※この記事は2011年09月02日にBLOGOSで公開されたものです

　民主党代表選に話題をさらわれて大阪市事業仕分けを伝えるメディアは少なかったものの、市民の関心は高く会場は人で埋まった。

大阪市が示した事業仕分けのメニューには、市民が防犯活動をおこなう青色パトロール事業、清掃ボランティア活動など市民の参加が欠かせない事業が多かった。行政と住民がパートナーシップを組んで政策や事業を推進する手法は近年になって“協働”と呼ばれ、重要性が増している。

一例を挙げれば、緑化事業において行政は花や木、スコップや軍手などを用意・提供し、住民はどこにどんな花を植えるのか？を考え、実作業を担当する。このように住民を政策に参加させること。それが協働だ。

２００９年に民主党政権が政治主導を掲げて実施した事業仕分けは、一時的に民主党人気を牽引した。しかし、国の事業仕分けは回を経るごとに新鮮味を失い、結果として予算を削減された事業関係者との間にハレーションを残した。大阪市事業仕分けがそれと大きく異なったのは、政治主導ではなく“協働”を全面的に押し出したところにある。協働を推進することで、市民は自分の町に愛着をもつようになり、行政にも関心を抱くようになる。同じ事業仕分けでも政治主導のそれと協働とでは正反対なのである――

　大阪市市政改革室が事業仕分けの会場で配布した冊子がある。なかを開くと、事業シートと呼ばれる仕分け対象の概要説明がされている。

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事業シートには、担当局・部名、法令根拠、事業開始年度、総費用、成果実績などが列挙されている。その事業シートの項目のなかには“地域との協働状況”“協働の担い手拡大の予定”なる項目も設けられている。さらに協働のパートナー欄には、民間企業・市民活動団体（ＮＰＯ）・市民活動団体（地域住民組織など）とチェックをつける箇所まである。こうしたことからも大阪市が協働を重視していることがわかる。そして、仕分けの議論でも協働を念頭に入れて話し合いがおこなわれている。

　今回、大阪市は１日目に地域対象事業、２日目に全市対象事業の仕分けを実施しているが、そのなかでも私が注目したのは自転車関連の施策だ。大都市はどこも放置自転車対策に頭を悩ませているが、大阪市は放置自転車数全国ワーストワンの汚名を拝している。２００８年、そんな大阪の状況を憂いた平松邦夫市長は２０１１年までにワースト１を返上するように宣言し、放置自転車を２万５０００台削減する目標を打ち立てた。

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そこから大阪市の自転車政策は動き出した。大阪市の条例は、商業施設に駐輪場の設置を義務づけている一方で、鉄道事業者に義務を課していない。そのため大阪市は駅周辺の駐輪場を重点的に整備し、駐輪場外の自転車を撤去できるように放置自転車禁止区域をつくった。そうした対策が実り、昨年には削減目標を達成。それでも、いまだに全国ワースト１の汚名は返上できていない。

さらなる放置自転車撲滅が至上命題になっているなかで、港区では“市民協働型自転車利用適正化Ｄｏ！プラン”“公園内放置自転車対策”などの政策を実施。それが今回の事業仕分けで槍玉にあがった。

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“市民協働型自転車利用適正化Ｄｏ！プラン”“公園内放置自転車対策”の議論では、「“自転車適正利用対策協議会”には鉄道事業者や行政関係者はいるが商業関係者が入っていない。商業施設や商店街の関係者も参加してもらうべき」「市が指定している放置自転車禁止区域は駅から半径○○メートルとなっているが、幹線道路沿いにも適用すべき」「駐輪場の利用料金は１日１５０円と上限が定められている。駅から遠いなどの理由から使い勝手の悪い駐輪場は値下げして、もっと利用率を上げてみては？」といった意見が出された。

港区では２００９年から放置自転車に対する啓発活動を５回おこない、計２００人の市民が活動に参加した。港区独自の放置自転車対策には、駐輪マナーの向上を図るために小学生が描いたイラストシールを禁止区域の路面に貼るといったものがある。このシール貼りの作業も市民の協力を得ている。

実は放置自転車に対する啓発活動は、東成区もおこなっている。東成区では２００８年に３７人（放置自転車数）、２００９年には６４６人、２０１０年には４９８人と啓発活動に参加する市民の数は着実に増えている。実際に成果も上がっており、放置自転車の数は２００８年の７０８台から、２００９年は３４５台、２０１０年には１８１台にまで減少した。協働の拡大は市政において重要であるということがデータからも読みとれる。

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事業仕分けでは事業の廃止や予算縮減など、合理化ばかりに目が行きがちだ。実際、今回の大阪市事業仕分けを報じた新聞やテレビは、こぞって「廃止は７件」をクローズアップしているが、協働について触れていない。しかし、今回の大阪市事業仕分けは、いかに行政に住民を参加させるのか？にあった。そこを無視すると大阪市事業仕分けの本質は見えない。
協働の拡大は住民に一番身近な行政組織の市町村の新潮流でもあり、今後の課題でもある。