※この記事は2021年11月08日にBLOGOSで公開されたものです

衆院選・・・開票前は自民が議席数を大幅に減らして、それこそ過半数割れるんじゃないか、山が動くんじゃないかってちょっと思ってたけど、ふたを開けたらちっともだったな。山は動かない。動いたのは山手線のホームだけだ(笑)。

自民が減って、そのぶん立憲が伸びるのかと思いきや、立憲も議席減。この結果をズバッと予想した人っていた? 出口調査も「接戦、接戦」でハッキリしなかったもんな。いやあ、今回の衆院選は選挙の奥深さを感じたよ。

改めて結果を俯瞰すると、最初は意外だったけどさ、これが国民全体の総意なんだなって思ったよ。なかなかバランスが取れてるんじゃないの? 国民は自民にも立憲にもそれなりに不満なんだ。

自民は「森友」「加計学園」「桜を見る会」などでの公文書改ざんだとか、カネの問題だとか色々あったけど、いざ選挙となると見事に地方ごと、選挙区ごとの審判になってた。

立憲が議席を減らしたのは、期待していた野党共闘が裏目に出たってことだな。与党からは立憲と共産党が組むのは「野合」だ「節操ない」って突かれてた。この野党共闘、うまくいった選挙区と、票離れを起こした選挙区と、効果はバラバラだったな。

バラバラになったのも、まあ振り返れば、野党共闘の話を枝野さんは進めるのか進めないのか、煮え切らない時間が長くて、いよいよ衆院選間近になって、ようやく具体化した印象だった。だから多くの選挙区で共闘を実践する準備が追いついてなかったのかもしれないな。

選挙に突入するまでの、党首としてのリーダーシップがあまり見えてなかったのが尾を引いたのかね。結局、枝野さんも代表辞任だ。これは後出しの話だけど、こうなるんだったら枝野さんも選挙する前に代表辞任して、自民党総裁選と同時期に立憲も代表選をやってたら良かったんじゃないの? テレビやメディアは自民と立憲、両方を追っかけたろうから立憲もいい宣伝になったのにな(苦笑)。

野党はしきりに「政権交代」を叫んでいたけど、まあ、今の立憲が政権交代を担えるほどではないぞって感じてる国民が多かったんだよ。そこにはかつて民主党が政権を担った時代のトラウマがまだあるんだろうね。あのときは、菅直人さん、鳩山由紀夫さん、野田佳彦さん、次々に顔が変わるばかりで政権の体力が持たなかった。

今回の衆院選で、自民もアレだし、立憲もアレだし、という有権者が流れたのが結果的に維新だった。維新が伸びた伸びたって騒いでるけど、これもさ、ちょっと振り返れば橋下徹さんが代表だった時代、2014年の衆院選では維新って確か41議席だったんだろ。そのあとガックリと減らしてまた今回元に戻った。行って来いなんだ。

でも、維新が伸びたのは他党よりも財源の話にきちんと言及してたからじゃないかな。国債頼みではなく、まず議員定数を減らす、身を切る、身を削るってことを維新は掲げてたからね。

そうそう、身を削るで思い出したけど、昔、立川談志が衆議院議員に立候補したときによく仲間連中が応援演説で謎かけをやってたんだよ。俺と一緒に談志の応援に行った先代の顔の長~い円楽さんが、「立川談志とかけましてロウソクとときます、そのココロは、身を削って世の中を明るくします」ってやったんだ。

そしたらそれを聞いてたご年輩の方が、「円楽さん、ロウソクだと最後にパッと明るくなったあと消えちゃうから寂しいよ。ロウソクでなく石けんとときなさい。立川談志とかけまして石けんととく、そのココロは、身を削って世の中をキレイにします」って。なるほど、そっちのほうがうまいってなったんだ。

でね、円楽さんが談志の次の応援会場に行って、早速この謎かけをやったの、「立川談志とかけまして石けんととく、そのココロは・・・」って、そしたらそのあとをうっかり忘れちゃったんだ。困った円楽さんその場で思わず、「立川談志とかけまして石けんととく、そのココロは・・・よく落ちる」だって。もう、ウラで聞いててひっくり返っちゃったよ(笑)。しかもその選挙で談志は落ちたんだ。笑うしかなかったね。

自民党幹事長が小選挙区で落選 甘利明氏のジェットコースター人生

いやはや、結局自民は単独で絶対安定多数を確保。自民党は大成功だよ。岸田政権でしばらく継続だな。とはいえ、自民も今回はベテラン議員がかなり選挙区で落ちたよね。ええと、石原伸晃さん、野田毅さん、若宮健嗣さん、桜田義孝さん・・・。

ベテラン落選組の象徴が甘利さんだろうな。自民党の幹事長が選挙区落選って、前代未聞の結果になっちゃった。カネの問題を引きずったままであることを有権者が許さなかったんだね。

甘利さんって5年ほど前にTPP担当大臣でアメリカ相手に交渉してたよね。あのとき、ずいぶんと神経使ったんだろうなって思ったよ。だってTPPやったあと、甘利さんの髪の毛が真っ白になってたもん。

しかもTPPがまとまったと思ったら、そのあとすぐにアメリカでトランプさんが大統領になって、アメリカがいきなりTPP抜けちゃってさ、甘利さん髪の毛だけでなく目の前も真っ白になったんだ(苦笑)。

俺ね、甘利さんのことはよく存じてるんだよ。前に立川談志が甘利さんを応援するってことになって、談志に連れられて俺も甘利さんの選挙応援に駆り出されたことあったんだ。神奈川のあちこちを回ったっけ。だからさ、甘利さんのこと知ってるぶん同情するよ。TPPやったり、カネで叩かれたり、新政権の幹事長になったと思ったら選挙で負けたり、上がったり下がったりでジェットコースターに乗ってるみたいだもの。

甘利さん比例復活はしたけど幹事長も辞任して、しばらくおとなしい日々になるんだろうね。幹事長辞任で自民党がジニン党になっちゃったな(苦笑)。

ベテラン議員より身近な若い候補を選んだ有権者

今回の選挙でわかったのはさ、安倍さん麻生さん甘利さんで「3A」なんて言い方されてたけど、国民からの支持は弱まってて、そのチカラは徐々に落ちてるってことかな。選挙期間に自民党の候補者からは「安倍さん麻生さんには応援に来てほしくない、イメージが下がるから」って話もあったっていうしね。

あのね、1960年頃かな、「スリーエー」ってタバコがあったんだ。70代以上ならわかると思うけど、赤い箱で「AAA」ってデザインが描かれて、シャレた名前だったよ。何年かして消えちゃったけどね。自民党の「3A」もさ、このタバコみたいに煙になってやがて消えていく・・・のかもね(苦笑)。


そこで期待したいのは若手議員だよ。自民党も小泉進次郎さんだったり、福田達夫さんだったり、もはや若手というよりもう中堅だな。そういう次の世代が中心になって党内改革を進めていくことを期待したいね。岸田内閣が「3A」の顔色を窺ってばかりなら、次の世代はもっと広い視野を持った政権を目指してほしいな。

そうしてね、自民に対抗できる二大政党が出来ないなら、自民の中で大きなグループが二つ拮抗していくのを期待したいよ。その中心のひとつに若手や中堅の世代が羽を伸ばしてほしいね。

自民党だけでなく、野党も小沢一郎さんや中村喜四郎さんみたいな大べテランが選挙区で負けたよね。有権者だって若い20代~40代は、そういう大ベテランより、自分たちに身近な若い候補者を選びたいってことなんだろうね。実績がいくらあっても若い人には関係ないんだよ。ずっと仕事をしてきた大ベテランより、これから仕事をしてくれる同世代に可能性を託したいんだな。

都道府県別投票率 最下位は山口県

そうそう、衆院選の都道府県別の投票率が発表されててね、小選挙区で最も投票率が高かったのが山形県(64.34%)だって。でね、一番低かったのが山口県(49.67%)だったんだよ。全国で投票率が50%に届かなかったのは山口県だけだって。

山口は安倍晋三さんの地元だよ。どうなんだろうね。山口の人たち、選挙に興味ないのかな。でも山口って長州藩だったわけで、明治になって多くの人物が政治の中枢にいて、総理大臣を最も多く輩出している県だよな。政治の真ん中にいるような県なのにね。なのに投票率は全国最下位。

ほら毎年、都道府県のどこがいいとかランキングが発表されてて、最近も話題になってただろ? ええとなんだっけ、ああ、都道府県魅力度ランキングか。あれで最下位だったのが茨城県だったね。それがあちこちで取り上げられたみたいだけど、あのランキングよりも俺はこの「都道府県別投票率ランキング」を多くの人に伝えたいね。

1位は山形、最下位は山口。山形は誇っていいよ、山口の最下位は恥ずかしいよ。来年の参院選で山口は最下位脱出なるか!? これ、みんなで注目しようよ(笑)。

(取材構成:松田健次)