※この記事は2011年09月08日にBLOGOSで公開されたものです

スクウェア・エニックスが「ドラゴンクエスト」シリーズでは初となるオンライン対応の『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』（対応機種：Wii／Wii U）を2012年に発売する。

今作の特徴は

・ドラクエシリーズ初のオンラインＲＰＧ

・Wii向け

・課金モデルの導入

という事だろう。

まず気になったのは「ターゲットは誰か」という事だ。ドラゴンクエストシリーズが大ヒットしたのは、小学生でも楽しめるＲＰＧを作ったという事にある。それにより幅広い層から指示を受け、文字通り「子どもから大人まで楽しめる」国民的ゲームとなった。前作も対応ハードをＤＳとし、小学生をがっつりと掴んだ。しかし、今作は「オンライン対応」である。オンラインゲームはチャットなどを通じたコミュニケーションをしながらのプレイが醍醐味の一つだが、まだ十分なネットリテラシーを持たない子供が、ネットを通じて不特定多数の大人とやり取りをするのだろうか。インターネット上では、

・オンラインってw　完全大人向けじゃんw

・リアルな話、オンラインだと不安なので子供に買ってあげられない。


と、不安の声も聞かれる。

制作の堀井雄二氏は

「『ドラゴンクエスト』という名前をつける以上、気軽にログインして、短時間プレイでも気持ちよくログアウトできる。そんなオンラインRPGを目差したいと思っている」

と語っているが、コツコツとプレイする従来のＲＰＧと、コミュニケーションを中心としたオンラインＲＰＧはそもそもジャンルが違う。携帯ゲーム、ブラウザゲームを代表とする、「ソーシャルゲーム」はゲーム内容よりも、ゲームを通じて人と競う、人と協力する楽しさがヒットの要因だ。同社の大ヒットコンテンツ「ファイナルファンタジー」シリーズのオンライン版「ファイナルファンタジーXI」は今だ日本最大級のオンラインゲームだが、そのノウハウをドラクエシリーズに持ち込むのはリスキーな賭けではないのか。

課金モデルを導入する時点で、小学生が気軽に遊べるものではないし、利用料金を毎月親にせがむのも大変だろう。昔、ファミコンソフトを1本買ってもらうのにどれだけ苦労したかを考えると、現実的とは思えない。

（オンラインに接続してプレイする場合は別途利用料金の支払いが必要となる予定)-スクウェア・エニックスサポートセンター）

では、少子化で少なくなった小学生をターゲットから外し、支払い能力のある大人、ヘビーユーザーに向けての作品なのだろうか？

だとすれば、家族向けのハード、Wiiを選択したのはなぜだろう。任天堂との深い大人の事情があるのは、発表会見に任天堂の岩田聡社長が出席していることからも伺えるが、マーケットの反応は冷ややかで、「対応ハードがWii」「初のオンライン・課金モデルに不信感」ということから、スクウェア・エニックスホールディングス株は大幅下落。戦略ミスの感は否めない。

アイテム課金を収入源とし、オンラインゲーム・ソーシャルゲームが「無料」で楽しめる時代に、日本を代表するゲームタイトル「ドラゴンクエスト」がオンラインで進化し、新しいゲームのビジネスモデルが出来るのか、それともターゲットを絞りきれず「失敗作」となるのか。累計出荷本数5,800万本の真価が問われる。
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（BLOGOS編集部　田野幸伸）