そうなるだろうな、というカードが並んだ。

 6月に4つのテストマッチを消化する日本代表が、2日にパラグアイ、6日にブラジルと対戦することになった。その後行なわれるキリンカップには、チリ、チュニジア、ガーナを招待し、日本は10日にガーナと対戦する。14日はチリかチュニジアと向き合う。

 カタールW杯までに予定される6月の4試合と9月の2試合は、本大会を見据えたシミュレーションマッチの位置づけだ。仮想スペイン、仮想ドイツでヨーロッパ勢との対戦が最優先されるが、ヨーロッパ各国はネーションズリーグをびっしりと組んでいる。

 大陸間プレーオフをコスタリカが突破する前提で、北中米カリブ海地区の国を招くというアプローチもあっただろう。しかし、こちらの地区でもロシアW杯後にネーションズリーグがスタートしている。

 ヨーロッパや北中米カリブ海へ出向くならともかく、日本へ招くのは相当にハードルが高い。W杯予選が終了して公式戦のない南米勢とアフリカ勢が、有力な候補に浮上するのは必然と言っていい。
チュニジアのグループDには、アジアと南米による大陸間プレーオフの勝者が入ってくる。キリンカップの初戦でチリと対戦できるのは、チュニジアにとって利益がある。

 ガーナのグループHには、南米勢と韓国がいる。こちらは日本との対戦が、仮想韓国となる。対戦相手にもメリットがあるからこそのマッチメイクだが、ブラジルを含めて本大会出場の3か国を呼ぶことに成功したのは、評価されていいだろう。

 グループステージで南米勢との対戦はなく、ラウンド16へ進出するとクロアチアかベルギーが待ち受ける公算が強い。彼らが足元をすくわれるとしても、対戦相手に浮上するのはカナダかモロッコだ。南米勢とは、準々決勝まで対戦しないのである。

 それでも、ブラジルは別格だ。セレソンの試合に注ぐ熱量が低かったとしても、アジアの対戦に慣れた日本には最高の刺激になる。世界基準に目覚める一戦になる。

 アジア最終予選を突破したそのほかの国は、マッチメイクに成功しているのだろうか。韓国とサウジアラビアは、4月28日時点でスケジュールは空白のままだ。

 イランは9日にニュージーランドと対戦するようだ。14日にコスタリカとの大陸間プレーオフを控えるニュージーランドが、直前の調整として開催地ドーハでイランと顔を合わせる、との情報がある。

 ちなみに、ニュージーランドは5日にペルーと対戦することになっている。南米予選5位のペルーは、アジア第5代表(UAEかオーストラリア)と13日に大陸間プレーオフを戦う。決戦を控えたチーム同士として、利害が一致したようだ。

 カタールW杯アジア最終予選のホームゲームを除くと、国内での国際試合は昨年6月のセルビア戦が最後となっている。代表チームのマッチメイクは強化が最優先され、アウェイの厳しい環境での戦いが臨まれるものの、国内で行うことにも意義はある。

 代表チームの人気を持続的なものとするためには、スタジアムでの観戦機会の創出が欠かせない。実際に生で「観てもらう」ことは、代表チームに親近感を覚えてもらう何よりのきっかけだ。地上波のゴールデンタイムにテレビ中継されることも、日本代表というチームや選手の認知度アップにつながる。

 ましてやコロナ禍の現在は、観戦離れが生じている。過日行なわれたベトナムとのカタールW杯アジア最終予選は、入場者の上限が撤廃されたものの満員に届かなかった。W杯出場決定後の凱旋試合にもかかわらず、4万4600人に止まっている。

 この試合はまん延防止重点措置のもとでチケットが販売され、試合まで12日の段階で追加販売された。セールス期間は短かった。 

 平日のナイター観戦の場所として、埼玉スタジアムは率直に行きにくい。凱旋試合でもあるが、予選突破後の消化試合でもあった。チケットを買わない理由はいくつもあった。

 それと同時に、「不要不急の外出は控える」というコロナ禍での生活習慣が、来場意欲を萎ませたとも考えられる。いずれにしても、日本代表の試合の価値を、高めていく必要があるのは間違いない。

 W杯へ向けた強化につながる対戦国は、ファン・サポーターに「スタジアムで観たい」と思わせるものだ。ブラジル相手に周囲を驚かせるような結果を残し、それによって相手のモチベーションを刺激できれば、国内のテストマッチでも強化になる。