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金利、インフレ、ローン、株、為替――なんとなく知っているつもりでも、実は説明するのが難しい金融の用語。そんな金融と経済のしくみを60分で楽しく学べる『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』が発売された。本稿では、本書の翻訳者であり、20年以上にわたる外資系金融機関でのキャリアをもつ木村満子さんに話を聞いた。「若い世代こそ、早くから金融を学ぶべき」と語る木村さん。そのわけを聞いてみると納得の答えが返ってきた。

もともと金融機関で働いていたけれど……

――どのような経緯でこの本を翻訳しようと思ったのでしょうか?

木村満子(以下、木村):実は最初から出版を考えていたというわけではなく、大学院で翻訳を学んでいたのですが、その卒業プロジェクトで手に取った本でした。

 私は、もともと外資系金融機関で20年以上働いてきたこともあり、金融が自分の専門だったので、なにか金融の本でおもしろいものはないかなと探していました。

 そのときになって今さら気づいたのですが、金融の世界って、興味がない人にとっては、こんなにつまらないものはないっていう世界だと思うんですね(笑)。物語があるわけではないし、細かい数字がたくさん出てきて、ややこしい概念も多くて。

 おそらく、金融と聞くだけで、アレルギー症状が出てしまう方もたくさんいるのではないでしょうか。

――たしかにそうかもしれません。金融ってややこしいイメージがありますね。

木村:いろんな金融をテーマにした本を読んでいくうちに、子ども向けに書かれたこの本に出会ったんです。

 この本の冒頭で、著者のウォルター・アンダルは、子どもとショッピングモールを歩いている際に、子どもから「ゲーム機を買ってほしい」とお願いされます。

 今は手持ちのお金がないと伝えると、「どうして? クレジットカードを使えばいいじゃないか」って、子どもが言うわけです。

――子どもにとって、クレジットカードは「いつでも好きなだけ買い物ができるカード」というふう見えているんですね。

木村:実際にこの場面に自分が立っていることを想像してみたら、そもそも現金をもっていないのにどうしてカードで買いものができるのか、クレジットでどこまでお金を使っていいのか、クレジットのしくみを説明しようと思ったって、パッと説明するのは難しいなって感じたんです。

 こんなふうにこの本を読んでいくと、20年以上金融機関で働いていて、自分は金融のプロフェッショナルだと思っていたのですが、「ふうん、なるほど……。そんなわかりやすい説明の方法があるんだ、知らなかった……」って思うことがたくさんあって。

 この本は、子どもから大人まで楽しく学べる金融の本だったんです。

知ったかぶりで今さら聞けないお金のこと

――いろいろな金融の本の中で、この本が唯一、楽しみながら読める金融の本だったんですね。

木村:私もそうですが、人ってやっぱり大人になればなるほど知ったかぶりをするようになってしまいますよね。大人になったら、今さら恥ずかしくて聞けないってことって実はいっぱいあります。

 とくに金融は、学校でしっかり学ぶ教科ではないので、クレジットのしくみも、金利やインフレの意味も、投資の大切さも、たいていの人は学ぶ機会がないまま大人になるのではないでしょうか。

 お金は、毎日の生活に直接かかわる大切なものですが、お金について、なんとなく知ったつもりで実は説明できないことって多いと思うんです。でも、今さら誰かに聞くのも恥ずかしいじゃないですか。

 お金の知識って学んでいると必ず損はないというか、むしろ知らないと損をすることがたくさんあるはずです。この本には、投資や金利の話も出てきますが、実は私ももっと早くから投資に興味を持っていたらと後悔しています。

 だからぜひ若い人に金融を知ってもらいたい、金融について若い頃に知る機会があれば人生色々違ってくるだろうなと思い、この本を翻訳して世に出したいという気持ちになったんです。

木村満子

東京都出身。アメリカの大学を卒業後、東京と香港で25年間外資系金融機関にてさまざまなポジションを経験。コロナ禍を機にBABEL UNIVERSITY Professional School of Translationにて金融翻訳を学ぶ。2022年、早期引退しアメリカに移住。現在はラスベガス在住。