渋谷駅前で「ノーマスク」を訴える人たち。2020年10月(AFP=時事)

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 いまも都市部のターミナル駅前などで活動をつづける「ノーマスク」を訴える人々がいる。ゴールデンウィーク前には、彼らも含むと思われる人たちがネット上でマスクをしないでピクニックへ行こうというイベントを呼びかけていた。この呼びかけによって、各地の公園はどのような対応を迫られたのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

【写真】大晦日にノーマスクを訴える

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「ノーマスクは我々の権利、生きるための権利ですから」

 ゴールデンウィーク直前、SNS上で拡散された「ノーマスクピクニック」を開催しようとしている人たちがいる、との情報。大手マスコミやネットメディアなどが一斉に報じると、ネットユーザーらからは「非常識すぎる」「感染者が増えているのに」と非難が殺到。結局「全国一斉」という形での開催は取りやめられたが、彼らは批判を受け止めたわけではなく、形を変えて実践されただけだと当事者の一人は語る。

 たとえば、ツイッター上で「ノーマスクピクニック」への参加を呼びかけていた関東地方在住の女性・花島由佳さん(仮名・40代)がコトの顛末を、独自の視点から振り返る。

「マスクをしていると、通常時の呼吸で得られる酸素が得られず、特に小さな子供にとっては危険なんです。普段から、マスクを外すよう呼びかけを行っており、ピクニックは私たちの通常の生活スタイルなんです。それなのに、ネット上でいろいろなことを言われて、私たちの自由が制限されている。全国一斉のノーマスクピクニックは開催されませんでしたが、各々自由に、近隣の公園などに行って、お弁当などを食べて過ごしました。もちろん、みんなノーマスク。周りにたくさん他の方もいましたが、別に怒られるようなことはありませんでした」(花島さん)

 筆者も実は、件の「ピクニック」の噂を聞きつけ、開催が予定されている都内の公園事務所、地方自治体への取材を始めていたが、担当者は皆騒動のことは知っていて、対応に四苦八苦している様子だった。ノーマスクピクニックの開催予定場所になっていた関東地方にある公園の管理事務所に勤める男性が、次のように本音を吐露してくれていた。

「ピクニックの話は寝耳に水、一般の方が電話で教えてくれて知ったんです。これから(大型連休)の時期に、ノーマスクで来園されるなんてとてもとても……。市民の方からも『開催させるな』とお叱りのお電話も何本もいただいているんですが、我々に拒否する権利なんかありませんし、どうしていいものか」(関東地方の公園管理事務所職員)

 ところで冒頭の花島さん、筆者の問いには最後まではっきりと答えなかったが、首都圏を中心に全国各地で行われている「ノーマスクデモ」なる政治活動にも参加しているようで、SNSには、参加時の様子がわかる写真がアップされていた。東京都知事選や千葉県知事選挙にも立候補した経歴を持つ政治団体代表の男性や、男性を支持する人々がデモの運営母体と見られる。彼らは渋谷駅前など人でごった返す天下の往来で騒がしくデモを行うものだから、苦情が相次ぐなどトラブルにも発展している。

「どういう方々がピクニックをしようとしているのか……ネットを見ているからわかりますよ。家族連れなど大挙して押し寄せるであろうゴールデンウィークに、うちの公園であんなデモみたいなことやられたら参ります。上(自治体の公園課など)とも相談をしています」(関東地方の公園管理事務所職員)

 彼らの主張──マスクは必要がない、そして「コロナウイルスは存在しない」などという見解は、筆者は受け入れ難い。それでも、そう考えるのは自由だ。本音をいえば、人の迷惑にならないようなアピールをすれば良いと思うのだが、なぜか彼らは、自身に反対する人々の面前にわざわざ出てきては大騒ぎをして、迷惑をかける。暴走族も、街の中の、より多く人がいる場所にワラワラと出てきては、あえてやかましく振る舞うが、それと同じようなものなのか。

「主張というより、嫌がらせです、我々にとっては」

 同じく、ノーマスクピクニックの開催予定地になっていたという関西にある公園管理事務所の男性(50代)は、3月の花見シーズンにも、「マスクを外そう」と主張する人々と、公園内で対峙した。

「他の利用者が不安になるから(マスクをしないなら、公園の利用は)あきませんいうのに、コロナウイルスなんかない、騙されとる、と言い返してきて話にならんのです」(関西地方の公園管理事務所の男性)

 花見のシーズンが終わり胸を撫で下ろしていたところに入ってきたのが、ゴールデンウィークの「ピクニック」開催の噂。しかし公園には、もう一つ別のトラブルも襲いかかっていた。

「ノーマスクの人たちがやって来たと思ったら、次はノーマスク運動に反対するっちゅう人たちがやってくるようになったんです。公園走ってるランナーがマスクをしとらんから注意せいと、管理事務所に押しかけてきたりとか、マスクしとらんお子さんの親御さん怒鳴りつけて喧嘩になったりね、そういうのが増えた。ピクニックの件でも、かなりクレームの電話いただきましてね、うちは関係ないというても、みなさん納得されんのです」(関西地方の公園管理関係者)

「ノーマスク」も困るが、過激な手法で反対しようとする人々の存在もまた、公園管理事務所の男性を悩ませていたのである。

「実際、ピクニックが行われる予定の他所の公園さんに電話もしましてね、困りましたなぁ、て言うとったんですが、一番嫌なのは、マスクを外そういう人と、それに反対する人たちが公園内でカチあって、喧嘩などに発展することです。無関係の市民に被害が及ばないとも限りません。ノーマスクも困るけど、反対がやってきてのトラブルはもっときつい」(関西地方の公園管理関係者)

 コロナ禍においては、感染対策やワクチン接種に関する議論が各所で紛糾し、それぞれの事象ごとに偏った見解を披露する人々の姿も目立つ。主張・見解をただ発表するだけでなく、社会を不安にさせる形で実行に移すことで、本当に市民に危害が及びかねない事態も発生し、反対する人たちとの対立もより鮮明になってきている。だが一般市民にとっては、どちらの主張が正しいかということはたいした関心事ではないだろう。本筋と関係のない場外乱闘ははた迷惑なだけだし、辛抱する生活が続くのに、これ以上疲弊させないでくれーそれが本音なのだ。