「気持ちを書き出す」「お酒を飲む」「買い物をする」、よくあるストレス解消法のより効果的な使い方を紹介します(写真:zon/PIXTA)

ストレスを解消するために、とお酒を飲んだり買い物をしたり。よくしがちな行動ですが、二日酔いや衝動買いで後悔して、よけいストレスをためる結果になってしまうこともあります。

メンタルドクターSidowさんの著書『ケーキ食べてジム行って映画観れば元気になれるって思ってた』は、世間によくあるストレス解消法の、より効果的な使い方を教えてくれる一冊。同書から一部抜粋・編集して、ストレスを上手に解消するための行動についてご紹介します。

「気持ちを書き出す」ときのより良い方法

【よくあるストレス解消法】
気持ちを書き出す

【より良いストレス解消法】
気持ちと思考をセットで書き出す

メンタルを安定させる方法として、「気持ちを書き出す」というものがあります。

たしかに、嫌なことや腹の立つことがあったときに、感情的になってそのまま終わるのではなく、それを書き出すことは気分を安定させるのに役立ちます。

これは、感情を客観視できるようになるためです。悲しみや怒りの感情には脳の大脳辺縁系という部分が関わっていますが、書き出すことによって脳の前頭前野という部分に切り替わり、感情を俯瞰して見ることができます。

ただ、気持ちを書き出すといっても、闇雲に書き出して終わりにしてしまうのはもったいないことです。例えば、何か嫌なことがあった後にただ気持ちを書き出すだけでは、「受け止めてくれる相手がいない愚痴」と同様になってしまいます。

気持ちを落ち着かせるには、もっと効果的な方法があります。

それは、気持ちを書き出すときに「なぜそう感じたか」という、その感情に至った「思考」とセットで書くことです。

例えば、友達に嫌味を言われてムカついた、という出来事があったとします。その場合、ただムカついた、と書くだけではなく「なぜムカついたのか」と、そのときの思考を後から振り返って書き出します。例えば「言い方が気に食わなかったから」「わざわざ言わなくてもいいことを言われたから」などです。

瞬間的な感情に理由づけし、客観的に捉えられるように

この思考の過程を書き出すことがなぜ大事なのかというと、気持ちや感情は瞬間的なものですが、それに理由づけをすると、出来事を一歩引いて客観的に捉えられるようになるからです。

この工程の後に、そのときムカついたことを改めて考えてみると、「そんなに腹を立てるようなことではなかったな」「露骨に嫌な顔をする必要はなかった」などと振り返れるようになります。

ただ「ムカついた」という気持ちをそのまま放置しておくと、それはムカついた記憶のまま終わってしまいますが、この作業によって「そこまでムカつく必要のなかった」出来事に変わります。

みなさんも、最近あったイライラしたことや、もやもやしたことを思い出してみてください。その理由まで考えてみると、少し見方が変わってきませんか?

この作業を続けていると、これまで反射的に腹を立てていた出来事に対しても耐性がつき、ちょっとしたことでは怒らないようになっていきます。つまり、ストレスがたまりにくくなるのです。

もちろんこれは怒りだけではなく、悲しみや不安などネガティブな気持ちを緩和するのにも役立ちます。だから何かが起こって気持ちがマイナスに振れたときには、少し間を空けてからその出来事を振り返り、そのときの気持ちとそこに至った思考を同時に書き出してみましょう。

少ししてそのメモを見返したときに、「自分ってこんなことで感情的になってたんだ」と考えられたらあなたの心が成長した証です。

ぜひ、「感情」と「思考」を意識したうえで実践してみてください。

お酒でストレス解消をするより良い方法

【よくあるストレス解消法】
ストレスの分だけお酒を飲む

【より良いストレス解消法】
楽しいときにお酒を飲む

「よーし! 今日も仕事を頑張った。パーッと飲むか!」

こういうシーンをアニメやドラマでよく目にしますよね。

実際にみなさんの中にもストレス発散のためにお酒をたくさん飲むという人もいるはずです。たしかに、お酒を飲むと頭がふわふわして、嫌なことを忘れられたり寝つきが良くなってすぐに眠れたりするので、ストレス解消に効果的に見えますよね。

しかし、実は「お酒を飲む」ストレス解消法はマイナスの点のほうが多いのです。

お酒を飲んで酩酊すると、思考や判断力が鈍くなるので、一見悩んでいることを忘れられたように思えますが、それはあくまで一時的なものです。お酒が抜けてシラフになったときに改めて現実と直面して余計に落ち込む、ということが起こります。

酔っているときはあくまで感覚が鈍っているだけで、本来の感情が失われているわけではありません。

だからこそ危険なのが「飲んでいるときだったら忘れられる」と考えて、できる限りアルコールを摂取し続けようとしてしまうことです。

そうなると、アルコール依存症まっしぐらです。とくに1人で飲む習慣があり、嫌なことがあったときほど飲酒量が増える人は要注意です。

マイナスを緩和するための飲酒は依存につながりやすいですし、1人で飲んでいると飲酒量に気づいて注意してくれる人がいないので、知らずに量が増えていってしまいます。

あくまでもお酒は、楽しいことをより楽しく感じるためのツールとして使うようにしましょう。ただ、楽しむためのお酒でも量が増えすぎると二日酔いを引き起こしたり、身体疾患の原因になったりします。

楽しく夜を過ごしていたのに、途中から記憶をなくして失態を演じた、二日酔いがひどすぎて何もやる気が起きない、となったら本末転倒です。

大量飲酒によって膵炎や急性アルコール中毒になるリスクもあるため、あくまでお酒とはほどほどに付き合うようにしましょう。

買い物でストレス解消するときは自分へのご褒美として

【よくあるストレス解消法】
買い物でストレス発散

【より良いストレス解消法】
ご褒美として買い物をする

みなさんは買い物が好きですか?

自分が欲しかったものを買えたときには、ルンルン気分で帰り、早く買ったものを使いたくなりますよね。買い物をするとワクワクするのは、脳のメカニズムとも関係しています。

買い物とは、簡単にいうと自分が欲しいものを手に入れる行為。人間は欲しいものが手に入ると、脳内からドーパミンという神経伝達物質が分泌され、一時的に高揚します。だから買い物をするとワクワクする、興奮する、というのは科学的にも証明されていることなのです。

しかし、その高揚感はあくまで一時的なもので、長くは持ちません。

そのため買い物をしてストレスを解消しようとしても、その効果はすぐに切れてしまいます。みなさんも、嫌なことがあったときに衝動買いをしてしまった、という経験があると思いますが、衝動買いはマイナスの効果も大きい行為です。

後から振り返って「何でこんなもの買ったんだろう」と後悔したり、思ったよりもお金を使いすぎて生活費が足りなくなったり……なんてこともよく聞きます。

こうしたリスクを考えると、よほどお金に余裕がある人以外は、買い物をストレス解消法として使うことはやめたほうが良いでしょう。

ただ、衝動買いを控えれば、買い物もストレス解消法として有効に活用できます。その際に大切なのは、自分へのご褒美として買い物をすることです。

例えば「今日の仕事を頑張ったら帰りにアイスを買って帰ろう」とか「資格試験に合格したらご褒美として欲しかったバッグを買おう」などです。

目標達成のためにはモチベーションが必要で、モチベーションを維持するためには報酬が必要です。モチベーションが自然に湧き上がってくれれば良いのですが、ほとんどの場合は何かしら報酬があったほうがモチベーションを維持しやすくなります。

みなさんも、日常的にご褒美を用意することがあるのではないでしょうか?

「外発的モチベーション」でより目標達成がしやすく

このように、外から与えられる報酬を目的に生じる意欲を、「外発的モチベーション」といいます。この外発的モチベーションをうまく自分に与えることで、より目標達成がしやすくなるのです。


人から与えられる外発的モチベーションの場合、報酬目的に動いてしまうので効果が薄まるという研究もありますが、自分でご褒美を与えるのであればその心配もありません。

また、達成したときに購入するものをあらかじめ想定しておけば、お金を使いすぎるリスクもなく、後悔することもありません。

こうした買い物の効果をうまく利用することで、ストレス解消も、モチベーションアップもかなえられるのです。

ただ注意点としては、ご褒美を与えるハードルを下げすぎるとモチベーションの維持になりませんし、得られる効果も薄くなってしまいます。適切な達成レベルと、それに見合った報酬のバランスをうまく見つけられるようにしましょう。

(メンタルドクターSidow : 精神科専門医)