※この記事は2011年08月30日にBLOGOSで公開されたものです

以前より、新聞・テレビはいまかいまかと待ち受けていたが、８月２６日に菅直人総理大臣は官邸で記者会見をおこない正式に退陣を表明した。

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菅総理の退陣をうけて８月最後の週末は民主党代表選一色に染まった。そうした大きなニュースに隠されてしまったが大阪市ではある政治施策がひっそりと実施されていた。今回で４回目となる“大阪市事業仕分け”だ。

　多くの人が「事業仕分け」と聞いて頭に思い浮かべるのは、蓮舫議員の「どうして１位を目指すのでしょうか？　２位じゃダメなんでしょうか？」というフレーズだろう。行政刷新会議（政府）はこれまでに数回にわたって事業仕分けを実施している。その様子はインターネットで生中継されるため、だれでも気軽に見ることができる。またプレスではなくても会場に自由に入ることができ、目の前で傍聴することができるようになっている。
その一方、全面的に可視化されたことで「やっていることが人民裁判」「単なる政治ショー」といった批判も出た。

民主党代表選の余波で当初は参加を予定していた蓮舫議員は出席とりやめとなったが、大阪市事業仕分けには自民党の河野太郎議員が参加している。

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話題性のある人物を起用する。大阪市が実施する事業仕分けも単なる政治ショーではないか？そんな先入観を抱きながら私は会場に足を運んだ。しかし、そこで見たのは国のそれとはまったく違うものだった――

「予算を切ることが目的ではありません」

東成区民センターで４回目となる大阪市事業仕分けの開会式に臨んだ平松邦夫市長は開口一番そう宣言した。

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政府（行政刷新会議）が実施する事業仕分けは、事業の「廃止」や「予算縮減」といった厳しい判定が頻出したこともあり、予算をカットする作業だと思われがちだ。スーパーコンピューター「京」が計算速度を競う大会で世界１位にかがやき、小惑星探査機「はやぶさ」が世界初のサンプルリターンを成し遂げたことでなにも知らない議員が予算を削減するのは問題だと非難されて、事業仕分けそのものを批判する声も強い。

今回、大阪市事業仕分けのコーディネーター役を務めた伊藤伸氏（内閣府行政刷新会議事務局）は「事業仕分けをすることで、その自治体の問題が浮かび上がってくる。肝心なことは予算を切ることではなく、市民が事業仕分けを通じて市政に関心を示すこと。関心を持てば積極的に行政に参加するようになる。職員も仕分けを通じてもう一度自分たちがしていた事業について考える機会ができる」と、事業仕分けが単なるコストカットではないことを力説している。

もちろん事業仕分けに予算カットの側面があるのは事実だ。ただ、そこだけをクローズアップされてしまうことは本意ではないと伊藤氏は言いたいのだろう。実際、これまでに行政刷新会議がおこなった特別会計仕分けや公益法人仕分けでは、予算カットが主目的ではなく、お金の流れを見直すことでムダな中抜き団体をなくすことにあった。いわば税金の使われ方を構造的に変える試みだったのである。それなのに、どうしてそこまで予算削減がクローズアップされるようになり、結果として有権者に誤解を与えたのだろうか？

政府の事業仕分けとは異なり住民目線に一番近いところにある基礎的自治体の市町村が実施する事業仕分けは、予算がどのように使われているのかも確認しやすい。また、生活に直結する事業だから関心を持ちやすい。本来、事業仕分けは国よりも市町村が適している。予算カットの判定が下っても住民も納得できるようなケースが多く、事業の全体像が見えない国の事業仕分けと比べてもハレーションは起きにくい。

しかし、問題もある。市町村の予算は国家と比べれば微々たるものでしかなく、見直しや削減よりも作業にかかる人件費が高くなってしまう。これでは行財政改革は看板倒れ。そして、市町村には国の補助金や交付金に頼っている事業もあり、自分たちではどうにもならない部分もある。

大阪市はこれまでの市全域の事業だけを仕分けしてきたが、今回は東成区と港区の地域対象事業もメニューに加えている。


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ますます住民に身近になったわけだ。そして、事業仕分けは単なる予算削減というネガティブなイメージがあり、それらを払拭するために大阪市は

Ａ：廃止、Ｂ：抜本的検討、Ｃ：国・府実施、Ｄ：地域主体で実施、Ｅ地域との協働拡大、Ｆ：要改善、Ｇ：現行通り

と評価項目を７つに増やすなど工夫を凝らした。この評価項目を見れば、事業仕分けが予算カットだけの作業だとは考えにくい。

そして大阪市の一部の区でしか実施されていない事業もある。これらの事業は１００万円前後の予算規模しかない。大阪市民でも知らないような事業を仕分けるのは地道な作業だ。政治ショーという批判にはあたらないだろう。

それでは、第４回大阪市事業仕分けではどんな施策や事業が俎上に上がり、議論されたのだろうか？　後編では大阪市事業仕分けで注目された事業についてリポートする。