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グローバル車種を約20%削減

2030年を想定した長期ビジョン「ニッサン・アンビション2030」の中で、次世代に導入する様々なEVの原型が表に出た。

【画像】あれ? 結構かっこよく見えるぞ 同時発表の日産コンセプト車【4種】 全33枚

日産は2019年に発足した内田社長新体制の下、長らく日産に影響力を持ったカルロス・ゴーン体制による事業計画を大幅に見直してきた。


「ニッサン・アンビション2030」の中で発表された3種のコンセプト。左から順に、日産サーフ・アウト/マックス・アウト/ハング・アウト。    日産

2019年の決算報告では、大幅な赤字体質からの根本的な脱却を目指し、事業構造改革計画「ニッサン・ネクスト」を掲げた。

計画の中核として、生産能力の最適化、固定費の削減、そして商品ラインナップの効率化という「最適化の三本柱」を立てた。

こうした中で、一般ユーザーにとって最も気になるのは、商品ラインナップの効率化であろう。

言い方を変えれば、消滅する車種が出てきたり、ルノーニッサン三菱アライアンスの中で日産が直接開発にタッチしない兄弟車が増える可能性があるからだ。

具体的には、2023年度までにグローバルで車種数を69から55まで約20%も削減。いわゆる地域限定モデルを最小化。

そして、小型・中型車であるC/DセグメントとEVに開発資源を集中することを決めた。

そのうえで、ニッサン・ネクスト発表から18か月間に12の新型車を投入するとした。

その中には、EVのアリアや、北米向けSUVのローグ(日本ではエクストレイル)などが含まれる。

肝心な日本のEVはどうなる?

ニッサン・ネクストでは、電動化についてEVとeパワーの2本立てを強調してきた。

日本市場については、EVは現行のリーフ、商用車のe-NV200、アリア、そして2022年前半に量産型が公開される予定の軽EVという4モデルだ。


長期ビジョン「ニッサン・アンビション2030」発表時の様子。    日産

また、eパワーについては、第2世代eパワー搭載のノート、初代eパワー改良型のキックスとセレナeパワー搭載がある。

では、これから先のEVとeパワーはどんなモデルとして登場するのだろうか?

ここで、時計の針を少し戻してみると、リーフが誕生した2010年代初頭、当時の日産幹部のEV構想としては、リーフを主軸として2ドアスポーツカー、SUV、商用車、そして高級車としてインフィニティといったEVプラットフォームの横展開の将来図を描いていた。

だが、リーフの普及は日産が当初計画していたほど急激には進まず、結果的にリーフ派生車はe-NV200のみだ。

そうした過去の経験も踏まえて、長期ビジョン「ニッサン・アンビション2030」では、次の10年に向けた具体的なEV構想が明らかになった。

内田CEOは今期の上期決算発表の場で「今年の後半には、ニッサン・ネクストのさらに先を見据えたビジョンを正式発表する準備を進めている」を語っていた。

今回公開された内容は、一般ユーザーにとっても、報道陣にとっても、かなり深い内容だったといえるのではないだろうか。

社会変化を冷静に捉えた戦略

内田CEOはニッサン・アンビション2030の中で、「2030年度までにEV 15車種を含む23車種のワクワクする新型電動車を投入する」と発表した。

これは、日産のみならず、日本政府も掲げいてる2050年カーボンニュートラル実現に向けた布石だ。


同時公開された日産チル・アウト・コンセプト。    日産

カーボンニュートラルとは、人間界から排出されるCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの量を削減し、森林など自然界で吸収されるCO2量と相殺するという考え方である。

日産は2030年度でグローバルの電動化(EVとeパワーが主軸)普及率50%以上を目指す。

また2030年までの約9年間の中間地点である、2026年をひとつの区切りとして、EVとeパワーの搭載車をグローバルであわせて20車種導入する。

ただし、国や地域によって社会インフラや法律などに違いがあるため、欧州では75%以上と高く、日本は55%、中国は40%としているほか、アメリカではEVのみで40%以上と見込む。

こうなると、具体的にどのような新型EVが登場するのか気になるところだ。

その方向性として今回、3つのコンセプトモデルがCGによるデザインスタディ的な雰囲気で世界初公開された。

マックス・アウト、ハング・アウト、そしてサーフ・アウトという3モデルである。

3種それぞれが後継モデルか?

3つのコンセプトモデルを順に見ていく。

マックス・アウトは、2ドアオープンカーだ。マックスとはGT(グランドツーリング)としてのスポーティ性を強調した、乗る人の気持ちと高出力を示すイメージである。この姿を素直に受け止めれば、未来のZを想像する。


左から順に日産マックス・アウト/サーフ・アウト/ハング・アウト。    日産

つぎに、ハング・アウト。米語でハング・アウトは外に出かけるという意味があり、まさにSUVの商品イメージと重なり合う。

こちらは、日本ではエクストレイル、北米など海外ではローグやパスファインダーなど、オフロード走行にも十分対応できるモデルのEV化を想像する。

前述にように、北米では当面、eパワーではなくEV重視路線を進めることになっており、ハング・アウトをデザインベースとした量産車の登場は比較的早いのではないだろうか。

これに加えて、ピックアップトラックのサーフ・アウトも、北米需要を考えるとハング・アウトとほぼ同時期の量産化が予測できる。

一方、日本市場では当面、各モデルで第2世代eパワー化が浸透することが優先され、EVではアリアの後に、ハング・アウト系EVが登場。

さらに、新世代Zとしてマックス・アウト系EVという流れが徐々に見えてきた……。

いずれにしても、日産の電動化シフトが今後5年間で一気に加速することは間違いない。