シェルが深圳に建設した世界最大規模のEV充電ステーション。258基の充電装置がずらりと並ぶ(同社ウェブサイトより)

石油メジャーのイギリスのシェルは9月19日、世界最大規模のEV(電気自動車)向け充電ステーションを中国で開業した。広東省深圳市に建設されたステーションには258基の急速充電装置が設置され、1日当たり延べ3300台以上のEVを充電できるという。

この充電ステーションを運営するのは、シェルが中国のEV最大手の比亜迪(BYD)と設立した合弁会社だ。両社は2022年4月に戦略提携契約を結び、これまでに1万3000基を超える充電装置を深圳市内に設置した。

充電ステーションすでに800カ所

クリーンエネルギーへの転換とカーボンニュートラルの実現を目指す世界的な流れを背景に、シェルは事業構造の大転換を進めている。EV向け充電ステーション事業に関しては、2025年までに全世界に50万基の充電装置を設置する目標を打ち出しており、2022年末までに13万9000基を設置済みだ。

そんなシェルにとって、(世界最大のEV市場である)中国は充電ステーション事業の戦略市場だ。これまでに合弁会社または100%子会社を通じて中国各地に800カ所のステーションを建設し、2万5000基の充電装置を設置した。

「中国は最も重要な成長市場のひとつだ」。シェルのリテール部門とモビリティ部門の担当副社長を務めるイストバン・カピタニー氏は、財新記者の取材に対してそう述べ、次のように続けた。

「世界のEV向け充電ビジネスのなかで、中国市場は最も急速に成長している。それを支えるのが、巨大なEV生産能力、ライドシェアなど業務用車両の(積極的な)EV転換、電力会社の(充電インフラ整備に対する)サポート、EV購入を奨励する政府の優遇政策などだ」

市場シェア奪取へ企業買収も

とはいえ、シェルは中国のEV向け充電ビジネスにおいては「後発組」だ。業界団体の中国充電連盟のデータによれば、2023年8月時点の中国国内の充電装置設置数は720万8000基に達し、その9割超が(企業別ランキングで)上位15社の充電ステーション運営会社に集中している。


中国のEV向け充電ビジネスは、上位企業への集中が進みつつある。写真は星星充電が運営する充電ステーション(同社ウェブサイトより)

これら15社のなかにシェルは入っておらず、先行する特来電(テルド)や星星充電(スターチャージ)などの中国企業を追撃するのは容易なことではない。


本記事は「財新」の提供記事です

シェルが中国市場でシェアを急速に伸ばす手段としては、既存の充電ステーションの買収や、中国の運営会社との提携などが有力だ。「われわれはEV向け充電ビジネスの分野で大規模な買収を実施し、競争力を高めたい」。財新記者の取材に対し、カピタニー氏はそうコメントした。

(財新記者:郭霽瑩)
※原文の配信は9月20日

(財新 Biz&Tech)