仕事運を上げる「可愛がられるためのスキル」とは?(写真:kouta/PIXTA)

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」 と心理学者のアドラーが考えたように、ほぼすべての人が人間関係で悩んだ経験があるはず。

「人から嫌われたくない」「飲み会のような場を避けたい」「面白いことを言わないといけない」。そんな悩みを一度でも感じたことのある方にオススメなのが「笑いの力」を利用すること。

元お笑い芸人である中北朋宏氏は、芸人引退後に未経験でコンサル業界に転職し、「笑いの技術」を駆使して3年で売り上げナンバーワンに。その後、起業して株式会社俺を設立。現在は芸人のセカンドキャリア・転職を支援する『芸人ネクスト』と、「お笑い」と「コミュニケーション」を掛け合わせた、心理的安全性や営業力を向上させる独自のノウハウ「コメディケーション」を260社、2万6000人以上に提供している。

最新刊『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』では、中北氏のこれまでの経験から培った「笑いをビジネスに活かす技術」を網羅。

以下では、その中北氏が「可愛がられるためのスキル」について解説します。

運がある人は「機会を得る」回数が多い

若いうちからできるだけ多くの経験ができると、「スキルを得て」「成果が上がり」「周囲からの信頼も得ることができ」「多くの機会を得る」ことができます。


多くの機会から経験を得ることで「早期に出世」、または「市場価値」も上がっていきます。

ある研究データでは「起業家の成功した理由」を分析した結果、「運」だと言われています。

つまり、成功を手に入れるためには「才能」などではなく、できる限り打席に立つ、多くの機会を作る必要があるわけです。

では、多くの機会を作り経験を得るためには、どうしたらいいのでしょうか。

その最も効果的な手段は、他者から「可愛がられる人」になることです。

なぜかというと、やはり「自分から経験するためにお願いする・誘う」という行為には勇気がいります。

「断られたらどうしよう……」「迷惑だったらどうしよう……」と考えてしまい、自分から誘うことに億劫になってしまう人も多いと思います。

特に、職場の同期ならまだしも、尊敬する先輩や上司となると精神的なブレーキが高まり、難易度はどんどん上がっていきます。

そんな心の負担を自分にかけないためにも、相手から誘われる「可愛がられる人」になる必要があるということです。

可愛がられる人になれば、「大きな仕事を任された」「やりたいと思っていた部署に配属された」「尊敬する先輩・上司から直接教わる機会を得た」など、自然とスキルが身に付く経験が増えていきます。

では、具体的に「可愛がられる人」というのはどのような人のことをいうのでしょうか。

若手芸人から学ぶ「相手の心を掴む技」

ハーバード・ビジネス・スクールの論文では「可愛がられる人の特徴」「言動や行動を予測しやすい人」 と記しています。もう少し具体的に要素をお伝えすると、「一貫性がある」「わかりやすい」「素を隠さない人」 となっています。

さて、「一貫性がある」「わかりやすい」「素を隠さない人」の要素をどのように自分に取り入れていけばいいのでしょうか。

難しいことはすべて横に置き、お笑い芸人さんが使用している、あなたも実践したくなるノウハウを解説していきます。

なぜ、ここでお笑い芸人の方々が使っているノウハウを紹介するかというと、お笑い芸人というのは、売れている先輩に可愛がられないと、自分が売れる確率が格段に下がる職業だからです。

お笑い芸人さんの中には「豊臣秀吉の織田信長への気遣いは80点だ。俺なら草履を温めていたことを織田信長へ気づかせることはない。温かいことが当たり前の日常にする」と口にしていた人もいるほど、可愛がられることに長けているお笑い芸人さんもいます。

これは、「売れている人から仕事がもらえるから」という安易な理由だけではなく、面白い人たちに囲まれる環境に身を置いていないと、面白くなるための成長速度が落ちてしまうからです。

つまり、お笑い芸人さんが先輩に可愛がられないということは、売れる可能性を格段に下げてしまっているということになります。

余談ではありますが、正直な話、お小遣いや美味しいご飯も大きい要因ではありますけどね。

私も、タクシー代をもらっても節約のために、何度1時間以上歩いて家に帰ったかわかりません。

お笑い芸人さんにとって「可愛がられる」ことが、どれほど死活問題につながるかを理解していただけたと思います。

ここで皆さんにひとつ、簡単にできる「可愛がられる」技術をお伝えします。

サブリミナル効果というものをご存知でしょうか。

諸説ありますが、例えば映画などで観客に気づかれないように一瞬だけフィルムに「コーラ」を映り込ませると、観客が「見たことを気づいていない」のにコーラが意識に残り「コーラが飲みたくなる」効果のことを言います。

今では、禁止されていると言われています。

このようなサブリミナル効果を活用したノウハウになります。

トイレに立つ前の"ひと言"で「心に刺す」

このノウハウを活用して「わかりやすい」「素を隠さない人」という要素を取りにいくことができます。

では、具体的に説明していきます。ビジネスでの活用イメージを湧かせるために、上司や先輩との飲みの席を想像してください。

あなたが上司と2人で飲んでいるとしましょう。チームで飲みに行くことはあっても、2人で飲みに行く機会は少ないため、楽しさを感じているあなた。

思わず上司に対して「今日は本当に楽しいです」と伝えました。それを聞いた上司はどう思うのか……。

当然、率直に嬉しいですが「気を遣わせているのかな……」と素直に喜べない人も多いのではないでしょうか。

部下:今日は本当に楽しいです!

上司:ありがとう(気を遣わせているのかな……)

そんなふうに誤解を招かないために 「わかりやすく、素を伝える」 方法があります。

具体的にイメージしてください。

対面でそのまま伝えると疑念が生まれやすいので、トイレに行くときに相手に届くギリギリの声で「今日はすごく楽しい……」とつぶやいてトイレに行ってください

このように伝えることで、上司からは「本音」が漏れたと認識されます。

なぜ、「楽しい」ことを上司にわざわざ伝える必要があるかというと、まともな上司であれば部下と飲んでいると「本当に楽しんでくれているかな……」「パワハラになっていないかな……」と不安を感じていることが多々あるからです。

部下:(小さな声でボソッと)今日はすごく楽しい……

上司:(楽しいと思ってくれているんだな)

部下からリアルタイムの気持ちを自己開示することで、上司も安心してあなたのことをこれからも誘いやすくなり、多くの経験を共にできるようになります。

また、ビジネスシーンではクレームなどのネガティブな感情を率直に伝えられることはあっても、相手にポジティブな気持ちを伝えることも、伝えられることも少ないため、この経験自体が相手の印象に残りやすくなります

「打ち合わせ」や「1on1」でも効果を発揮する

余談ではありますが、どれほど人の記憶に残りやすいかというと、ある会社の新入社員100名に対して、サブリミナル効果を活用した一言を教えました。

3カ月後、その会社の部長さんから電話があり「中北さん、あなたはいったい何を教えたんだ!?」と焦ったような口調で問い詰められました。

私も3カ月経っており何のことだかわからず「何がですか?」と聞くと、部長さんに「今年の新入社員100人中の100人が、トイレ行くとき何か言うぞ!」 と笑いながら怒られました。

この年の新入社員のことを部長さんは、おそらく生涯忘れることはないと思います。

さらにビジネスシーンでの活用法をお伝えすると、この一言は「打ち合わせ」「1on1」で使用しても非常に効果を発揮します。

例えば、あなたが上司の立場であれば部下の発言に対して「いい意見だな……」「いい質問だな……」とつぶやいてあげるだけでも、心理的安全性が生まれやすくなります。

また、あなたが部下の立場であれば上司の発言に対して「すごい憧れるな……」「尊敬できるな……」など、一言呟いてあげるだけでも上司の心理的安全性が生まれることは間違いありません。

ぜひ、まずは活用してみてください。そして、「Aさんにはこの一言が刺さるな」「Bさんにはあっちのほうがいいか」などゲーム感覚で、相手に使うとモチベートできる言葉を探ってみてください。

あなた自身も使いながら徐々に楽しくなってくるはずです。

(中北 朋宏 : 俺 代表取締役社長)