スズキが発表したエタノール燃料で走る次世代電動車椅子「MIO」(撮影:常井健一)

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障害者や高齢者の自立生活を支える製品を展示する「第33回国際福祉機器展」 (主催:全国社会福祉協議会、保健福祉広報協会)が27日、東京都江東区の東京ビッグサイトで始まった。今回は製造業を中心に632社が出展し、海外からは昨年より10社多い78社が参加した。国内自動車メーカー各社も、運転補助装置や乗降装置などを搭載して福祉社会に対応した特別車両を競って展示している。29日まで。

 肢体の障害に対応したいわゆる福祉車両は、◆リフトやスロープで車両の後部などに車椅子のまま乗るタイプ◆車椅子から降りて座席に座るタイプ◆障害者自身が運転するタイプの3種類に大別され、それぞれ市販のベース車を改良したものを各社が提供している。通所施設向けに法人が使うバンを改造した車両が主流だが、最近では個人ユーザーの増加に伴い、手頃な価格で使いやすい小型車を使用したものも充実し始めている。

 ユーザーにとってネックになるのは、◆車椅子から運転席への移乗◆車椅子の車内への積み込み◆運転方法◆運転姿勢の保持──の大きく4点。これが1つでも負担になると、1人でのドライブが難しく、介助が必要になるといわれている。

 トヨタ自動車<7203>が今回発表したのは、小型車「ポルテ」をベースに車椅子ごと運転席に乗り込める車両。リモコン操作をすると、専用の電動車椅子で助手席側からリフト乗降ができ、運転席としてそのままドライブを始められる。使用する車椅子は前後へのリクライニングのほかに、背もたれは中央部からも曲げることができ、猫背や腹筋がごく弱い場合でも快適な姿勢をとることができるという。指が不自由でもブレーキやアクセル、ウィンカー、ハザードなど必要不可欠な操作が1本のレバーでできる、新型の手動運転補助装置も搭載した。

 価格はベース車145万円に対し、279万円。担当者によると、2001年にミニバン「エスティマ」に同様の機能を搭載した商品を投入したが、「大きすぎる」「高すぎる」との声も多く、累計販売台数は13台にとどまっていた。今回は「1人でドライブしたい」という声に応え、安価で小回りが利きやすい小型車にしたという。昨年には、同じグループのダイハツも軽自動車として初めて車椅子ごと運転席に乗り込める「ミラ・セルフマチック」を発売。担当者は「部品の共用はなく、情報交換のみだが、グループとして福祉に取り組む姿勢を前面に出していきたい」と話していた。

 メタノールを使った燃料電池で動く電動車椅子「MIO(ミオ)」を参考出品したのはスズキ<7269>。小型車やバイクで知られる同社は、1985年に国内メーカーとして初めて電動車椅子を発売したパイオニアでもあり、年間約1万台の出荷で国内シェア約40%を誇る業界トップ企業でもある。従来は足腰の動作が困難なユーザーが多かったが、自転車代わりのような感覚で近場への移動手段として、ユーザーのすそ野が広がっているという。

 開発担当者が「スズキの技術を結集させた」と強調する「MIO」は、メタノール水溶液4リットルで40キロ以上の長距離走行が可能。従来の鉛電池では20キロ走行のために8時間の充電が必要だった。道路交通法上は「歩行者扱い」とされている電動車椅子の規格にも準拠させている。運転席には液晶パネルも搭載されており、実用化に向けては前後左右の状況表示やナビゲーションなどの機能も追加する構想も。担当者は「一番のネックは価格。設計の工夫で何とか乗り越えて、みなさんに提供できるようにしたい」と抱負を語っていた。【了】