【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「タランチュラ星雲(かじき座30)」のクローズアップ(Credit: ESA/Hubble & NASA, C. Murray, E. Sabbi; Acknowledgement: Y.-H. Chu)】


こちらは南天の「かじき座」の方向約16万光年先、天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)のひとつ「大マゼラン雲」(LMC:Large Magellanic Cloud、大マゼラン銀河とも)にある輝線星雲「タランチュラ星雲」(Tarantula nebula、かじき座30)の一部を捉えた画像です。左上の星団をはじめとした青色の若い星々が、赤色に染まった星雲を背景に視野全体で輝いています。


輝線星雲の特徴である赤色は、高温の若い大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが放つ赤い光によるもので、このような領域は「HII(エイチツー)領域」と呼ばれています。HII領域はガスと塵を材料に星が形成される星形成領域でもあり、新たな星が誕生する現場であることから「星のゆりかご」と呼ばれることもあります。


この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と「広視野カメラ3(WFC3)」で取得されたデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計4種類を使用)をもとに作成されました。活発な星形成領域であるタランチュラ星雲はハッブル宇宙望遠鏡にとっておなじみの観測対象で、2012年4月にはハッブル打ち上げ22周年を記念して同星雲の画像が公開されています。


欧州宇宙機関(ESA)によると、画像の作成に使われたWFC3のデータは星間ダストの特性を調査する研究のため、ACSのデータは初期宇宙に似た環境における星形成および「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡などによる将来の観測に向けてタランチュラ星雲の星をカタログ化する研究のための提案にもとづいて、それぞれ観測が実施されたということです。冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2023年1月30日付で公開されています。


【▲ 参考:ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ22周年記念画像として2012年4月に公開された「タランチュラ星雲(かじき座30)」(Credit: NASA, ESA, ESO, D. Lennon and E. Sabbi (ESA/STScI), J. Anderson, S. E. de Mink, R. van der Marel, T. Sohn, and N. Walborn (STScI), N. Bastian (Excellence Cluster, Munich), L. Bedin (INAF, Padua), E. Bressert (ESO), P. Crowther (Sheffield), A. de Koter (Amsterdam), C. Evans (UKATC/STFC, Edinburgh), A. Herrero (IAC, Tenerife), N. Langer (AifA, Bonn), I. Platais (JHU) and H. Sana (Amsterdam))】


 


Source


Image Credit: ESA/Hubble & NASA, C. Murray, E. Sabbi; Acknowledgement: Y.-H. ChuESA/Hubble - Exploring a Turbulent Tarantula

文/sorae編集部