられますし、あとくされなくコミュニケーションがとれて、若年層などにはフィットしていますね。最終的には会って判断します。最近のアプリは独身証明を求めるなど、より安全で安心になってきています」

落合さんは結婚相談所のメリットについて

「本人が自分で見えていないものを客観視して、背中を押してくれる機能があります」 

と話す。相談所かアプリか、その利用法は

「その人のニーズや価値観にもよります。併用している方もいます」とも。

マッチングアプリのビジネスにも有名企業が参入するなど、各社がサービスの品質をチェックし、サービス内容に磨きがかかっているともいう。落合さんは

「利用者の婚活スタイルで、対面サービスなど選択できるのはいい。アプリでフィットしなかったので相談所へ行くとか、自分に合うやり方を選択できるのがいいことです」 

と話す。

結婚相手を見つけたい人には、選択肢が広がるのはいいことだ。アプリが普及する時代でも、対面の結婚相談所の存在意義はある。相談所でもアプリでも、お互いにサービスを磨き、その相乗効果でいい出会いが増えるといい。

取材・文:浅井秀樹